晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池波正太郎 『雲霧仁左衛門』

2015-09-21 | 日本人作家 あ
この作品名にもなってる『雲霧仁左衛門』という人物は一応モデルとなった盗賊はいたようで、講談や歌舞伎の題材にもなったそうです。
文中でも一般庶民が「え、雲霧仁左衛門って実在したの?」と驚くぐらいもはや伝説となっているレベルの大盗賊。まあ今風にいうならルパン三世でしょうかね。

尾張名古屋の薬種屋、好蘭堂の主人、松屋吉兵衛は江戸に来ています。吉兵衛は数年前に女房を亡くし、後継ぎの息子も結婚し、女遊びが趣味といったところ。そんな吉兵衛にある人から紹介されたのが、なんと尼僧。吉兵衛はこの尼僧にたちまち参ってしまいます。

じつはこの尼僧、名をお千代といい、「七化けのお千代」と異名を持つ、雲霧仁左衛門の一味だったのです。

そんなお千代が舟に乗ってどこかへ行くのを後ろからつけている舟が。これを見ていた六之助という、これもまた雲霧一味の若い男がすぐあとを追います。

その翌日のこと、火付盗賊改方の密偵が水死体となって発見されます。与力の山田藤兵衛はその知らせを聞いて、かつてこの密偵が雲霧一味だったことで、雲霧一味に殺されたという勘をはたらかせます。

ところが、この火付盗賊改方が密偵殺しを雲霧一味の仕業と目星をつけたことが、なんと雲霧仁左衛門の片腕とされる木鼠の吉五郎の耳に入るのです。

さて、松屋吉兵衛は名古屋へ帰る際、尼僧もいっしょに連れて帰るというのです。吉兵衛は隠居をして尼僧と再婚でもするのでしょうか。

一方、雲霧一味の吉五郎、六之助らは、火付盗賊改方に自分たちの動きを見破られないように行動をはじめます。
お千代の舟をつけていた密偵を殺害した六之助は、その密偵が駒寺の利吉という、これも盗賊と会っていたことを知ると、その利吉を探し出すことに。
さっそく利吉の居所を探し出した六之助らは、利吉を殺そうとしますが、そこに謎の侍が現れ、利吉を助け・・・

仁左衛門は今度の”おつとめ”を松屋吉兵衛宅に狙いをつけます。はたして雲霧一味は成功するのか。あるいは火付盗賊改方は雲霧一味の動きを見つけることができるのか。

この話とは別に、尾張名古屋と江戸の複雑な関係から、先述した利吉を助けた「謎の侍」が名古屋入りするのですが、はたして尾張藩がやろうとしてうることとは。

雲霧仁左衛門は「さむらいのような・・・」という描写がたびたび出てくるぐらいですが、ではその武士がどのようないきさつで盗賊になったのか。
仁左衛門はある人に「最後のおつとめは城の中の金蔵」と話しています。この「城」が関係しているのか・・・

読んでいると、雲霧一味の”おつとめ”の成功を応援したり、一方で火付盗賊改方にも雲霧一味を捕まえてほしいと願ったり、どっちに感情移入しているのかわからなくなってきます。
「鬼平」にもたびたび出てくる「真の盗賊の三か条」というのがあって、・盗まれて難儀するような家からは盗まない・殺傷しない・女性を手籠めにしない、というのがあって、雲霧仁左衛門という人もこの掟を守ります。
そもそもまずは「人のものを盗まない」っていうのを守れよって話なんですけど、盗賊にもこういった矜持があって、最近のむごたらしい事件のニュースを見るたびに、犯罪者に「鬼平や雲霧仁左衛門を読めよ」と言いたくなったりします。



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