晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

大沢在昌 『灰夜』

2013-01-15 | 日本人作家 あ
「新宿鮫」シリーズも、ようやく7作目まで読み終えました。
今作では、舞台は新宿ではなく、舞台は九州の”某市”となって
います。文中でのざっとした説明で、まあだいたいあの県の県庁
所在地だなとは想像がつきます。

のっけから、鮫島はどこか山奥の檻の中に監禁されています。
警察手帳も財布もありません。一体何が起きたのか。

ところで、なぜ鮫島が九州に行ったのかというと、自殺した元同僚、
宮本の七回忌法要があるため。この宮本、鮫島が警視庁の”飼い殺し”
になった原因というか一因の、警察機構の根幹を揺るがすスキャンダル
が書かれた文書を鮫島に託した、過去の作品に名前だけはたびたび登場
していた、公安部のキャリア。

寺には、宮本の両親、そして未亡人、さらに地元の友人とおぼしき2人
の男性が。古山は宮本の小学校からの友人で、木藤は高校時代の友人。
古山は鮫島に親しみを込めて話しかけてくるのですが、木藤はきつい
視線を送るだけ。どうやら、宮本を死に追いやった警視庁の回し者と
思われているよう。

その後、食事の席で(木藤は仕事で帰った)、古川に「鮫島さんに
ぜひとも会いたいといってる人がいる」と言われます。
”その人”が経営するバーに行ってみると、”その人”とは古山の妹。
古山はこの街で手広くビジネスをしていて、このバーも経営は妹の栞
がやっているのですが、資金は兄が出したもの。

栞は、宮本が上京する前に交際していた女性で、しかしおおっぴらには
できない事情があります。それは、古山は在日朝鮮人で、しかも北の出身
ということで、父、宮本は差別的な意識はまったく無かったのですが、
警視庁キャリアで公安部となると、北出身はむしろ監視対象で、交際して
いる、ましてや結婚ともなれば、間違いなくその後の警察人生を棒に振る
ことに。

そこで、いろいろと宮本に関する話などをして、そのあと古山(兄のほう)
と飲みに出かける、その前のことなのですが、宿泊するホテルのロビーで
鮫島はある男に話しかけられます。寺澤と名乗る男は福岡の麻薬取締官で、
鮫島が警察官と知ると、北朝鮮から麻薬を密輸している福岡のヤクザが古山
と会っていたことで、”麻取”は古山をマークしている、と教えてくれます。

何か怪しいことがあれば連絡してください、と寺澤は鮫島に連絡先を教えます。

さて、古山と飲みに行ったのですが、これといって怪しい様子もなく、数件
”はしご”をしているとき、上原という地元の警官と出くわします。
店ではかなり嫌われてる様子で、「つけ回し」という、自分は勘定を払わずに
他の誰かに払わせてタダ酒を飲んで、傍若無人な振る舞いをします。

そんな嫌なこともありつつホテルに帰って、寺澤に連絡を取ろうとしますが
留守電で、そのうちウトウトとした鮫島は、部屋のドアをノックして「寺澤
の使い」とい声を聞いてドアを開けた瞬間、襲われて・・・

どうして監禁などされているのか鮫島はまったく分かりません。しかもこの檻、
獣の臭いがしています。前にどうぶつが飼われていたのか。
すると、鉄砲を持った男がやって来て、檻を開けようとしますが途中でやめて
どこかに行ってしまいます。しかし途中まで開けたので、そこから鮫島はどう
にかこじ開けて、脱出します。

するとそこに栞が車でかけつけます。兄から電話があって、鮫島さんが監禁
されているので助けに行ってくれ、と頼まれたそうなのですが・・・

警視庁の公安が地元の警察に頼んで鮫島を監禁したのか、まさかそこまで
するとは考えられません。では、寺澤の話していた福岡のヤクザ・・・?
それも、この地元は別の組が強いので福岡の組は入ってきていない、と
聞いていたので、それも違う。では何者がどうして・・・

古山と連絡が取れて、何者かと折衝して鮫島を開放するように頼んだことが
分かります。しかし古山は「警察に話を持っていても無駄だ」と。
こんどは別の男から電話が。その男は鮫島に、はやく東京に帰れば、手帳や
財布は返す、と。

話を整理してみると、地元のヤクザ「鹿報会」が鮫島を監禁したらしいのです
が、それは福岡のヤクザ「十知会」の仕業にみせかけようとしたこと。
しかし、寺澤と接触したことが鹿報会にとって都合の悪いことなどなく、さらに
古山がいうには「間違えて」監禁してしまったようで、でも今はなぜかその古山
が鹿報会に囚われの身に。
そして、寺澤はどこに消えたのか・・・

この謎を解くため、鮫島は昨晩、古山と別れたあとの彼の行動を調べますが・・・

もう話がごっちゃごちゃに絡まってくんずほぐれつ、怒りや悲しみにふるえ、衝撃
のラスト。

ところで、鮫島は有給を”3日間”取っていて、1日は宮本の法要で九州に、残り
の2日は、恋人、晶と会おうとしていたのですが、今作では晶は全く登場しません。

宮本の文書の内容も気になるところですが、前作で鮫島と晶との関係がぎくしゃく
したままでその後どうなるのか。


コメント
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