晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

スコット・トゥロー 『囮弁護士』

2010-06-26 | 海外作家 タ
スコット・トゥローの作品はこれで2作目、といっても順番は
バラバラで、本来ならばデビュー作の「推定無罪」から順番どおり
に読んでいくのがスジなのですが、いちばん最初に読んだのが
2作目の「立証責任」、そして、この『囮弁護士』は、3,4作
を飛ばしての5作目。

もっとも、ストーリーに連動性があるというわけでもなく、ただ共通の
登場人物が出たりして、その人物像の把握という意味でも、順番どおり
に読むべきなのですが、そうでなくてもちんぷんかんぷんということには
なりません。

連邦検察官のスタン・セネットは、キンドル郡の民事裁判の判事が多額の
賄賂をもらっているのではとの情報をつかみ、その賄賂を贈っている側の
弁護士ロビー・フェヴァーの「弱み」を握って、連邦の捜査に協力させるの
です。

その弱みとは、ロビーの妻はALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病に
おかされていて、もし夫である自分が逮捕、収監でもされれば、妻の面倒を
見ることができなくなるのです。

協力とは、囮役を演じてもらうこと。目下、連邦検察が追っている判事の
中でのボス格はブレンダン・トゥーイ判事。しかしこの判事の甥のモート
はロビーの弁護士事務所で働いており、伯父をこよなく尊敬するモートには
この囮捜査を秘密にしなければならず(情報がつつぬけになる)、FBIから
派遣された女性捜査官イーヴォン・ミラーを秘書役として事務所にもぐり込ま
せます。

盗聴、物的証拠(指紋や筆跡)など、まずは手下格の判事から次々と証拠を
挙げていきます。はたしてキンドル郡裁判所にはびこる腐敗は一網打尽となる
のか・・・

作品の語り手は、ロビーの弁護士であるジョージ・メイソンという人なのですが、
物語は主にロビーを使った囮捜査、そしてロビーの私生活とりわけ妻との闘病、
FBI女性捜査官イーヴォンのことが描かれており、特にロビーとイーヴォンの
関係は、イーヴォンの過去、人となりを詳しく聞きたがるロビー、事前に聞かされて
いたロビーについての注意(奴ににたらしこめられないように)を守るイーヴォン、
このふたりの展開が、人間ドラマとしての幅を持たせます。

あとがきにあったのですが、作者はこの作品を「純文学と大衆文学の橋の中間
あたり」と表していて、だからでしょうか、どうにも読み進むのが遅く(今月は
やたら忙しかったということもあって)読み終わるのにかなりの時間を要して
しまいました。
コメント
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