rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

NHK BSドキュメンタリー よみがえる悪夢1973年知られざる核戦争危機 感想

2019-12-02 19:13:15 | その他

2019年11月17日放送のNHK BSドキュメンタリー 「よみがえる悪夢1973年 知られざる核戦争危機」は機密保全の解けた米国公文書などを丁寧に取材してまとめた迫真のドキュメンタリーでした。1962年キューバにソ連が核ミサイル基地を作ろうとしたことから米ソ全面核戦争寸前まで達した危機的状況は、ケネディ大統領とフルシチョフ首相とのやり取りで双方合意することで危機が回避された事は有名です。他にもあまり明らかにされていない核戦争一歩手前の危機が当事者達の冷静な判断で回避されて来た事実があるようです。このBSドキュメンタリーは第4時中東戦争の最中に起きていた米ソ間の全面核戦争の知られざる危機を発掘し、明らかにした優れたドキュメンタリーであると思います。また未だに公にはされませんが、イスラエルが1973年当時から核保有国であった事実もさりげなく暴露されています(イスラエルの技術で建国間もない中国に核開発をさせて中国を代理的核保有国にさせたことは有名)。以下にその経緯を簡単にまとめます。

 

NHK BS 番組のサイトから

○ 1973年10月6日、イスラエルにおけるユダヤ暦の神聖な日であるヨム・キプル贖罪の日に第三次中東戦争で占領された領土の奪回を目的にエジプト・シリア両軍が同時にスエズ運河、ゴラン高原に攻撃を開始。

○ 当初はアラブ側が周到な準備と奇襲攻撃であった事、ソ連製の最新兵器を駆使したことからイスラエル側を圧倒、イスラエル側の航空機、戦車が壊滅し、三千名の犠牲が出て劣勢に立たされます。

○ イスラエルの首相 ゴルダ・メイアは米国のニクソン・キッシンジャー政権に救いを求めます。キッシンジャーはユダヤ人であり、親イスラエルであったこと、またCIAから危機に瀕したイスラエルは核の使用も辞さないという報告を受け、本格的な武器の支援に乗り出します。当時米ソはニクソン・ブレジネフの融和ムードの中にあり、しかもニクソンはウオーターゲート事件で国内的には追いつめられた時期にありました。

○ 米国の支援とイスラエルの総力戦態勢が整う事で戦局は次第にイスラエル優勢に変化してゆきます。ブレジネフは当初エジプト優位のうちに和平を仲介することで中東におけるソ連の覇権強化を狙っていたのですが、戦局が優位なうちに和平に至る事をエジプトのサダト大統領が拒否、ブレジネフは激怒します。

○ エジプトが窮地に陥るとサダトはソ連に助けを求めます。ブレジネフは激怒するのですが、エジプトが米国側に寝返る事を避けるためキッシンジャーと和平協議を行い10月23日に停戦する協定を結びます。しかし停戦2日前にサダトは最後っぺの様にイスラエルの都市に向けて核弾頭搭載可能なソ連製のスカッドミサイル2発を発射します(ソ連の強硬派国防大臣のグレチコが許可していた)。

○ 優勢であったイスラエルも米ソのみで決めた停戦には合意しておらず23日以降も攻撃を続け、エジプトの主力軍が壊滅の危機に陥ります。そこで停戦協定を守らないイスラエルに対して、ブレジネフはキッシンジャーに騙されたと激怒、ソ連軍を直接地中海に派遣して参戦の可能性を示し、しかも核を積んだ貨物船をアレキサンドリアに入港させてスカッドへの核搭載をにおわせます。

○ ソ連の核を用いた恫喝にウオーターゲートで追いつめられていたニクソンは米軍がデフコン3(核戦争準備)の態勢を敷く事で答えます。ブレジネフは丁度モスクワで世界平和会議を主催していた事もあり、当初は静観していたのですが、エジプトとイスラエルの停戦が進まない事から次第にソ連も核使用態勢へと追い込まれて行きます。

○ このままでは中東を発火点とした核を用いた第三次世界大戦へと発展する危機的状況に陥っていた所だったのですが、寸での所でエジプト大統領サダトがイスラエルとの直接交渉(アラブがイスラエルを国家として認めるという意味を持つ)を承諾し、譲歩の上停戦に合意、イスラエル勝利で幕を閉じるのですが、イスラエル、アラブ双方に大きな不満が残ることになります。停戦をしたメイア首相は政権を去り、サダトは後に暗殺されます。しかし米ソ核戦争という危機を避けることができたのは、石油危機などの迷惑を被りましたがその他の世界各国にはこれ以上ない僥倖であったと言えます。

 

番組の最後で語られますが、世界核戦争というのは超大国が徐々に危機が高まって行った結果、準備万端で開戦するという場合よりも、ヒューマンエラーから来る事故や思い込み、勘違いによって始まってしまい、止められなくなるという場合の方が圧倒的に多いと考えられる、という解説が先のブログに紹介されていた事例を含め、また映画などでSF的に描かれながら真実とも思える事態を考えても、非常に説得力のあるものに思いました。


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