rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

選択を迫られ続けるトルコ

2019-02-22 13:58:44 | 政治

山童さんのコメントにどのように応えようかと思っていたのですが、トルコ情勢というのがとても複雑で自分でも良く整理できない状況であり、答えに窮していたというのが本音です。

昨年、トルコリラが下落をして、トルコ経済が窮地に立たされました。原因はエルドアン大統領に対するクーデター計画(2016年7月)に関係したとされる米国人神父が当局によって長期に拘束されていることに対してトランプ政権が経済的な圧力をかけているからであると説明されました。このクーデターは実行に移されたものの、エルドアン大統領を排除する寸前でロシアのプーチン大統領から直々に電話でクーデターを知らされたエルドアン大統領が命からがら静養先を飛行機で脱出し、首都から反乱軍に占領されていない放送局を使って国民に反クーデターのデモを呼びかけて軍を鎮圧し、クーデターは失敗に終わりました。ウクライナではマイダンにおける反ロシア勢力による政変(2014年2月)で内戦が勃発し、反ロシア政権になってしまったウクライナの教訓を生かして今回はプーチンが先手を打った結果と言えます。クーデターに関係した軍人や政治家達は大量に粛清され、エルドアン体制がその後より磐石になったように見えます。しかし、NATOの一員として欧米側の立場を取り続けるか、ロシア側に寄って中東における独自の地位を築くかは迷うところであると思われます。

 

 ウクライナの件もトルコのクーデターも米国のCIAが影で糸を引いていた事は明らかですが、とらわれている神父というのもCIAのエージェントであり、だからこそ早期の解放を米国が威信をかけて迫っていると思われます。トルコはもともと西側陣営であって、NATOの参加国でもあります。シリアの内戦においても反アサド政権側を支援する立場を取っていて一時はアサド政権を支援するロシア空軍機を撃墜したこともありました。しかしエルドアン大統領の強権的手腕には西欧諸国からの批判も多く、またトルコからシリア難民が多数EU域内に流入してくることから西欧諸国の中ではトルコはやや孤立した状態でもあります。

 

 中東ではロシアの存在感が増していて、シリアはロシアの支援でアサド体制の勝利で内戦が終わり、イランも米国と対立する中、ロシア・中国とのつながりを深めています。トルコのエルドアン大統領もプーチンを訪問してロシア機撃墜を謝罪してエネルギーや経済のつながりを強め、関係改善に努めてきました。特に米国を背景にしたクーデター未遂事件とそれをプーチンに救われてからは、エルドアン大統領はロシア側に友好関係を結ぶようになっていると言えます。

 

 エルドアン大統領が欧米かロシアかで選択に迷う要因の一つにクルド人問題があると言えます。国内で独立運動を進めるクルド人たちはシリアの内戦では米国に支援されてISと戦闘し、逆にトルコは間接的にISを支援していた節があります。ISがロシアに滅ぼされて、トルコにとってはクルド人も一緒にいなくなれば良いのでしょうがそうは行きません。2018年のノーベル平和賞の一人はヤシディ教徒でクルド人のISの性奴隷から開放されて戦争で犠牲になる女性達への活動を続けるナディア・ムラドさんが授賞しました。彼女は米国からの支援も受けていたクルド民主党(KDP)とも関係しています。そしてまさにエルドアン大統領と敵対関係にあるとも言えます。トルコとしては国内異端であるクルド人を排除しようとしてはいるけど、中国がウイグル民族に対して行っているような非人道的な事はしない、というアピールも西側の一角を占める国家として存在を示すためには必要なのでしょう。

 

 トルコについてはまとまりのない内容になりました。トランプ大統領は中国とは貿易関係で激しく対立していますが、米国の輸入が圧倒的に多いので貿易戦争では米国が間違いなく勝ちます。その点で周金平氏は国内問題でも劣勢に立たされているように見えます。2月末にトランプ氏は2回目の金正恩との会談を持ちます。3月に中国への関税制裁延期の期限が来ますので、中国は北朝鮮にあまり強気な事を言わせないと思われます。前回周金直接会談の時にプランをいくつか想定して今後の米国への対応を相談したと思いますが、どこまでトランプ氏を満足させるプランでゆくのか見ものです。


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2 コメント

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Unknown (山童)
2019-02-23 13:04:36
先生こんにちわ。わざわざ記事を建ててまでのご返答を感謝いたします。これまでの経緯を解りやすく整理して頂き、
その上での見解に舌を巻きました。
いわく「クルドにきえて欲しいが、中国の新疆ウイグルのような民族浄化政策は取らないというアピール」の分析です。
これは鋭い御指摘だと今さら思いました。
エルドアンはムスタファ・ケマルによる建国以来の世俗主義を否定する方向に行っております。それは政教分離の法則(トルコ共和国がイスラム圏で唯一、西欧と価値観を同じくしていた部分)を放棄する事でもあります。
ここで歴史的に我が国の天皇と将軍、西欧の教皇と国王のような権威と権力の分離経験のないロシア・中国側に国のグランドデザインの舵を切るのか?と判断してました。
ここでヤシディ教徒の方とクルドとの関係を突かれてきて、はたと膝を打ったのですね。
つまりNATO加盟国として西側から抜ける判断と、ロシア側の東(ビザンチン帝国いらいキリスト教圏でも東は違う)に入るのかエルドアンらも迷うている証拠なのかと。
「中国とは違う」とアピールする事は、西側、EUとアメリカへのアピールでしょう。
「基本的に共通する価値観は捨てません」という。
西欧は東ローマいらいのビザンチンと違い、教会と国王が監視をし合い、権力を集中させない歴史を歩みました。
これが憲法や議会民主主義へと発展してゆく訳ですが、
西に対して東は権力と権威を一致させて集中する方向で歴史が進んで来ました。
実はこの辺りは現世での国家間の利益だけではなく、西欧の国が底に持つ「見えない遺伝子」のような価値観です。
それは日本人を観ても解るのですね。日本人が150年間であっさり「西側の価値観」になれたのは、敗戦とGHQはあるでしょうが、根本は「2世紀に渡る鎖国で中国の影響と切れたから」であると推察してます。
今、中国のウイグル弾圧と比較して「我々はそうではない」とパフォーマンスするのは、西欧の価値観に反逆はしたくはない……つまりは未だ西側の一員である立場を捨てきれず、
岐路に立って悩んでいる証拠であると。
先生の分析には眼から鱗でした。
改めて先生の知見に感謝をいたします。移動中の入力ゆえ
雑な文の投稿をお許し下さい。
ありがとうございました。
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Unknown (山童)
2019-02-23 14:14:53
蛇足です。ロシア正教やギリシァ正教などの東方教会の国々と西欧の違いは、…カトリックはコンクラーベ(法王選任会議)で選ばれますが、オーソドックス(東方教会)は皇帝や国王が司祭トップの任命権を持ちます。
つまり神聖帝国であり、政教一致。
権威と権力が一点に集中します。実は中国の皇帝も同じくするシステムです。この点で政教分離の世俗主義を歩んだトルコ共和国は日本と似てもないるような……。
ロシア、中国、オスマントルコに共通する「遺伝子」とはこれの事です。
21世紀社会は民主主義や科学文明などなシステムを共有いたしますが、そもそとの底にまで掘り下げると、マザーボードに刻まれたロジックがかなり違うと思います。
私は元カトリックから神道に改宗しました。その目線で見ると、神道はかなり道教や儒教の葬祭儀礼を受け継いでいるのですが、決定的に違う。
それは前近代に大陸に影響させるながら、マザーボードに「縄文文化」が刻まれていて、これが臓器移植などへの嫌悪とか穢れとか…日本どくじの価値観を生んでいると考えていないいます。その点で、エルドアンのトルコ共和国が、
西へ行くのか、東の価値観に合わせるのか?
注目しています。因みに私は大別して、世界は
①西②東③イスラム
に分かれると思うております。ただトルコは③では異端であるとも思います。そこは明治以後の日本と似ている。
①②な東西とは東西冷戦の沢連ではなく、
カトリック西欧の権力と権威の分化と、ビザンチン東方の
神聖政治による一致の話です。
マルキシズムと資本主義の対立やイデオロギーの事ではないです。では。
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