通貨の三大機能とは、1)交換(支払い)の手段、2)価値の尺度(経済の指標)3)価値の保蔵の3つと言われています。デジタル通貨(暗号通貨crypt currency)がこれらの機能を満たすかについては種々の議論がなされていますが、十分に機能を満たすという結論には達していないのが現状でしょう。
そのような中でスマホ等を使った支払いによるキャッシュレス化を推進する風潮がマスコミを中心に盛んになって来ています。政府、経済界が推進しているという点で既に国民の本当の利便性無視の「管理する側・儲ける側」に都合が良い代物という本質が見えてしまっていますが、一部の国民がこの手の風潮を歓迎しているようであるのも危険(歓迎しているという偽ニュースを流しているだけかもしれませんが)な事だと思います。勘違いしている人も多いようなのですが、そもそも「・・ペイ」なるものはデジタル通貨ではない、ペイという名前の通り「ただの支払い手段に過ぎない」ことを理解しないといけません。
支払い手段でかなり流通しているものに「SUICA」があります。SUICAはJR東日本が発行する自動改札で「旅客運賃を支払う手段としてのカード」ですが、ほぼ日本全国の交通機関で使用可能で、学会や旅行で地方に行った際にもSUICAさえ持っていれば切符を買う必要がなくとても便利だと私も思います。場所によっては電子マネーとして買い物の支払い手段として利用することもできます。しかし基本的には通貨のチャージが必要で、使わないとどこかで期限切れになって価値が消失するという点でクレジットカードとは本質的に異なります。つまりチャージしてある価値(金)を使用するので「通貨」を持ち歩いているのと同じですが、あくまで通貨の代わりを担っているのであって「通貨の支払い手段としての役割」を果たしているのみです。クレジットカードは使うことで個人がカード会社に借金をする事が許されるのであって、利息は取られませんが(分割返済では利息も取られる)月末に一括して銀行経由で返済を迫られます。これも「支払い手段としての通貨の役割」を代用しているにすぎないと言えるでしょう。
今流行の「・・ペイ」はSUICAの様なカードの代わりにスマホを用いるだけで、店でQRコードを読み取るという面倒な操作が必要でしかも「・・ペイ」とやらに予め銀行などからチャージしておかないと使うことができない代物です。日常のこまごまとした買い物にはSUICAの方が数段使い勝手も良いしスマートです。大きな額の買い物はクレジットカードの方がチャージなどの手間もなく後から確認もできるし信用も置けます。問題なのは「・・ペイ」が通信手段を使うことで自分の消費性向などがビッグデータとして知らないうちに他人に使われ、その情報に値段が付いてしまうことにあります。個人を特定して後追いすることもいくらでも可能です。そのような「管理社会」に特化したような使い勝手の代物を喜ぶなどというのは「思考停止」以外の何物でもありません。しかも大災害などで停電となり、電波をはじめとする管理システムが停止している状態では、現金による売買ができなければ経済活動が止まってしまう「災害に弱いシステム」であることも認識しないといけません。大災害に備えるべき時期である現代において、時代に逆行したトレンドと言えます。
通貨に変わるものとして、デパートなどの商品券や地域商品券、ビール券などがありますが、通貨の三大機能としての価値の尺度としては「限られた状況で同額の通貨と同じ価値が保証されている」に過ぎず、地域・状況限定であり、半分にちぎって釣り銭にすることもできません。また労働の対価として価値を保蔵することも商品券ではできません(イスラエルで不況のため百貨店の給与がその百貨店限定の商品券で払われたことに出くわしたことはありますが)。デジタル通貨のビットコインが一時流行りましたが、最近某巨大企業のCEOが145億円摩ったという報道もあり、「価値の尺度」が乱高下するような代物は貨幣としては使い物にならず、失格です。
通貨は「同額の通貨は価値の量が同じであると信じている」人類社会が「共有する幻想」に過ぎないのですが、やはり国家が価値を保証する法定通貨でないと「共有する幻想」としては弱いのではないでしょうか。グローバリズムにおいては世界共通通貨(GESARA Global Economic Security and Reformation Act)とか言う怪しげな話も出ていますが、「世界が共通の幻想」を確実に共有するためにはそう簡単に事が運ぶとは思えません。Bit coinを始め様々な暗号通貨が世の中に出ましたが、踊った人は一部のみでそれも殆どの人は損をして終わったのではないでしょうか。現在推進されようとしている「・・ペイ」は中国の様に現金の信用がなく、また現金の所持が個人や店舗では盗難などの怖れがあり危険でできない、データ階層社会・管理社会として支配者に都合が良いという社会では重宝されるけれども、基本はSUICAと同じという認識をしっかり持っておいた方が良いと思います。