rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

権威主義という罠

2019-04-06 00:06:00 | 書評

 岩波の雑誌「世界」4月号の特集は「権威主義という罠」という題名で、なかなか興味深い内容でした。権威主義というのはあまり聞き慣れない言葉ですが、wikiなどによると、「民主主義」と暴力による独裁である「専制主義」の間にある支配体制であり、「権威に自発的に民衆が従う事によって支配階級に都合が良い社会になるように仕向ける」構造の事を言うそうです。そして現代こそは、この権威主義全盛の時代であり、グローバリズム(の勝者)、トランプ、プーチン、習近平の中国など大なり小なり権威主義を利用しており、民衆は権威に自発的に従うことで必ずしも自分達の利益にならない事にも賛成し、自らの権利を支配者達に差し出している、と警告します。

 それでは、統治の理想とされる「民主主義」はポピュリズムや衆愚政治とは異なる、と説明されていますが、古今東西理想的民主主義を実践した社会などというものがあったか、というと極めて心細い。民主主義を謳いながらも現実には代議制であり、国家がリバイアサンとしての絶対的権力を持ち、常に支配者と被支配者に別れて社会が存在していたというのが現実であるように思います。トランプ政権や欧州のナショナリズムを「ポピュリズムである」とグローバリズムの立場からは批判しますが、グローバリズムこそ民主主義からはほど遠い「強欲資本主義」という単一価値観による強制的な世界支配でしかない、「勝ち組以外は被支配者」であるという現実に目を向けない社会構造である事を自覚していない言質であると言えます。

 岩波の「世界」と言うと昔から左寄りの雑誌で内容もリベラルとされる主張がセットになって載っているだろうと想像がつくように感じていました。しかし以前から私が主張している様に、現代は20世紀的な括りでの右左のセット理論では世の中の動きは説明不能になっています。今回「世界」を読んでみると旧来のリベラル的な主張もあるのですが、もっと是々非々でそれぞれの事象を冷静に観察した上でこれはこの点で良い、これは悪いと判断を下していて旧来のセットでステレオタイプに批判をするような知性の低俗さがなく、違和感無く読む事が出来ました。元共同通信記者の伊高浩昭氏の「ベネズエラで何が起きているか」と言う記事も複雑なベネズエラ情勢を2015年のオバマ時代からの米国のマドウーロ政権打倒の陰謀を解り易く解説していて濃い内容でした。

 太田昌国氏の「独裁と権威主義をどう批判するか」という論説もグローバリズム、民族的排外主義の台頭を独裁と権威主義の潮流としながら、これらを批判する左翼勢力にも独裁と権威主義が現れている事に警鐘を鳴らしています。また宇山智彦氏の「進化する権威主義」という論説でも「民衆が抵抗感なく自発的に従属」しやすいよう権威主義自体も巧妙に進化している事を示しています。その中で実体は権威主義の状況でも一方の権力に対してオルタナティブとして存在する勢力があること(欧米に対する中ロのような)は、リテラシーを磨く上で本質を見た上で大切という指摘は頷けると思いました。

 それぞれの論説内用は幅広く内容も深いので一言ではまとめられませんが、今井宏平氏の「強い大統領エルドアンに導かれるトルコ」などは事象を理解する上での資料としても有用であると思われました。

 

白人至上主義とは何か

 

ニュージーランドクライストチャーチで2019年3月15日白人至上主義者がモスクを銃撃して50人の死者を出した事件では、犯人のオーストラリア人ブレントン・タラントが白人至上主義から移民であるムスリムの人達を憎み、モスク襲撃に至ったとされています。しかし日本人には白人・黒人間の差別くらいは理解できますが、アラブ人やヒスパニックが非白人としてどう差別されているか、東欧からの移民への差別、同じ白人でもカソリックとプロテスタント間の差別、カソリックでもアイルランドとフランス人との扱いの違いなどはまず説明できない様に思います。雑誌「選択」4月号では、白人至上主義団体に世界中で数百億円単位の活動資金が大富豪達から流れ込んでいる実体が記事として紹介されています。その白人富豪は多くのユダヤ人が含まれるとか。白人至上主義でも本来反ユダヤのネオナチは対して資金が豊かでないけれども「反イスラム」の白人至上主義団体には「反イスラム産業」と言える程の潤沢な資金が流れ込んでいるという。ニュージーランドは来るべき第三次大戦でも生き残る最期の楽園と富豪達に信じられていて、戦争避難のシェルターとして富豪達が土地を買いあさっている実態があると言います。そこにイスラムが多数移住することはシェルターとしての価値を損なう(そこも戦場になるから)という理由で反イスラムテロには陰で潤沢な資金が提供される現実があると説明されます。

 

トランプがプーチンと仲良くすることを何とか阻止したい、第三次大戦をロシアも交えて起こしたいと目論む「グローバリスト軍産複合体勢力」が仕掛けた実態のない「ロシア疑惑」はようやくトランプ勝利で終焉を迎えました。シリアにおけるトルコ対ロシア、インド対パキスタンの開戦による第三次大戦は失敗に終わっています。ベネズエラもマドウーロが乗ってこず、グアイドは排除されつつある。イスラエルはネタニヤフが検察に起訴され、強硬派はトランプがゴラン高原などの態度を明確にするほど欧州から嫌われるという逆効果に苦しんでいます(トランプ流世界多極化としてうまい政策だと思います)。北朝鮮は軍部がどう動くか未定ですが、しばらく動きはないでしょう。アメリカはこれから未曾有の水害に苦しむことになりそうで、戦争をする余裕などなさそうです。北朝鮮軍部がとんでもない暴発でもしない限り今の所第三次大戦はおきそうにありません。

コメント (4)
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