Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

プロ野球応援団の内側

2015-01-29 13:49:06 | Weblog
日本のプロ野球を観戦に行くと、否が応でも目につくのが私設応援団。しかし、その組織がどのように動いているのか、必ずしもよくは知られていない。本書の中核部分は、スポーツ社会学者である著者が、神戸における広島カープ私設応援団で行った参与観察の記録である。

スポーツ応援文化の社会学 (世界思想ゼミナール)
高橋豪仁
世界思想社

神戸、つまり甲子園はいうまでもなく阪神タイガースの本拠地であり、熱狂的なタイガースファンに囲まれながら、カープを応援し続けることのタフさは想像を絶するものがある。当然、虎応援団とのトラブルは起こるわけだが、鯉応援団内部でも、いろいろな内紛が起きる。

社会学者である著者の観察によれば、応援団は官僚制原理で運営される組織でありながら、ヤクザ組織に見られるような疑似家族制度的な側面を持つ。そこに、本物のアウトローが侵入するおそれもあることから、警察や球団から規制を受け、管理が進む歴史を辿ってきた。

参与観察で得られた様々なエピソードは、とりわけプロ野球ファンにとっては面白いはず。一方、自分にとっては、ボランティアである応援活動にのめりこむ人々の想いも興味深い。本書に登場する「儀礼」「物語」といったキーワードに、その謎を解く鍵があるかもしれない。

本書の著者・高橋豪仁氏を含む、多数の社会学者の共著による『スポーツ観戦学』なる本もある。こちらは野球以外も対象にしており、取り上げられているテーマは幅広い。なかには、根拠なく想いを書き連ねたような文章もあり、自分としては、上に挙げた本のほうが面白かった。

スポーツ観戦学―熱狂のステージの構造と意味 (世界思想ゼミナール) (SEKAISHISO SEMINAR)
橋本 純一 (編著)
世界思想社


追記)『スポーツ応援文化の社会学』には、応援のリズムパタンを分析している章もあり、音楽に詳しい人には面白いのでは・・・(ちなみに著者は、応援団のなかでトランペットを担当していた)。