最近広く注目されているデザイン会社 IDEO が提唱する「デザイン思考」。同社の創業者や出身者の著書がすでに何冊も翻訳されている。しかし,デザイン思考を日本にいち早く導入し,自ら実践されてきたのは慶應大学大学院メディアデザイン研究科の奥出直人教授である。
その奥出直人氏が最近上梓されたのが『デザイン思考と経営戦略』。デザイン思考をいかに実践するかについては前書『デザイン思考の道具箱』にも詳しく書かれているが,新著はデザインの歴史や最近の経営戦略論における位置づけなど,より俯瞰した視点から書かれている。
デザイン思考を企業で実践するとき,1つの抵抗勢力は企業内のデザイナーである。彼らの目にはしばしば,デザイン思考はプロの職能を素人発想で侵すものに映る。守旧派には,消費者に関するデータの統計分析から製品開発すべきニーズが見出せると考えているマーケターも含まれる。
奥出氏は企業へのコンサルテーションを数多く手がけておられる。デザイナー,エンジニア,マーケターたちを職場横断的にコミットさせ,ワークショップを通じて素晴らしいアイデアやプロトタイプを生み出したが,そこで止まってしまってアップル等々に先を越された例もあるという。
つまり,最終的には経営者のビジョンと実行力の問題となる。そのことが,奥出氏がデザイン思考と経営戦略の関係を論じるに至った背景にある。一方,経営戦略の研究者はイノベーションの不活発を認識するものの,それが生まれない現場の状況をどこまで見ているかはわからない。
本書ではしばしばマーケティングが「悪役」として言及される。しかし,ぼくとしては,マーケティングがデザイン思考と幸せな関係をとり結べないとは思っていない。そこで Urban and Hauser の教科書にあるような正統的体系をどう書き換えることができるかが目下の関心事である。
なお,奥出氏の前著『デザイン思考の道具箱』は本書を補完するコンパクトな名著であるが,アマゾンでは「出品者からお求めいただけます」状態にある。版元が早川書房なので,ハヤカワ新書あたりで再販されないかと思う。ぼく自身,2007年に読んで,大変感銘を受けたことを覚えている。
その奥出直人氏が最近上梓されたのが『デザイン思考と経営戦略』。デザイン思考をいかに実践するかについては前書『デザイン思考の道具箱』にも詳しく書かれているが,新著はデザインの歴史や最近の経営戦略論における位置づけなど,より俯瞰した視点から書かれている。
![]() | デザイン思考と経営戦略 |
奥出直人 | |
NTT出版 |
デザイン思考を企業で実践するとき,1つの抵抗勢力は企業内のデザイナーである。彼らの目にはしばしば,デザイン思考はプロの職能を素人発想で侵すものに映る。守旧派には,消費者に関するデータの統計分析から製品開発すべきニーズが見出せると考えているマーケターも含まれる。
奥出氏は企業へのコンサルテーションを数多く手がけておられる。デザイナー,エンジニア,マーケターたちを職場横断的にコミットさせ,ワークショップを通じて素晴らしいアイデアやプロトタイプを生み出したが,そこで止まってしまってアップル等々に先を越された例もあるという。
つまり,最終的には経営者のビジョンと実行力の問題となる。そのことが,奥出氏がデザイン思考と経営戦略の関係を論じるに至った背景にある。一方,経営戦略の研究者はイノベーションの不活発を認識するものの,それが生まれない現場の状況をどこまで見ているかはわからない。
本書ではしばしばマーケティングが「悪役」として言及される。しかし,ぼくとしては,マーケティングがデザイン思考と幸せな関係をとり結べないとは思っていない。そこで Urban and Hauser の教科書にあるような正統的体系をどう書き換えることができるかが目下の関心事である。
なお,奥出氏の前著『デザイン思考の道具箱』は本書を補完するコンパクトな名著であるが,アマゾンでは「出品者からお求めいただけます」状態にある。版元が早川書房なので,ハヤカワ新書あたりで再販されないかと思う。ぼく自身,2007年に読んで,大変感銘を受けたことを覚えている。
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早川書房 |