Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ハーバード白熱日本史教室

2012-06-16 08:59:37 | Weblog
著者の北川智子氏はハーバード大学で日本史を教えている。最初の年は十数人しかいなかった受講者が2年目には百人を,3年目には2百人を越し,ティーティング・アワードを3年連続で取るなど,教育に関して傑出した評価を得ているという。本書にはその実践が要約されている。

ハーバード白熱日本史教室
(新潮新書)
北川智子
新潮社

北川氏の授業が人気を集めている要因の1つは,テーマ設定である。彼女が最初に行ったのは Lady Samurai という講義で,戦国時代の武将の妻・側室に焦点を当てている。ジェンダーという今日的な関心に合致している。もうひとつの授業は KYOTO,これも米国人の興味を惹きそうだ。

もう1つの要因は,アクティブラーニングという手法を取り入れていること。グループワークをさせるだけならよくある話だが,映画やポッドキャスティングの制作までさせたりする。また,受講者に授業中に踊らせたり歌わせたり,まさに「身体を動かす」授業が行われている。

著者の熱意と創意工夫は並大抵ではないが,それを支える大学の支援もすごい。ハーバードでは受講者2518人に対して1人のTAがつく。しかも,授業の準備や学生のサポートなど,かなり深くコミットする。TA に出席をとらせることぐらいしかできない日本の大学とは比べものにならない。

ここまで多くの TA を雇えるのは,米国の大学でも恵まれたほうだという。学生の積極的な参加も,最優秀の学生が集まるハーバード大学だから,といえなくもない。しかし,各教員の持ちコマ数やアドミの負担,学生一人あたりの教員数などで,日米の大学格差は限りなく大きい。

北川氏は現在32歳で,まだテニュアを獲得していない。今週号の週刊新潮に出ているインタビュー記事によれば,今後もう1つの専門である数学史の研究のため,ケンブリッジ大学へ移るという。元々数学を専攻としてカナダに留学されており,マルチな才能の持ち主である。

学内でベストドレッサーに選ばれたり,講義の最後に着物姿で登壇したりというエピソードから,自らのイメージをきちんと管理することもまた重要と思われる。ジェンダー論的には問題かもしれないが,週刊新潮は「ハーバード大 白熱の美人講師」という見出しをつけている。