復刊した WIRED,三省堂書店本店では平積みされることなく,発売から1週間も経たないうちに店頭から姿を消していた。同店としてさほど売れないと予測してあまり入荷しなかったのか,取引条件その他の要因があったのか知る由もない(現時点で amazon には在庫あり)。
個人的に WIRED は非常に懐かしい本だ。90年代,当時の職場の1階にあった本屋でよく買った(もちろん日本語版を!)。そこにはメディアの未来について,当時最も進んだアイデアが書かれているように感じていた。よく考えれば,その頃 Google なんて会社は存在しなかった。
WIRED のコンセプトからすれば,それが紙媒体として復活するのは皮肉にとれなくもない。しかし,地下鉄のなかで復刊した WIRED を眺めていると,かの iPad2 もまだまだこの感覚を伝えきれないな,と感じる。それだけの楽しさ,美しさ,知的な刺激をこの雑誌は持っている。
いくつかの「論争喚起的」な記事のなかで,ぼくの見る Twitter のタイムライン上で最も話題になっていたのは「『ソーシャル』という罠ープライバシーが消えていく」だと思われる。過剰なペダンティズムに彩られた文体は,ぼくにとってある種の懐かしさを感じさせる。
もう1つ,ぼくのタイムラインで話題になっていたのが「ぼくの iPhone が17人を殺したのか?」だ。中国で iPhone の部品などを製造しているフォックスコン社の工場で,2010年の3~5月に例年より多い数の自殺者が出たことを取り上げる。
著者は、従業員「100万人に対して17人の自殺者は、それほど多い数とはいえない」と書きながらも、「消費者の購買行動を煽るテキストを書き続けてきた身としては、規格外の罪悪感を背負わされた」と感じて現地へと取材に向かう。そこで彼が見たものは,どれだけ前近代的な労働の実態であったか?
このわかりやすい期待は、現地取材であっさり裏切られる。強いていうと10時間を越す労働時間が問題だというが,日本人から見れば,驚くような話ではない(だから正常だといってよいかは別にして)。米国人の正義感が引き起こす1つの典型的な結末かもしれない(大量破壊兵器は存在しなかった!)。
日本独自の企画として興味深いのは「WIRED 大学 新・教養学部必読書」に掲げられた50冊。ハッカー系から経済書,哲学書まで幅広い。このなかでぼくが「読んだ」本は5冊程度で,WIRED 大学への入学はとても無理。ただ「持っている」本はかなりあり,入学準備だけは怠っていない!
個人的に WIRED は非常に懐かしい本だ。90年代,当時の職場の1階にあった本屋でよく買った(もちろん日本語版を!)。そこにはメディアの未来について,当時最も進んだアイデアが書かれているように感じていた。よく考えれば,その頃 Google なんて会社は存在しなかった。
WIRED VOL.1 (GQ JAPAN2011年7月号増刊) | |
コンデナスト・ジャパン |
WIRED のコンセプトからすれば,それが紙媒体として復活するのは皮肉にとれなくもない。しかし,地下鉄のなかで復刊した WIRED を眺めていると,かの iPad2 もまだまだこの感覚を伝えきれないな,と感じる。それだけの楽しさ,美しさ,知的な刺激をこの雑誌は持っている。
いくつかの「論争喚起的」な記事のなかで,ぼくの見る Twitter のタイムライン上で最も話題になっていたのは「『ソーシャル』という罠ープライバシーが消えていく」だと思われる。過剰なペダンティズムに彩られた文体は,ぼくにとってある種の懐かしさを感じさせる。
ザッカーバーグはベンサムの発案を,究極の形態まで推し進め、その結果プライバシーというものを歴史的遺物へと追いやるパノプティコンを生み出している?あるいは、ベンサムの流儀でいえば、Facebook は、「最大幸福の目録」をつくりあげているといえるのかもしれない。そこでは、地球上のあらゆる感情が数量化され,ソーシャル情報化社会の経済圏において、ソーシャルメディアは中央銀行の役割を果たすことになる。本当にそうなのか?こういう一見奇をてらった,生硬な主張によって様々な議論を喚起することこそ,WIRED らしさといえる。人間はいかなる意味でソーシャルであり,そうでないのか?それをテクノロジーへの無知ではなく,熟知したうえで論議することこそ,WIRED 読者の愉しみといえる。
ソーシャルネットワークは罠なのだ。神をも恐れぬシリコンヴァレーの企業家たちと、理想主義的な共同体主義者たちによって推進されるこのカルト集団は、人間の条件について決定的に誤った信念に根ざしている。なぜならわたしたちは、本来がソーシャルな生き物ではないからだ。フェルメールの絵画がいみじくも描き出したように、人間の幸福は、実際は、社会から放っておかれることにあるのだ。
もう1つ,ぼくのタイムラインで話題になっていたのが「ぼくの iPhone が17人を殺したのか?」だ。中国で iPhone の部品などを製造しているフォックスコン社の工場で,2010年の3~5月に例年より多い数の自殺者が出たことを取り上げる。
著者は、従業員「100万人に対して17人の自殺者は、それほど多い数とはいえない」と書きながらも、「消費者の購買行動を煽るテキストを書き続けてきた身としては、規格外の罪悪感を背負わされた」と感じて現地へと取材に向かう。そこで彼が見たものは,どれだけ前近代的な労働の実態であったか?
このわかりやすい期待は、現地取材であっさり裏切られる。強いていうと10時間を越す労働時間が問題だというが,日本人から見れば,驚くような話ではない(だから正常だといってよいかは別にして)。米国人の正義感が引き起こす1つの典型的な結末かもしれない(大量破壊兵器は存在しなかった!)。
日本独自の企画として興味深いのは「WIRED 大学 新・教養学部必読書」に掲げられた50冊。ハッカー系から経済書,哲学書まで幅広い。このなかでぼくが「読んだ」本は5冊程度で,WIRED 大学への入学はとても無理。ただ「持っている」本はかなりあり,入学準備だけは怠っていない!