Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

人工知能学会「仕掛学」@盛岡

2011-06-03 22:38:31 | Weblog
盛岡で開かれた人工知能学会全国大会に参加した。東京を発ったのは,授業の関係で昨夜の夜8時。盛岡行きの終電は出たあとなので,仙台で一泊して,今朝早く盛岡入りした。学会は最終日であったが,ぼくの参加した「仕掛学」セッションには,かなりの数の聴衆が集まっていた。

オーガナイザーの阪大・松村真宏さんによる導入,同研究室周辺での研究の報告のあと,「仕掛学」という旗印の下集まった研究者たちから研究発表が続いた。電子メディア環境でのコミュニケーションを分析した研究,少数の実験参加者が克明に自己の(メタ)認知を記録する研究,などなど。

このセッションは Ustream で中継されたほか,ハッシュタグを設けて Twitter 上でも議論された(まとめはこちら)。仕掛学とは何か,そこに何を求めるかには様々な意見がある。フロアからも,単純に行動を変えるというだけでは範囲が広すぎるという懸念が出された。これらは期待の裏返しでもある。

ぼく自身は「選好形成と行動誘導』という報告を行った。博士論文で行った選好形成モデルに関するサーベイをベースに,無意識や社会的相互作用という(自分的に)最近の話題を補足して,概念的な枠組みを提案したもの。無意識的な選好,意識的な選好,社会的相互作用の三層構造で整理した。

それがどの程度の反響を呼んだかは,上述の togetter の14:30-40ごろのツイートを見ていただけばわかる。ごく一部の方の関心を惹いただけであったが,これは想定内であった。恐縮ながら,今回は自分自身の研究の道程を整理するために,発表の機会を利用させていただいたといえる。

驚いたのが,名古屋大学の上野ふきさんによる「マルチエージェントシステムを用いた社会の自律的形成」という発表。タイトルこそありがちだが,内容は哲学者ライプニッツの「モナドロジー」のモデル化に挑んだもの。型破りな発想で,細かい点はともかく,今後の発展が非常に楽しみだ。

そのあと「人と環境にみる高次元のデータフローの生成と解析」を聴講。途中からなので流れはよくわからなかったが,有名なアンドロイド研究者・石黒浩先生の研究者は変態であるべきだという発言や,人工生命の池上高志先生の,捨てられがちな例外事象に目を向けよという発言に刺激を受ける。

このセッションは定刻を超えて続いていたため,主催者から早く終わるようにとの要請があった。その直前,高次元データを扱うツールとしてニューラルネットワークが話題に出た。それは数理的な精緻化に進んでしまったために,本来の可能性を失ったという議論になった瞬間,セッションは終了。

石黒先生の,コンビニエンスストアの全アイテムのデータをニューラルネットに食わせて,そこからパタンを発見させるぐらいのことをしたらどうなんだ,ということばが印象に残った。そういうことを,グーグルなら本気でやるかもしれない・・・。自分の「研究-変態度」の圧倒的不足を痛感する。