Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

JIMS部会~Twitter研究,桜満開

2011-04-16 15:11:45 | Weblog
昨夜,久しぶりにJIMS「消費者行動のダイナミクス」研究部会を開く。2件の発表はいずれも Twitter に関わるものだ。
山本晶(成蹊大学),松村真宏(大阪大学):マーケティング・エコシステムー広告、ソーシャルメディアと顧客獲得のダイナミクス
ある会員制のモバイル・サイトを対象に,TV広告とTwitterおよびオフラインでのクチコミがどう顧客獲得につながるかを SEM で分析している。なぜエコシステムと呼ぶかというと,TV広告を雨,クチコミを雨を受けて咲く草花,顧客獲得を実がなる樹木に喩えたからである。

興味深いのは,ガラケーとスマホのどちらの会員になるかで影響の経路が違うことだ。ガラケー会員は,TV広告の直接効果のほか,オフラインのクチコミを通じた間接効果によって獲得されるが,スマホ会員は広告の直接効果のほか,Twitter のクチコミを通じた間接効果によって獲得されたという。

この分析は日次データを用いる。広告→クチコミ→入会の連鎖が1日で完結すると仮定されている。ダイレクトレスポンス広告の効果の持続時間はきわめて短いはずで,今回も同じであれば問題はない。質問し忘れたのが,質問紙調査で調べたオフラインのクチコミも日次データなのか,ということだ。

このモデルでは,クチコミはTV広告に誘発されるだけだが,自生的な発生を考えなくてよいのかという主旨のコメントが出た。それをするには,多変量ベクトル自己回帰のような手法が必要かもしれない。エコシステム(生態系)といわれると,循環的な因果関係を考えるのが普通なので・・・。
松村真宏(大阪大学):Pray for Japan
次いで,松村さんから今回の大震災に関連する分析の報告がある。地震の直後流布した,コスモ石油の二次災害に関するツイートに対して,IDM (Influence Diffusion Model)が適用された。1つのツイートに記された RT の履歴から影響関係を分析する点が画期的。これは目からウロコであった。

大震災によって,ソーシャルメディアの正負両面の役割がより注目されるようになった。そうしたなか,地震が起きた数秒後からデータの収集を始め,今回の発表の直前に閃いたアイデアをあっという間に分析に反映させる,松村さんのスピードと生産性の高さは敬服するしかない。

そのあとは例によって大懇親会。店の盛況ぶりは,外食産業が危ないという風評に反するものであった。被災地への思いを込めて飲んだ日本酒(ただし,すべて東北産であったかどうか不明・・・)が翌日わずかに体に残った。