Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

20歳のときに知っておいてほしいこと

2010-12-20 16:11:32 | Weblog
だいぶ時間が経ってしまったが,先週の木曜,明治大学アカデミーコモンでティナ・シーリグ氏の講演会が開かれた。当日ロビーには長蛇の列ができており,大ホールのなかはほぼ満員であった。明大のゼミナール協議会が主催する講演会ではあったが,他大学の学生もかなり参加していた模様である。

講演の内容は,彼女の著書『20歳のときに知っておきたかったこと』とかなり重なっていた。したがって,この講演に興味はあるが聴き逃した方は,本を読めばよい。そのメッセージを要約すると,既成概念にとらわれない考え方をすること,失敗を恐れず,むしろそれを通じて成長すること,などになる。

そうまとめてしまうと,イノベーションに関する多くの本に,すでに書かれていることじゃないかと指弾されそうだ。確かにそうだが,何度いわれても実行できないことについては,何度も耳を傾ける必要がある,と答えたい。しかも著者の体験を交えた語り口がより説得的なので,今度こそ身につくはずだと。

20歳のときに知っておきたかったこと
スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ
阪急コミュニケーションズ


著者は,ただただ起業や冒険を推奨しているわけではない。本書は,起業家を目指す人々が往々にして陥りがちな危険,他人との協調を過小評価して,自己中心的に振る舞うことの危険などをきちんと指摘している。失敗をいかに迅速に認め,謝罪し,立て直すかについて自身の経験を紹介している。

起業といっても,結局それは人が行うことであり,人と人の交流のなかで育つものだ。優れたアイデアと資金があれば成功する,というものではない。こうしたヒューマンな,あるいはソーシャルな側面にも目配りがある点が,この本,あるいはティナ・シーリグ氏の優れた点ではないかと思う。

上述の講演会を聴講するようゼミ生たちに強く推奨した。3~4年生は何人か参加したようだが,2年生はゼロであった。キャンパスが離れているとはいえ,1年生や他大学の学生にも参加者がいたことを考えると残念なことである。情熱と足腰が伴ったクリエイティビティでないと,何も生まれない。