昨日の続き。(笑)
掲載写真の大西順子のアルバム「WOW」が出た時のことも何となく覚えている。
ジャズ雑誌なんか読まなかったので、これもミュージック・マガジン辺りから得た情報だった
かもしれないが、とにかく絶賛だらけだったように記憶する。ジャケットに写るその人が
美しいこともあって、「そのうち聴いてみたい」と思ったはずだ。
まあ、そんなことを思いながらも93年当時の自称一本気なロックンローラー(笑)は、脇目もふらずに
ロック道を邁進していたので、この盤を手に取ることもなかったのだが先日ようやく
手にした。で、その格好よさに驚いたというわけである。って、昨日と同じやないか。(笑)
最早20年前から言い尽くされたであろうが、低音が効いた重いピアノの音に軽く眩暈を
感じる。鍵盤を叩くタッチが力強いこともあってか、これを目隠しして聴かされたらまさか女性が
演奏しているなんて思いもしないだろう。
ジャズの世界ではとっくに名声を得ている彼女ではあろうが、こういう規格外なところは
ロック者である私には好都合というか、出会えて良かったということになるのだから人の好みというのは
不思議である。
ジャズの巨人にして最長不倒のデューク・エリントンと、セロニアス・モンクに敬意を表し、咀嚼した
ものを演奏に反映させている盤を、両者をそれほど得意としない私が気に入ってしまうというのも
因果なものだ。
大西自身は12年にプロ演奏家からの引退を表明している。引退表明文からは自身に厳しいが故の
決断であることが読み取れたのだが、私の勝手な解釈だとそこには彼女の初期衝動が全て
つぎ込まれたこのデビュー盤「WOW」の存在があるのかもしれない。それほど強力な盤であると
聴くたびに思うことしきり。
また、聴き手としての私が未熟ということもあるが、彼女自身が言うような「自分の音楽が焼き直
しだったのでは」なんてことは感じはしない。なんせ、私が主戦場とするロック・フィールドは焼き直し
だらけの音楽だし。オマージュもコラージュも紙一重、妙に持ち上げられる人がいれば叩かれる
人もいる。
自分に厳しい分、その自我も大きかったはずでリーダー作よりサイドで参加した盤の演奏が
素晴らしいという人もいるわけで、ここから先は私がもっと掘り下げていかねばならない。
ピアノ・トリオに安らぎを感じるとか、寝るときはピアノ・トリオでも聴きながら、なんていうことは
私には無い。ピアノの音は耳に強烈に響き、それはディストーションを効かせたギターの比では
ない。そんな楽器を更にファットに演奏する大西順子の音楽は私に極度の緊張を強いる。
そして、私はその緊張を楽しむのだ。
緊張することを恐れてはいけない。緊張状態に慣れるようにするべきだろう。