HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

I'VE HAD ENOUGH

2014-07-30 20:39:02 | ROCK

今年も大物ミュージシャンの派手な組み物が数多く発売され、またこの先も
多くのリリースが控えている。以前も書いたが、価格に見合う内容であることが購入の
大前提となるので、例えば一つの箱の中にDVDとブルーレイ・ディスクが同梱されて
いたりすると、それはもう興醒めの極みであり、途端に購買意欲を失う。
豪華な本だのバッヂだのステッカーだのが添付されていても、である。

今回のザ・フーの「四重人格ライブ&モア」の特殊パッケージなんかは、その最たるもので
単純に別売りされるCDとDVDをバラで買ったほうが大幅に安い場合、いろいろと天秤にかけて
考えたものの、大箱の購入を「良し」とするわけにはいかなかった。よって、今回は
CDとDVDの輸入盤を単体でそれぞれ購入した。全く同じ理由でクイーンの「ライブ・
アット・ザ・レインボー74」も大箱の購入は見送り、単体でCDとDVDを予約した。
だってほら、限られた予算内で他にも聴かなきゃいけないブツが山ほどあるもので。(笑)

掲載写真は昨年7月8日ウエンブレー・アリーナで行われたザ・フーの四重人格全曲演奏
ツアーの最終公演を捉えたDVD。このツアーにはお馴染みのザック・スターキーや
ラビットの姿はなく、3人のサポート・キーボード・プレイヤーに2人のホーンが参加し、
ドラムスはロジャー・ダルトリーのソロ公演のツアー・メンバーが叩いている。

今更、「QUADROPHENIA」がどういう趣旨のアルバムだとか、私がどういう想い入れを
持っているかなんてことは、過去に散々書いたのでここでは書かない。
スクリーンに様々な時代のキースとジョン在籍時の映像が流れ、ピートとロジャーが
2013年に「四重人格」を演奏する、ただそれだけの映像である。

時が流れ、幾人かが去り、生存者は過去の名盤を再現する。単なるノスタルジーと受け取る人が
いても不思議でないし、「トミーを演奏しきったので、今度は四重人格を演奏し、最後の総まとめ
への準備をしている」と捉えるのも間違いではないだろう。

しかしながら、いくら年月が流れ、物質が溢れ文化が進んだとしても個人の成長過程に
於ける心の葛藤というもの、変わりなく誰しもに訪れるわけで、そういう意味合いでは
「四重人格」はオール・タイム・スタンダードとして聴き継がれるアルバムであるから、
単なるノスタルジーと捉えるのは早計である。

私にとってはノスタルジーだが、初めて「四重人格」に接する10代にとっては「リアル」
以外の何物でもないだろうから。

12年のサンディー・レリーフ・コンサートで演奏された時のように『5:15』では74年の
チャールトンでのキース・ムーンの映像と生演奏が同期される。今回もロジャーはずっと
客席に背を向け後方のスクリーンに映るキースとのジョイントを楽しんでいたようで
往年のファンには感慨深いシーンとなった。

また、ジョン・エントウィッスルのベース・ソロの映像と生ドラムスが対峙する場面もあり
こういった光景は今まで見られなかった試みとして新鮮に映った。

今後、ザ・フーは結成50周年を祝う大ヒット・パレード・ツアーを行い、ライブ・バンドとしては
一線を退くようだ。「そんなにヒット曲があったけ?」という冗談はともかく、ロジャーの声の
調子を鑑みても、もう潮時というのが正しい選択なのかもしれない。

確かに全盛期の記録とは言えないのだが、ザ・フーという苦闘のバンドの歴史を顧みる
資料は多いに越したことはない。何十年後かに、この映像を見た後追い世代に「ザ・フーは
歳をとっても凄かった。」と言ってもらえれば、長年のザ・フーのファンとして、これほど
うれしいことはない。

そんなことを思いながら映像を見た2時間であった。

コメント
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