PLAYING FOR CHANGEというプロジェクトを、どう説明したらいいのかうまく言葉が
見つからないのだが、「音楽を通して世界に想像、連携、平和をもたらすことを目的とした
マルチ・メディア・ムーブメント」ということらしい。
1曲毎に世界各地のミュージシャンが多数参加し歌い演奏するもので、数年前に証券会社
グループの銀行のCMで『(SITTIN' ON)THE DOCK OF THE BAY』が使われたのを
覚えている方もいるだろう。
実は私はあのCMが気に入らなかった。たった30秒かそこらで全体像など掴めるわけは
ないのだが、直感的に「俺のとは違う」と感じたわけで、なんとなく気取ったように思えたのだ。
アルバムを聴きもしないで曲目を見て『STAND BY ME』とか『ONE LOVE』とかの選曲にも
辟易としたし。
さて、その考えを改める時がきたようだ。
今回で3枚目となるプロジェクトなのだが、私がアルバムを買った最大の動機はキース・
リチャーズさんが参加していること。有名曲が取り上げられることが多いこのプロジェクトにおいて
自前の曲『WORDS OF WONDER』を取り上げているというのが泣かせた。(笑)
しかも大して売れなかった2枚目のソロ「MAIN OFFENDER」収録のこの曲を、なんと
『GET UP , STAND UP』と繋げて演奏しているのだから、最高というか恐れを知らないとは
このことである。(笑)
購買動機は極めて「純粋な不純」(笑)であったが、添付されているDVDを通して見て驚いた。
音楽とはこんなに楽しく演奏できるものなのか、というほとんど阿呆のような感想しかでてこない
純度100%の映像がそこにあったのだ。
確かにキースさんや、ロス・ロボス、タジ・マハールにケブ・モーといった著名なミュージシャンの
参加はプロジェクトの名を拡げるために有効であるが、31の国から参加した185人の
ミュージシャンの誰もが楽しそうに様々な楽器を演奏する様は見ていて飽きないし、自然と
笑みがこぼれる。私はしないが、踊りだした人がいてもおかしくはない。
椅子に腰かけ無表情或いは眉間に皺をよせてテクニックを追及したり、現状打破を訴えて
勇ましくアジテーションする音楽、はたまた異性(人によっては同性)の関心を惹くための
演奏、そういったものを嫌いでないことを断り書きとして書いたとしても、楽しく明るく演奏する
音楽の魅力にはやられてしまった。
本作はCDとDVDがセットになっているのだが、まずはDVDを見ていただきたい。
様々な国の街並みや風景、様々な楽器を見ているだけで多幸感で満たされるし、演奏は
的確で何よりミュージシャン達の表情がいい。
偏屈なロック者にも開かれた扉があった、というただそれだけで嬉しくなった私である。