HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

追憶のブートレグ61・ACT4 / BRUCE SPRINGSTEEN

2008-05-09 21:13:06 | ROCK
中学の時は周りに洋楽を聴いているヤツなんて皆無に近かった。
中学を卒業する少し前に友人の家に行くと、そいつが友達から借りた
ビートルズのLPがあった。それがLPという形態で洋楽に触れた原体験
である。で、中学卒業記念でも高校入学記念でもどっちでもいいが、
その時期に初めて自分で買った洋楽のLPがビートルズの「OLDIES」。
そこから徐々に深みにはまることになるのだが、月に1枚のLPを買うのが
やっとであったので、もっぱらFMで曲をチェックする毎日。
そんなある日、FM番組から曲名の紹介も無くいきなり流れてきた
ブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」に衝撃を受けたことは
以前にこのブログでも書いたことがある。

リアル・タイムというにはちょっとずれるが、当時のボスの新譜は
「ザ・リバー」だった。2枚組にも関わらずクラスの猛者がこれを購入し
聞かせてもらったのだが、単純に格好いいと思ったものだ。クラスで少数の
洋楽好きの何人かが「ボスは格好いいな。」とよく言っていたのを耳にした
大して音楽に興味の無いヤツがその1年後、勇んで「ネブラスカ」を購入し
手におえなくて困っていたのが今思い出しても笑える。

友人に「ザ・リバー」を聞かせてもらった直後にFMで「明日なき暴走」を
聴いた私はアルバム「明日なき暴走」を手に入れる。全8曲というのは
2枚組の「ザ・リバー」に比べると曲数はあっさりしたものだが、密度の
濃い曲ばかりですぐさま愛聴盤となる。しかし、なんか引っ掛かるものが
あった。それはアルバムの音作りのことである。
間に78年の「闇に吠える街」を挟んで基本的にこの3枚のプロデューサーは
同じであるのに、なんで「明日なき暴走」は音が違うのだろうか。

「ディランのような詩を書き、スペクターのようなサウンドでデュアン・エディ
のようにギターを弾き、何よりロイ・オービスンのように歌いたかった。」
というボスの言葉は今では知らないファンはいないくらい有名だが
フィル・スペクターのつくった音を体験するのはずっと後になってからだった
ので、「明日なき暴走」がスペクター・サウンドの影響下にあることに
なかなか気がつかなかった。
スペクター・サウンドといえば誰でもまずは「深いエコー」を思い浮かべる。
エコーは大事だが、それ以上に大勢のミュージシャンが演奏し音を重ねると
いう行為がエコーと同じくらい重要なのは今の私なら理解できる。

どんなふうにして「明日なき暴走」は録音されたのだろう、アウトテイクが
あったら聴きたいと思った私の思いを叶えてくれた最初のブートレグが
掲載写真の物。直接関係のない曲が含まれたり、インストがあったりするが
曲として「明日なき暴走」が4テイクも収録されているだけで十分嬉しかった。
それを聴いて感じたのが、完成テイクは随分色々な音を削ぎ落として世に出た
のだな、ということである。一番派手なテイクはボスのボーカルはダブル・
トラック、女性コーラスやストリングスがふんだんに使われたもので、
そのテイクも十分面白い。だが曲のスピード感を重視するためにホーンや
ストリングスを削ぎ落としたのだなと思うと、足し算でできた曲とばかり
思っていたのが足し算の末に引き算があったことがわかって、これは面白かった。

ボスのアルバムの中で最もスペクター・サウンドに肉薄した「明日なき暴走」、
実はこの1枚の質感を失わせたくないために、ボスは当初リマスターを
施さなかったのかなと思ったり。リマスターの結果は皆さんご存知の通り、
アルバムの熱気を失わない素晴らしいものだったのだけど。
今でもこのアルバムの録音方法がどうだったのか非常に気になる。
楽器を重ねる代わりに1本マイクを立てる場所に2本立てて、つまりライン
録音以外は通常の2倍のマイクを立てて録音したんじゃないかな、なんて
妄想していたのだけど、30周年記念盤のDVDでそんなことは語れていな
かった。
実際はベーシック・トラックの上に多くの楽器を追加してあの音に
なったんだけどね。アコースティック・ギターだけで、4回の
ダビングとは恐れ入りました。こうなってくると世に出るバージョンが
完成する前の一番多くの楽器や声が重ねられたバージョンが聴きたく
なってくるのだが、それは粋ではないのだろうな。(笑)
コメント (6)
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