HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

PHIL OCHS / REHEARSALS FOR RETIREMENT

2004-11-13 22:44:04 | ROCK
ニック・ドレイクの「BRYTER LAYTER」を気に入らない人は
大抵こう言う。「アレンジが煩すぎてニックの楽曲の良さが殺されている。」と。
フォーク・リバイバリストでも気取るんなら、笑って無視できるが
サイケ者を自称する人の物言いなら、皮肉のひとつも言いたくなる。
「あなたのボブ・ディランのフェイバリット・アルバムは1~4枚目の
どれですか?フィル・オクスなら最初の2枚が好きですか?」

プロテスト・フォーク・シンガーとして吹き込んだアルバムはことごとく
売れず、69年発表の6枚目のこのアルバム・ジャケットでフィルは
自分の墓石を作ってしまった。
「僕の人生がジョークだった頃、
僕は何も知らず、すくすく育った。
僕の人生、そいつが堪らない物になったとき
誇り高くコントロールすることをやめた」
こう歌われる「マイ・ライフ」に代表されるようにこのアルバムは
絶望と虚無に満ちている。自分の人生さえ冗談みたいな物だと
投げやりなフィルの当時が投影されている。アルバムの曲自体は
よく出来たフォーク・ロックの音で、
冒頭に書いたニック・ドレイクのアルバムや、ディランの
同時期の物と比しても何ら遜色は無い。

フェイバリット・トラックは「THE WORLD BEGAN IN EDEN BUT
ENDED IN LOS ANGELS」。ホーンのアレンジも軽快な耳あたりのいい
曲でアメリカの闇を暴く。
翌年「グレイテスト・ヒッツ」という笑えないタイトルの
オリジナル・アルバムを出し、ほとんどの音楽活動を止めてしまう。
アルバム・ジャケットが現実のものとなったのは76年のことであった。
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CAETANO VELOSO / SINGLES

2004-11-13 20:49:56 | BRASIL
ムジカ・ロコモンドという本がある。
ブラジル物のレコード収集ガイド本として、選者のコメントの
内容の良し悪しはあるものの、ジャケットを800枚も見られる優れものである。
その本で最初に紹介されるのが、カエターノ・ヴェローゾ。
カエターノのオリジナル・アルバム未収録の、シングルやEP、オムニバスから
編集されたのがこの「シングルス」というCDである。

気持ちのいい音を追求し続ける時代の曲もあれば、当時の軍事政権に立ち向かう
怒りに満ちた時代の曲もある。ムタンチスのハードな
演奏に載せてロックする曲は後者にあたるが、欧米のサイケデリック・バンドに
負けず劣らずの出来である。ジョルジ・ベンやジルベルト・ジルとの共演シングル
も含む素晴らしいコンピレーションCDであるが、ロック者は更に
注目すべき点がある。カエターノは多くのビートルズ・カバーを残して
いるが唯一のストーンズ・カバーをこのCDで聴く事が出来る。
76年のコンピレーション・ライブからのセレクトで、曲は「LET IT BLEED」。
ライブ演奏では本家ストーンズでさえ、だれた演奏を残す難曲を、前半は実にクールに
演奏し後半は「ああ、ブラジルのアーティストがカバーしてるんだな。」と
唸らずにいられないアレンジで、素晴らしいバージョンに仕上げている。

ブラジルでも未CD化のトラックを、日本独自で企画編集した世界に誇るCDである。
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THE DAMNED / NEAT NEAT NEAT

2004-11-13 20:15:47 | THIS SONG
「パンクのレコードっていうとまず最初に何が想い浮かぶか?」
酒の席で唐突に、こう訊かれた。飲んでいようがいまいが、こういう会話はいつも唐突に
始まる。しかも去年の話である。(笑)ロックを聴きはじめて3年目くらいの中高生の
会話ではなく、いい歳をした大人の会話である。

クラッシュのファンだったので「ロンドン・コーリング」か何かを答えとして
挙げたように覚えているが、何か釈然とせず、
帰りの電車の中でいろいろと思い巡らせた。
「ダムドかデッド・ボーイズの1ST、だな」、
と結論に至ろうとしたのだが、
「いや、パンクならシングルだろ。」ということで、
最終決定されたのが、
ダムドのこのシングル盤である。邦題は「嵐のロックンロール」。性急でやかましく、2分40秒で
全てが片付く、1977年リリースのダムドの2枚目、スティッフ・レーベル10枚目のシングルとして
世にでた。これからスーパーマーケットに強盗にでも入ろうかという、白黒のジャケットが
なんとも格好いい。ニック・ロウがプロデュースした1STアルバムのプロモーションとして
これほど打ってつけの曲は無い。(1STシングルのNEW ROSEはその約4ヶ月前の発売)

1STアルバムで「誰にも感謝しない」と77年に相応しいサンクス・クレジット
で突っ張ったにもかかわらず、インナー・スリーブの写真は
エディ&ザ・ホット・ロッズの物が誤って使われたという、間の抜け方がその後のダムドの
迷走ぶりを象徴している気がして好きなエピソードである。
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