ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/01/23 歌舞伎座夜の部①「廓三番叟」「春興鏡獅子」

2007-03-15 23:59:12 | 観劇

1月の歌舞伎座の感想のアップは昼の部は完了。夜の部が手付かずだったのをちゃんと書いておきたい(順不同)。昼も夜も4本立てというのは散漫な感がある。仕方がないことなのだろうか。
1.廓三番叟(くるわさんばそう)
新春を寿ぐ舞踊を昼の部は「松竹梅」、夜の部はこの演目。「廓三番叟」は一昨年10月にも観ているが「加賀見山」の印象が強すぎてかすみがち(その時の感想はこちらの記事の終わりにある)。
今回の配役は以下の通り。
傾城千歳太夫(翁)=雀右衛門  番新梅里(千歳)=魁春
新造松ヶ枝(千歳)=孝太郎  新造春菊(千歳)=芝雀
太鼓持藤中(三番叟)=富十郎
前回は翁・千歳・三番叟を3人で、今回は千歳にあたる配役を3人に増やした5人バージョン。こうして変化をつけて上演できるものなんだと合点した。やはり雀右衛門の傾城姿を正月から観ることができるのはめでたい。この役は豪華な内掛けを2枚を着替えて美しく見せるところが見せ所のようで足の不調で動けない今はちょうどいいお役なのだろう。魁春が年増の番頭新造、芝雀と孝太郎が若い新造で花を添えながら雀右衛門のオーラを見にまとうことが大事なんだなと思った。富十郎の太鼓持は雀右衛門と並ぶと贅沢の限り。短いがとにかく華やかということで4本立てのスタートにはぴったりだった。

2.新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
「鏡獅子」の初見は一昨年の浅草歌舞伎。一部の亀治郎と二部の七之助の鏡獅子を見た。その時の感想は以下の通り。
亀治郎の感想 
七之助の感想
五年ぶりだという勘三郎の鏡獅子。NHKの新春初芝居中継でまず見た。そして玉三郎のDVDでも予習してから観劇にのぞんでみた(予習の時の記事はこちら)。
今回の配役は以下の通り。
小姓弥生、後に獅子の精=勘三郎
胡蝶の精=宗生  同=鶴松
老女飛鳥井=歌江  局吉野=歌女之丞
用人関口十太夫=猿弥  家老渋井五左衛門=芦燕

まず歌江と歌女之丞のふたりの大奥の老女らしい風情がよい。そのふたりに襖の奥から勘三郎の小姓・弥生が引き出されてくるとあまりの可愛らしさに溜息が出る。勘三郎の娘姿は本当に可愛らしい。歌舞伎座での襲名披露公演の「道成寺」の花子の時よりも顔が引き締まっているので可愛さが増している。
恥じらって引っ込んでしまい再び連れ戻されて置き去りにされてようやく覚悟を決めて踊りだす。その無心な様子がよい。愛嬌がこぼれることもなく、ただただ無心に踊る踊り上手の若い娘という感じ。予習で見た玉三郎丈の弥生よりももっと年若くて小柄な娘という感じ。ここまでの娘によくもなれるものだと感心しきり。
引き抜きもなく、手踊りをしたり扇子をもったり扇に持ち替えたり、二枚を飛ばしたりと踊りの変化で見せていくが、とにかく目をこらすしかなかった。踊りばかりに気がいって歌詞がききとれなくなっていたがもういいやと割り切って見ることに徹した。

手にとった獅子に乗り移られて支配されて花道を引っ込むと胡蝶たちの登場。前回は国生・宗生兄弟だったが、今回は少し年長の鶴松と宗生のコンビ。舞台が大好きのふたりが緊張感あふれる胡蝶を見せてくれてくれた。特に鶴松の動きが迷いもなくきれいだった。宗生がそれに一生懸命ついていっている感じ。御曹司と部屋子対決という評判もあったが部屋子の鶴松の頑張りに宗生も負けられないだろう。最後に大向こうから「よくできました」と褒められていた。

弥生は獅子の魂が宿り、獅子の精に姿を変えて花道から登場。後ろ向きに引っ込むところは3階席からは見えないのが残念。後ジテの力強さは勘三郎ならではのもの。キビキビした動きも気持ちよく、所作台を踏む音、両膝をつく音が歌舞伎座中に響き渡る。舞台中央の台の上でのまどろみには可愛げも感じてしまう。胡蝶たちにまとわりつかれる様もさすがに息が合っている。最後の毛振りでは長く白い毛を二十数回振っていた(DVDの玉三郎は19回だったはず)。
やはり兼ねる役者が前半と後半の対照的な二役をどのくらいくっきりとそれぞれを魅力的に踊り分けるかが問われる大曲なのだと思った。昼間の「喜撰」の勘三郎より遥かによかった。愛嬌封印でここまで見せてくれるとはやっぱりすごいとあらためて惚れ直す。一回しか観ることはできなかったが、やはりこれはすごい舞台を観ることができたという満足感が大。

写真は公式サイトより今回公演のチラシ画像。
以下、この公演の別の演目の感想
1/8昼の部①「松竹梅」「喜撰」
1/8昼の部②吉右衛門の「俊寛」
1/8昼の部③幸四郎の「勧進帳」