3.三幕目 道行初音旅 竹本連中 清元連中
この場の主な配役は以下の通り。
佐藤忠信実は源九郎狐=菊五郎 静御前=芝翫
逸見藤太=仁左衛門
この舞踊劇は単独で「吉野山」としてこれまで2回観た(昨年3月の感想はこちら)。実は途中でいつもどこかで寝てしまう。だから今回は逸見藤太に仁左衛門が出ることを楽しみにして頑張ってみた。
花道からの芝翫の静御前の出。今日は花道度が高いので3階右列にして正解。やはりこれまでの菊之助や福助とは違った風格がある。お供の忠信の姿が見えないのでもしやと思って「初音の鼓」を打つと菊五郎の忠信がスッポンから登場。この二人の道行きはとてもバランスがいいと思った。今回はちゃんと主従による道行に見えるのだ。2004年6月の菊之助とのコンビはやっぱり菊之助が若すぎて釣り合っていなかった。昨年3月の幸四郎は臣下にみえにくかった。さすがに芝翫×菊五郎だと思う。
ただ気になったのは、どうしても芝翫の踊りの動きに何箇所かメリハリがありすぎて優美さに欠けるところがあるように思えたこと。昨年3月の福助はけっこう優美だったと思うのでやはり親子でずいぶんと踊りの雰囲気も違うものだなぁと思った。と思いつつ睡魔が襲う頃.......
仁左衛門の逸見藤太が花道から花四天を引き連れて賑やかに登場。いっぺんで目が覚める!顔の隈どりや衣装はいつもの藤太だが、やっぱり胸を張って登場すると背が高くてカッコよすぎだ~。「待て、待て、待て待て待て」と用心深さ十分だけど、一見まぁまぁの武将の感じ。そういうことを繰り返す中で家来たちに「もうし、もうし旦那様」と意見され、だんだん情けない人物だということが露呈されてくるようなつくり。胸を張るところと背を丸めて小さくなるところのメリハリがきく可笑しさ!
ちょうど静御前ひとりになったところを物見に行かせた家来の報告「おりましたおりました」の報告だけでヘナヘナの逃げ腰。情けない表情もキュート~。
「女武者がおりました」で一気に気を取り直してかけつけて捉えようとしたところに、忠信が待ったをかけての立ち回り。それまでの表情から一転、燃える目となった狐忠信の菊五郎!菊五郎は仁左衛門を相手に得るといつもより燃えてくれる気がする。
花四天もやっつけて静御前も先に逃がすが、そこで藤太が「静、待て」と止めると花道にいる菊五郎が舞台中央にいる仁左衛門に道中の笠を投げる。フリスビーのように円盤型になったものだが実にコントロールがよく、パシッと受けとめる。忠信がそこで「待てというのか」というようなことを言って脅すと「ない」と答えて狐に化かされた格好に。客席はやんやの拍手だ。
藤太の早口も本当に心地よくききとれるし、途中の役者の名前づくしも意味が通ってちゃんと名前がわかる。こんな半道敵を大看板の役者がやることを「ご馳走」というそうだが、こんな大ご馳走メッタにあるもんじゃないと思った。
芝翫×菊五郎の主従にご馳走の仁左衛門がからんだ舞台。ベテランの芸の確かさ、濃厚さ。これだけ幕見したくなってしまうくらいだ。
そしてこの日は昼の部だけ観にいったのに、仁左衛門丈の藤太を観て気分良く帰ろうと思ったのに、そのまま幕見に直行するハメに!駄目だ、仁左衛門が夜の部のすぐに出るのに帰れない~(^^ゞ
あの仁左・玉の現在最高峰の美男美女役者がこんな三枚目を徹底的に魅力的にやってくれるのだから、歌舞伎役者おそるべしだ。
夜の部は仁左衛門ファンの娘と一緒に千穐楽!
写真は「耳で観る歌舞伎」の表紙の芝翫の静御前のアップ画像。
以下、この公演の別の段の感想
「序幕 鳥居前」
「二幕目 渡海屋・大物浦」
追記
後見は菊市郎、芝のぶ、松之助。袴姿で真剣に芝翫の後見をつとめる芝のぶはやっぱり可愛かった(贔屓なのでm(_ _)m)。
この場の主な配役は以下の通り。
佐藤忠信実は源九郎狐=菊五郎 静御前=芝翫
逸見藤太=仁左衛門
この舞踊劇は単独で「吉野山」としてこれまで2回観た(昨年3月の感想はこちら)。実は途中でいつもどこかで寝てしまう。だから今回は逸見藤太に仁左衛門が出ることを楽しみにして頑張ってみた。
花道からの芝翫の静御前の出。今日は花道度が高いので3階右列にして正解。やはりこれまでの菊之助や福助とは違った風格がある。お供の忠信の姿が見えないのでもしやと思って「初音の鼓」を打つと菊五郎の忠信がスッポンから登場。この二人の道行きはとてもバランスがいいと思った。今回はちゃんと主従による道行に見えるのだ。2004年6月の菊之助とのコンビはやっぱり菊之助が若すぎて釣り合っていなかった。昨年3月の幸四郎は臣下にみえにくかった。さすがに芝翫×菊五郎だと思う。
ただ気になったのは、どうしても芝翫の踊りの動きに何箇所かメリハリがありすぎて優美さに欠けるところがあるように思えたこと。昨年3月の福助はけっこう優美だったと思うのでやはり親子でずいぶんと踊りの雰囲気も違うものだなぁと思った。と思いつつ睡魔が襲う頃.......
仁左衛門の逸見藤太が花道から花四天を引き連れて賑やかに登場。いっぺんで目が覚める!顔の隈どりや衣装はいつもの藤太だが、やっぱり胸を張って登場すると背が高くてカッコよすぎだ~。「待て、待て、待て待て待て」と用心深さ十分だけど、一見まぁまぁの武将の感じ。そういうことを繰り返す中で家来たちに「もうし、もうし旦那様」と意見され、だんだん情けない人物だということが露呈されてくるようなつくり。胸を張るところと背を丸めて小さくなるところのメリハリがきく可笑しさ!
ちょうど静御前ひとりになったところを物見に行かせた家来の報告「おりましたおりました」の報告だけでヘナヘナの逃げ腰。情けない表情もキュート~。
「女武者がおりました」で一気に気を取り直してかけつけて捉えようとしたところに、忠信が待ったをかけての立ち回り。それまでの表情から一転、燃える目となった狐忠信の菊五郎!菊五郎は仁左衛門を相手に得るといつもより燃えてくれる気がする。
花四天もやっつけて静御前も先に逃がすが、そこで藤太が「静、待て」と止めると花道にいる菊五郎が舞台中央にいる仁左衛門に道中の笠を投げる。フリスビーのように円盤型になったものだが実にコントロールがよく、パシッと受けとめる。忠信がそこで「待てというのか」というようなことを言って脅すと「ない」と答えて狐に化かされた格好に。客席はやんやの拍手だ。
藤太の早口も本当に心地よくききとれるし、途中の役者の名前づくしも意味が通ってちゃんと名前がわかる。こんな半道敵を大看板の役者がやることを「ご馳走」というそうだが、こんな大ご馳走メッタにあるもんじゃないと思った。
芝翫×菊五郎の主従にご馳走の仁左衛門がからんだ舞台。ベテランの芸の確かさ、濃厚さ。これだけ幕見したくなってしまうくらいだ。
そしてこの日は昼の部だけ観にいったのに、仁左衛門丈の藤太を観て気分良く帰ろうと思ったのに、そのまま幕見に直行するハメに!駄目だ、仁左衛門が夜の部のすぐに出るのに帰れない~(^^ゞ
あの仁左・玉の現在最高峰の美男美女役者がこんな三枚目を徹底的に魅力的にやってくれるのだから、歌舞伎役者おそるべしだ。
夜の部は仁左衛門ファンの娘と一緒に千穐楽!
写真は「耳で観る歌舞伎」の表紙の芝翫の静御前のアップ画像。
以下、この公演の別の段の感想
「序幕 鳥居前」
「二幕目 渡海屋・大物浦」
追記
後見は菊市郎、芝のぶ、松之助。袴姿で真剣に芝翫の後見をつとめる芝のぶはやっぱり可愛かった(贔屓なのでm(_ _)m)。
松竹座で見たときも本当に楽しげでご機嫌よく勤めてらした
ご自分ではご馳走と思ってないんじゃないかな。
そういうお役、大好きですし
主従の道行にしっかり見えることはなかなかないのですね。これはいいものを観ました。舞踊は苦手ですが見続けることが大事な気がしてきた今日この頃。先日も奥村書店で演劇出版社の「舞踊事典」を買ってしまいました。まだまだ積読になりそうですが、調べたくなったらすぐ手元に資料があるのが大事と思って買いました。『演劇界』休刊でこういう別冊も出なくなるのかなぁと思うとかなり寂しくなってきました。
★すみよし様
>きっと仁左さんは楽しんでやられてるだろうなぁ、......そんなご様子がありあり見てとれます。だから観ている方も本当に楽しくて嬉しい!
>ご自分ではご馳走と思ってないんじゃないかな。......そういうお人柄がしのばれますよね。明日は千穐楽に行って権太にしっかり泣いてきま~す。
複数回観てるしと、チョイと油断してました。
当然といえば、当たり前なのですが、演者が変わると、
やっぱり又、違った楽しみ方があるものだなぁ…と。
しみじみできました♪
(いえ、いつも、楽しい演目ではあるのですが)
(^^;
仁左衛門さんと、菊五郎さんの対比が、個人的にスッキり
クッキリで、素敵でした♪
(*ーー*)
>ミーハーモード炸裂.......ジャンジャン炸裂させてください。
私もやられまくりです~。この勢いで月末発売の仁左衛門の知盛DVDをアマゾンに注文してしまいました!初仁左衛門DVDです(^^ゞ
今日は千穐楽で夜の部を見てきました。仁左衛門権太にしっかりと泣かされてきました。昨日は玉三郎の国立小劇場千穐楽のご挨拶に滂沱の涙。レンチャンで歌舞伎で涙って、幸せなことですよね。
やっと巡りあえた大満足な「道行~」
もう10年は見なくていいわ(笑)
この日は権太2枚(夜の部観てないのに)で我慢したのに結局は藤太の舞台写真も千穐楽に買い足し!我慢できるもんじゃぁござんせん、でした~。
>やっと巡りあえた大満足な「道行~」
こんな大顔合わせの「道行」に出会えるのは次はいつになるんでしょうね。