「忠臣蔵」通し上演の感想アップが完結したので、書きかけだったこちらの感想の続きを書くことにしよう。
新橋演舞場2月公演は勘三郎・直美の喜劇公演。一昨年から今年で3回連続観劇となる。今年は娘も観るという。NHKの朝ドラ「芋たこなんきん」で直美ちゃんが気に入ったらしい。
昨年の「ヨイショの神様!」の感想はこちら
今年のチラシを見たら、勘三郎と絶妙のコメディを見せてくれていた柄本明が今年は出演しない。どうしたんだろうと思っていたら、1/26のNHKのにんげんドキュメントで腰が悪くて手術したことがわかった。治していただいて再びお元気な姿を舞台でも見せてほしい。
にんげんドキュメント「そして映画が生まれる~勘三郎と仲間たち~」を観た時の記事はこちら
松竹ウェブサイトから以下引用。
お待ちかねの今回は、中村勘三郎・波乃久里子・藤山直美といったおなじみの面々に加え、大村崑・岡本綾・中村七之助・渡辺哲が初参加。
中島淳彦作、ラサール石井演出による、その名も『殿のちょんまげを切る女』!
九州の、とある藩に実在した殿様の逸話を題材に、幕末から明治維新にかけての時代を縦横無尽に繰り広げる抱腹絶倒の人情喜劇をご覧にいれます。
柄本明が抜けた大穴を埋めるのは?!懐かしのコンちゃんこと大村崑!「うれしいと眼鏡がずれるんですよ」(だったと思ったけど)の決め台詞でズラシ眼鏡姿がトレードマークだった。勘三郎も子ども時代に大好きだったようで、コンちゃんの「とんま天狗」のお揃いの装束で一緒に写真におさまっているのが筋書にあったので我慢する予定だった筋書を買ってしまった。(携帯で撮影したが雰囲気は伝わるかな?)
狂言回しをつとめるのは坂本竜馬とおりょうの偽者夫婦という設定。九州の飫肥藩(おびはん)の藩主伊東祐相(すけとも)が勘三郎の役どころ。大阪から出自を偽って嫁入りしてきた千代梅が藤山直美のお役。その縁談をまとめて随行してきて居座っている用人が大村崑。波乃久里子は藩主の母で子どもができないのを心配して側室を持たせようと画策。
藩校の振徳堂の優等生・小村寿太郎を七之助。寿太郎が思いを寄せていて側室にされようとしている娘が岡本綾。
飫肥藩は薩摩藩のお隣らしく、明治維新にあたって幕府方につくか薩摩方につくかを迫られ、ついに侵攻される。薩摩方の大将の西郷某を渡辺哲。
勘三郎の殿様姿は一昨年12月の「松浦の太鼓」以来だが、ダイエットが功を奏して前よりも若く見える。藤山直美の赤姫姿は「狸御殿」の時と同じ様に可愛い!妻に隠れて目をつけた娘に言い寄る殿の勘三郎を懲らしめようと、のしかかって金色の股引でしゃちほこ状態でキメたところでは大笑いした。
藩校の振徳堂では身分の上下、男女の別なく多くの領民が勉強していた。そこに殿様も混じっていって心を通わせるという場面。ありえなかったはずのことだが、こうして芝居になってしまうとユートピアのようで微笑ましい。殿はふられたわけだ。
七之助の寿太郎が真面目くさって「アイブラユー」とくどくのが楽しい。
予期せぬことから薩摩藩と開戦してしまい、城も大攻勢を受ける。そこで大村崑がとんま天狗のいでたちで大立ち回りを見せるのが見せ場。かなりのお年なのだと思うが身体の動きもよくて感心した(一ヶ月の長丁場は大変だったと思うが)。
明治維新がなって廃藩置県。祐相は華族になることを辞退。百姓になって田畑で汗を流して働いている。県知事は中央からの任命制だが、多くの人が祐相になって欲しいと希望。治水工事のために持っていた財産も投げ出して多くの人々と一緒に働く。そんな中で西南戦争の政変が起こり西郷は失脚。その関係で現知事が罷免され、祐相が新しい知事に任命される。
そこに海外留学から寿太郎が戻ってきた。寿太郎との子どもを産んで待っていた。帰国報告が可笑しい。「アイブラユーではなくてアイラブユーでした」
そこで藤山直美がえづき始めてオメデタがわかる。女たちが何人もえづき始めて、あちこちでオメデタだというおめでた~い雰囲気の中で総踊りとなっての大団円。最後に小山三も「見栄をはってオエ~ッ」とやって笑わせる。
狂言回し役の有薗芳記は今年の大河ドラマの伝助(のちに伝兵衛)でお茶の間に一躍知られたのでとってもうまいタイミングでの配役だと思った。しかし彼のハジケタ声は舞台ではききとれなかった。狂言回しの台詞がききとれないのはかなり問題だ。舞台に慣れていないのだろうか。
岡本綾はこの間いろいろと名が売れてしまったけれど、NHKの朝ドラ「オードリー」の時のイメージそのままに芯の通った娘役がよかった。舞台でもこんな感じで頑張ってほしいと思った。
七之助の細い身体の線がそのまま出てしまう白いスーツの洋装が意外によかった。そして真面目に「アイブラユー」だからねぇ。凛としてよく通る声は前から好き。若手では菊之助の次に好きかな。歌舞伎以外の舞台にもどんどん出ていただきたい。
主役の3人?=勘三郎×直美×大村崑はもう文句なし。特に大村崑は40年ぶりのオロナイン軟膏などのネタも炸裂させて客席には懐かしがるお客さんもたくさんいた。一番喜んでるのは共演してもらった勘三郎さんご本人ではないだろうか。とにかくこの共演を観ることができただけで私はもう大満足だった。
お姉さんの波乃久里子ともども中村屋の皆さんは二月はこちらで盛り上がっていて、これはこれで毎年是非お願いしたい。昨年は小山三さんと並んで狂言回しをつとめた源左衛門さんがもういないということだけが残念でならない。
そういえばこの舞台の稽古を一月にやっていたんじゃないかと気がついた。一月の歌舞伎座での勘三郎の出番が少なかったけれど、こっちの稽古と同時進行だったんだよなと納得。こんなにたくさんの台詞のある新作の稽古をしながらあんなに立派な「鏡獅子」を踊っていたんだからそれもスゴイことだと今更ながらに思ってしまう。
飫肥藩をウィキペディアで
飫肥藩は現在の宮崎県ということで、そのまんま東さんが知事になって話題の地域。最後に知事になるとか言って勘三郎の演説シーンもタイムリー。不妊を攻められて藤山直美が「女は子どもを産む道具じゃない」とか時事ネタが満載だった。
今回の喜劇は脚本もよくできていると思うし、ラサール石井の演出も何本か見ているが今回も丁寧でいい。是非この調子でいい作品を作っていってもらいたい。
歌舞伎座建替えの影響がどうなるかわからないが、是非これからも勘三郎×直美の喜劇公演は楽しみにしていきたい。
新橋演舞場2月公演は勘三郎・直美の喜劇公演。一昨年から今年で3回連続観劇となる。今年は娘も観るという。NHKの朝ドラ「芋たこなんきん」で直美ちゃんが気に入ったらしい。
昨年の「ヨイショの神様!」の感想はこちら
今年のチラシを見たら、勘三郎と絶妙のコメディを見せてくれていた柄本明が今年は出演しない。どうしたんだろうと思っていたら、1/26のNHKのにんげんドキュメントで腰が悪くて手術したことがわかった。治していただいて再びお元気な姿を舞台でも見せてほしい。
にんげんドキュメント「そして映画が生まれる~勘三郎と仲間たち~」を観た時の記事はこちら
松竹ウェブサイトから以下引用。
お待ちかねの今回は、中村勘三郎・波乃久里子・藤山直美といったおなじみの面々に加え、大村崑・岡本綾・中村七之助・渡辺哲が初参加。
中島淳彦作、ラサール石井演出による、その名も『殿のちょんまげを切る女』!
九州の、とある藩に実在した殿様の逸話を題材に、幕末から明治維新にかけての時代を縦横無尽に繰り広げる抱腹絶倒の人情喜劇をご覧にいれます。
柄本明が抜けた大穴を埋めるのは?!懐かしのコンちゃんこと大村崑!「うれしいと眼鏡がずれるんですよ」(だったと思ったけど)の決め台詞でズラシ眼鏡姿がトレードマークだった。勘三郎も子ども時代に大好きだったようで、コンちゃんの「とんま天狗」のお揃いの装束で一緒に写真におさまっているのが筋書にあったので我慢する予定だった筋書を買ってしまった。(携帯で撮影したが雰囲気は伝わるかな?)
狂言回しをつとめるのは坂本竜馬とおりょうの偽者夫婦という設定。九州の飫肥藩(おびはん)の藩主伊東祐相(すけとも)が勘三郎の役どころ。大阪から出自を偽って嫁入りしてきた千代梅が藤山直美のお役。その縁談をまとめて随行してきて居座っている用人が大村崑。波乃久里子は藩主の母で子どもができないのを心配して側室を持たせようと画策。
藩校の振徳堂の優等生・小村寿太郎を七之助。寿太郎が思いを寄せていて側室にされようとしている娘が岡本綾。
飫肥藩は薩摩藩のお隣らしく、明治維新にあたって幕府方につくか薩摩方につくかを迫られ、ついに侵攻される。薩摩方の大将の西郷某を渡辺哲。
勘三郎の殿様姿は一昨年12月の「松浦の太鼓」以来だが、ダイエットが功を奏して前よりも若く見える。藤山直美の赤姫姿は「狸御殿」の時と同じ様に可愛い!妻に隠れて目をつけた娘に言い寄る殿の勘三郎を懲らしめようと、のしかかって金色の股引でしゃちほこ状態でキメたところでは大笑いした。
藩校の振徳堂では身分の上下、男女の別なく多くの領民が勉強していた。そこに殿様も混じっていって心を通わせるという場面。ありえなかったはずのことだが、こうして芝居になってしまうとユートピアのようで微笑ましい。殿はふられたわけだ。
七之助の寿太郎が真面目くさって「アイブラユー」とくどくのが楽しい。
予期せぬことから薩摩藩と開戦してしまい、城も大攻勢を受ける。そこで大村崑がとんま天狗のいでたちで大立ち回りを見せるのが見せ場。かなりのお年なのだと思うが身体の動きもよくて感心した(一ヶ月の長丁場は大変だったと思うが)。
明治維新がなって廃藩置県。祐相は華族になることを辞退。百姓になって田畑で汗を流して働いている。県知事は中央からの任命制だが、多くの人が祐相になって欲しいと希望。治水工事のために持っていた財産も投げ出して多くの人々と一緒に働く。そんな中で西南戦争の政変が起こり西郷は失脚。その関係で現知事が罷免され、祐相が新しい知事に任命される。
そこに海外留学から寿太郎が戻ってきた。寿太郎との子どもを産んで待っていた。帰国報告が可笑しい。「アイブラユーではなくてアイラブユーでした」
そこで藤山直美がえづき始めてオメデタがわかる。女たちが何人もえづき始めて、あちこちでオメデタだというおめでた~い雰囲気の中で総踊りとなっての大団円。最後に小山三も「見栄をはってオエ~ッ」とやって笑わせる。
狂言回し役の有薗芳記は今年の大河ドラマの伝助(のちに伝兵衛)でお茶の間に一躍知られたのでとってもうまいタイミングでの配役だと思った。しかし彼のハジケタ声は舞台ではききとれなかった。狂言回しの台詞がききとれないのはかなり問題だ。舞台に慣れていないのだろうか。
岡本綾はこの間いろいろと名が売れてしまったけれど、NHKの朝ドラ「オードリー」の時のイメージそのままに芯の通った娘役がよかった。舞台でもこんな感じで頑張ってほしいと思った。
七之助の細い身体の線がそのまま出てしまう白いスーツの洋装が意外によかった。そして真面目に「アイブラユー」だからねぇ。凛としてよく通る声は前から好き。若手では菊之助の次に好きかな。歌舞伎以外の舞台にもどんどん出ていただきたい。
主役の3人?=勘三郎×直美×大村崑はもう文句なし。特に大村崑は40年ぶりのオロナイン軟膏などのネタも炸裂させて客席には懐かしがるお客さんもたくさんいた。一番喜んでるのは共演してもらった勘三郎さんご本人ではないだろうか。とにかくこの共演を観ることができただけで私はもう大満足だった。
お姉さんの波乃久里子ともども中村屋の皆さんは二月はこちらで盛り上がっていて、これはこれで毎年是非お願いしたい。昨年は小山三さんと並んで狂言回しをつとめた源左衛門さんがもういないということだけが残念でならない。
そういえばこの舞台の稽古を一月にやっていたんじゃないかと気がついた。一月の歌舞伎座での勘三郎の出番が少なかったけれど、こっちの稽古と同時進行だったんだよなと納得。こんなにたくさんの台詞のある新作の稽古をしながらあんなに立派な「鏡獅子」を踊っていたんだからそれもスゴイことだと今更ながらに思ってしまう。
飫肥藩をウィキペディアで
飫肥藩は現在の宮崎県ということで、そのまんま東さんが知事になって話題の地域。最後に知事になるとか言って勘三郎の演説シーンもタイムリー。不妊を攻められて藤山直美が「女は子どもを産む道具じゃない」とか時事ネタが満載だった。
今回の喜劇は脚本もよくできていると思うし、ラサール石井の演出も何本か見ているが今回も丁寧でいい。是非この調子でいい作品を作っていってもらいたい。
歌舞伎座建替えの影響がどうなるかわからないが、是非これからも勘三郎×直美の喜劇公演は楽しみにしていきたい。