1月の歌舞伎公演の感想アップの最後は国立劇場の菊五郎劇団の復活狂言の通し上演(前の記事で浅草と書いたのは間違い(^^ゞ
しかしながら、この公演についてしっかり書くにはそろそろ私も限界に達してきているので、簡単に書かせていただくことにする。
詳細は、上中下の3回にわたってレポアップされたかしまし娘さんの「菊五郎劇団 梅初春五十三驛」の記事をご紹介させていただきたい→こちら
菊五郎劇団の昨年1月の国立劇場公演の感想はこちら
昨年も同様にかしまし娘さんの記事をご紹介させていただいているのだった。恐縮至極(^^ゞ
【通し狂言 梅初春五十三驛(うめのはるごじゅうさんつぎ)】
江戸時代の歌舞伎では東海道五十三驛ものというのが人気でいろいろなバージョンがあったらしいが、きちんと残っているたのがこの作品。それを国立劇場文芸課が整理・補綴しての復活上演。
木曽義仲が人質として頼朝にさし出した嫡子・義高と頼朝の娘・大姫との悲恋のお話は一昨年の大河ドラマ「義経」でも胸を打たれたが、このふたりが今回の舞台の主人公。大事な宝剣と宝鏡を悪人から取り戻しながら京の都からお江戸まで旅をする。途中の宿場宿場でいろいろなエピソードがあって、それが狂言の名場面のパロディてんこもりでというふうに、とにかく楽しい楽しいお芝居だ。
それを菊五郎劇団の芸達者揃いの役者たちがチームワークのよさで見せてくれるのだからとにかく面白かった。
義高・大姫は菊五郎・時蔵のコンビ。とにかく大人の雰囲気のカップルでよろしい。喜劇の中で時蔵の姫だけは超然と凛としているのがいいというところは「NINAGAWA十二夜」の織笛姫を思い出す。
菊五郎は一人で何役もする大活躍。座頭役者の見せ場をいっぱいつくるのが歌舞伎だったという王道の芝居だと思った。
岡崎の古寺で十二単を着た老女で登場し化猫の正体を現す菊五郎。4人の子役が演じる子猫ちゃんたちのパラパラ踊りを猫手で操るところはもう可笑しさの極地(すみません、パラパラ初体験でした)。
しかし、話としては梅枝のおくらちゃんを食い殺す化け猫という歌舞伎のお定まりの流血場面とセットになっているのだった。おくらを追い掛け回す場面がものすごくアクロバティック。すっかり梅枝くんがやっているのだと騙されて感心していた(あちこちのブロガーさんのレポで吹替えを尾上辰巳がつとめていたとわかった。うんていまで使った見事なものだった)(^^ゞ
今回、三津五郎が二枚目と三枚目といろいろと活躍してくれたのも見ものだった。大姫の供をしてきた小弥太は化け猫の正体・猫石の精霊をやっつけたりしてカッコいいし、白須賀で登場してきた弁長ではめちゃくちゃなハジケっぷりを見せてくれたし、のびの~びした良さもあることを見直した。
白須賀では吉祥院での素人芝居での盛り上がりがこれまたスゴイ。和尚の團蔵・所化弁長の三津五郎をはじめ田之助・松緑が芝居を始めるところに旅役者もやって来た。三宅坂菊之助(菊之助)と小梅(松也)。花道外の席だったので目の前をふたりが通ると美しさにクラクラする。俳優祭かと思わせる大コメディ大会になり、松緑は「NINAGAWA十二夜」の安藤英竹を思い出した。菊之助は実は白井権八で悪者が寺に預けた宝剣を取り戻しにきて成功するも、弁長に掠め取られてしまう。
由比の宿場の伝法な売れっ子女郎お七も菊五郎。弁長が言い寄っているのをあしらうのが可笑しい。姐御肌で世話をしたのが吉三郎(菊之助)。お七は元々白井家の奉公人で主家の権八を救わなければならず、吉三郎を偽首にする。ここでも偽首話がきっちり入っている。お七というからにはしっかり櫓のお七のパロディもあり。菊五郎のお七はとにかく豪快。
権八といえば小紫が出てくる。その小紫は時蔵。とにかく一人で何役もやってくれるので楽しくて仕方がない。ちゃんと「ご存知鈴ヶ森」のパロディも出てくる。歌舞伎好きにはたまらない趣向がたっぷり仕込んである。
最後はお江戸で大団円を迎えて幕。
菊五郎劇団ならではの立ち回りも堪能できる。桜吹雪の中での菊之助を芯にした立ち回りでは、劇場の奥深さも活かしていたのが新鮮だった。
印象だけでもとどめておきたいというような駆け足の感想になってしまった。とにかく歌舞伎の娯楽性の側面を楽しむとしたらこんな感じかもしれないと思えた舞台だった。来年1月も菊五郎劇団公演だったら正月の間の初観劇に観ようかなと思ってしまった。さて、歌舞伎座の建替えもあるだろうし、来年はどうなることやら。
写真は公式サイトより公演のチラシの画像。