ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/03/01 冗長だったゲキ×シネ「アオドクロ」

2007-03-03 23:58:07 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)
「髑髏城の七人」の3本め。2/22に新宿バルト9で「アカドクロ」を観た。面白かった。DVDも2/24に観た。そしてついに「アオドクロ」だ!
2/24「アカドクロ」VS「髑髏城の七人」97バージョンの記事はこちら
夜7:30から上映開始ということは「アカドクロ」より短いのかなぁと勝手に思い込んで行ったら、×。始まる前の染五郎の声のアナウンスに「アカドクロよりちょっとだけ長いけれど・・・・・・」とあってギクっ。間違えた、アオの方が長かったんだ~。途中の15分休憩に終了時間を見てガーン。23:15!始まる前のサンドイッチだけだと足りない。ソフトクリーム絶対食べるぞ!!「映画の日の1日」で売店の行列も長く、買って走ったけどやっぱり後半の上映が始まってしまっていた。仕方ないなぁ。

「アオドクロ」の主な配役は以下の通り。
玉ころがしの捨之介と天魔王の二役=市川染五郎
無界屋蘭兵衛、実は森蘭丸=池内博之
沙霧=鈴木 杏  極楽太夫=高田聖子
狸穴二郎左衛門、実は徳川家康=ラサール石井
裏切り渡京=粟根まこと  カンテツ=三宅弘城
こぶしの忠馬、実は忠太=佐藤アツヒロ
うなずき才蔵=川原和久  忠太の兄・仁平=村木仁
鋼の鬼龍丸=高杉亘  刃の非道丸=川原正嗣
贋鉄齋、服部半蔵=逆木圭一郎

幕開きは本能寺の変の映像から。もちろん染五郎が信長。出だしはこれはどうかなと期待が高まる。土手のところにまずは百姓の仁平が登場して食べようとしたお供え餅を踏まれて食べられない場面になり、甚平の登場が早いなと思う。沙霧と捨之介の出会いまでにお地蔵ネタがしつこく続く。う、懐にお地蔵人形があるなと予感。当たり~。しつこい。
関東髑髏党のナントカ丸クラスの面々の中で鋼の鬼龍丸の装備がやたら大げさ。火炎放射のようなナントカ砲で鳥をいろいろな種類の焼き鳥にするという場面が何度も出てくる。しつこい。だんだん嫌な感じが漂ってくる。もしかして劇団☆新感線初体験でハマれなかった「阿修羅城の瞳」と同じ路線ではないかなぁと。

贋鉄齋が弟子のカンテツと二人で刀鍛冶をしているところはホホーっと思ったが、つまらない事故で贋鉄齋が死んでカンテツに名前を譲って、点々のマークを頭につけてガンテツとか言い出し、刀をカタナではなくタナカとかしつこく言ってるあたりから完全に冷める。こういうくだらないネタは苦手だ。、戦闘場面でバナナを食べていたので、もしかして皮で滑るネタもあったりしてと予想したら本当にあってしまった・・・・・。
橋本じゅんが出ていないので抜かずの兵庫の役周りを佐藤アツヒロのこぶしの忠太として金髪でローラースケートのついた靴で登場したが、高田聖子の極楽太夫とのバランスが悪い。関八州荒武者隊に川原和久のうなずき才蔵という渋いキャラを加えてはいるが、忠太の物足りなさを補うよりも目があちこちに分散する感じがした。その関係なのか高田聖子の極楽太夫も97バージョンの時の方がいい。無界屋の最初の登場の歌と踊りの場面の衣装がマドンナみたいでさらに下品。衣装の小峰リリーさん、どうしちゃったのという感じがした。
ラサール石井は徳川家康の時はまぁまぁだが、狸穴二郎左衛門の胡散臭さが物足りない。役者より演出家の方がいいのかもとか言いたくなった(言いすぎかもしれないが)。
役が変わって面白かったのは裏切り渡京の粟根まこと。三五の河野まさとが親友だと言った手鏡を、97年の再演で蘭兵衛の小道具だったソロバンを親友のコロスケくんとしていたのが可笑しかった。このキャラは本当に貴重だ。

カマイタチの術を操るナントカ丸は今回はいない。右近健一がいないのも寂しい。川原正嗣の刃の非道丸では存在感が薄い。鬼龍丸の高杉亘が松田優作に似ているということで最後にGパン刑事の殉職シーンの腹の血を手につけて「なんじゃぁ、こりゃあ」と絶叫する場面も興ざめ。

以下はよかった3人の役へのコメント。
鈴木杏の沙霧は大熱演。この舞台の翌月の「ロミジュリ」のジュリエットを観ているが、前の月にこんなに違った役をやっていたとは思えなかった。これからが楽しみな若手女優だ。赤と黒の斜めの格子になったタイツも似合っていたが、どうも今回の舞台はバタ臭い衣装が多いようだ。どうもそのバタ臭さと大口袴まで出す和テイストとの幅の広さが私には統一感のないように感じてしまった。
玉ころがしの捨之介と天魔王の二役の染五郎は、ビジュアル的な魅力があった。天魔王のマスクが上下に分かれるのは上だけはずすことで染五郎の目の魅力を最大限活かすものだと思った。白い総髪で白い衣装もよい。天魔王の総髪は編みこみ部分もあり。二幕目冒頭の大口袴をつけた衣装は見ていて惚れ惚れする。捨之介の白い着流しには金色の蓮(傷めつけられた後の場面では流れる血の筋入り)。後ろに束ねているのもいい。蘭兵衛も最初は黒人風に全部細かく長く編みこんだ髪型(ところどころ青い色入り)、後半の蘭丸になってからはストレートの総髪に変わる。こういう変化のつけ方は面白かった。小峰リリーをここで見直す。

染五郎は天魔王がよかった。冷たい目つきは「朧に棲む鬼」のライにも通じるものがある。しかしながら捨之介の女たらしは古田新太だとキャラ的にピッタリなのと比べるのが悪いのか、染五郎のそれは全く板についていない。沙霧とのじゃらつく場面もまぁこんなものかという感じ。ま、比べるほうが悪いだろう。
池内博之はバタ臭い風貌がこの役に合うのかという危惧を抱きながら観たのだが、観ていくうちに慣れてくる。大きな瞳が憂いに沈むとぐっと引き込まれるものがあった。美しい若衆姿の小姓というイメージさえ強く持たなければ彼なりの魅力ある蘭兵衛・蘭丸になっていた。

「アオドクロ」は日生劇場の舞台を見送ったが正解だった。確かにエンターテインメントとしては歌も踊りもギャグもてんこもりなのだが、冗長すぎる。ゲキ×シネも1回でご馳走さま状態である。

これで3つのバージョンを全て観終わった。結局一番私が面白かったのは97バージョン版だった。これを買っていたのはなかなかイイ勘だったと自分を褒めてやろう。

実は15分休憩に調子にのってDVDの「レッツゴー!忍法貼」を買ってしまった。近いうちに古田新太と阿部サダヲで口直しといこう。この中には「朧~」東京千穐楽のカテコで聞いた冠くんの歌の曲も入っているらしい。それも覚えてこれからも劇団☆新感線を楽しむことにしよう。私には劇団☆新感線の舞台はアタリハズレがけっこうあるが、うまく取捨選択しながらつきあおう。そのためにはゲキ×シネも活用できると今回痛感した。
写真は公式サイトより ゲキ×シネ「アオドクロ」の宣伝画像。