Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

シューベルト : 幻想曲について(8) (No.1487)

2007-07-12 23:39:09 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 本日は「連弾幻想曲 D48」を。1813年シューベルト16才の作品である。

連弾幻想曲 ハ短調 D48 アナリーゼ


 この曲のアナリーゼはまともなモノを見たことが皆無。特徴をまず初めに記載する。

  1. 循環ソナタを目指した「全曲構成」である。

  2. しかし、調性が『ソナタ形式として完全に狂っている(開始がハ短調、終曲が変ロ長調)』ので、成功していない


である。次の幻想曲 = 「さすらい人幻想曲」(1822,25才)が循環ソナタ形式を完成させたのだが、「三つ子の魂百まで」を感じさせる!

  1. 第1楽章 Adagio - Allegro molto moderato ハ短調 2/2 213小節 全曲の呈示部 再現部第2主題が省略されたソナタ形式

  2. 第2楽章 Andante amoroso 変ロ長調 3/4 75小節 全曲の展開部 展開部の無いソナタ形式

  3. 第3楽章 Allegro 変ロ長調 4/4 201小節 全曲の再現部 (調性も拍子も異なるので聴感上は違和感あり)

  4. 第4楽章 Adagio 変ロ短調 4/4 - Fuga (Allegro maestoso) 変ロ長調 4/4 95小節 全曲のコーダ 序奏とフーガ


 全曲構成は、(調性を別にすれば)「さすらい人幻想曲」とベートーヴェン「エロイカ変奏曲 変ホ長調 作品35」を「足して2で割った」感触。
 超絶技巧は要求されない曲であり、演奏機会が極めて多いのも特徴。

  大切なポイントとして

  1. 第1楽章 → 第2楽章以外の「全ての楽章間」と、序奏 → 主要  が、フェルマータ で結ばれている

  2. 全曲の統一は、信じられないほど緊密に『冒頭主題』で統一されている


の2点。「さすらい人幻想曲」の9年前の「幻想曲」である。「調性が変!」は、

  1. ソナタ楽曲(交響曲とか弦楽四重奏曲など)は、主調で終える必要あり

  2. ミサ曲などは、主調で終えてはいけない!

  3. この「差」が理解出来ていなかったから


と思われる。シューベルトは翌年1814年に作曲した ミサ曲第1番 D105 の完成以降は、「調性」について疑問のある曲は1曲も残していない。若き日の勉強過程の試行錯誤の日々の成果が、この幻想曲である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする