Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

シューベルト : 幻想曲について(11) (No.1491)

2007-07-16 22:16:28 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
昨日号に掲載した基準と照合して、

シューベルト「ピアノソロ幻想曲」と通称されている2曲を評価する


2曲どちらも「自筆譜あり」で作曲年も、ほぼ特定できている。まずは、旧シューベルト全集でも出版されていた 『通称:ハ長調幻想曲 D605』から。


ピアノソロ曲 ハ長調 D605 アナリーゼ


特徴は次の通り

  1. 自筆楽譜の紙質から 1821-1823年作曲とほぼ特定されている

  2. 146小節 までしか楽譜が遺っていない

  3. テンポ設定には変化がある

  4. 調性変化もある

  5. 全曲構成は「変奏曲」である!


この曲には「第1主題に対比できる第2主題」が全く存在しない。全曲が「第1主題の変奏曲」である。この形式は『変奏曲』である。
 「減7の和音」のオクターブ下降進行での開始は、ショパンの「バラード第1番 ト短調 作品23」を予感させるが、第3小節~第4小節で呈示される主題を延々と変奏する。
 第52小節で、「初めてテンポ指定表示され Allegro moderato」になるが、その前のフレーズから大きくテンポを動かす(例えば冒頭部を Adagio とか Molto allegro にすると、曲の流れが壊れる。
 第115小節の「Andantino」も全く同じで、「Moderato → Andantino」は最も差の少ないテンポ移動であり、「テンポが変わった」とは思えない。

●ハ長調 → ロ短調 → ロ長調

で曲は中断されているが、このまま「ハ長調に復帰」すれば『変奏曲』である。既にベートーヴェンが 『32の変奏曲 ハ短調』 で大きく転調する変奏曲は開発した後である。シューベルトが「ベートーヴェン:32の変奏曲」を深く研究していたことは、「ピアノソナタ第19番 ハ短調 D958」で立証されている。
 拠って、

D605 は 幻想曲 では無い、と断定できる


この曲は、変奏曲である。


次に「ピアノソロ曲 ハ短調 D2E」を。

ピアノソロ曲 ハ短調 D2E アナリーゼ


この曲は聴いて頂ければ、誰でもわかると思うが「モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K475」をそのまま下敷きに作曲された曲である。一時期「連弾曲」との情報が流出し、「ピアノソロ曲」と認識していない ピアニスト & 学者 が多い。現在販売している楽譜では、新シューベルト全集「ピアノ小品集I」しか楽譜が出ていないのも誤解を広げている1因かも。

 まず曲の特徴を。

  1. 作曲年は1811年と特定できている

  2. 91小節で完結した作品である

  3. 拍子指示は 一貫して 3/4 である

  4. テンポ指示は Largo → Andantino → Allegro → Largo で、巾が大きい

  5. 時間的には 第3楽章(Allegro)が短いが、「4楽章構成の幻想曲」と考えるのが妥当


である。
 手本にした「モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K475」と比較すると、【拍子が変わらないのが不満】であるが、

シューベルト 14才の作品なので、理解不足はやむを得ない


と考えるのが妥当。 モーツァルトの幻想曲 K475 を「多楽章曲」と感じるか、否か、は人それぞれだろうが、

シューベルトは「モーツァルト:ハ短調幻想曲 K475」を多楽章曲として習得した


ことは明らかである。

D2E は 幻想曲 である、と断定できる

コメント
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