うっとうしい暑さを忘れ、馬野氏の「米国悪人史観」と「イルミナティ史観」を紹介するのは、米国を悪の塊として見るよう勧めるためではありません。
アメリカでも、中国も、ロシアも、みんな自国第一で動いているので、日本から見れば、全部極悪人の国に見えます。国際社会では当たり前の話ですから、伝えたいのは馬野氏の警告です。
「日本以外の世界の国々は、みんな素晴らしい国です。」
「話し合えば、真心と誠意が必ず通じます。」
「みんな、同じ人間ですから、互いの思いやりと愛が、人類を救います。」
「二度と、無謀な戦争をしてはいけません。」
戦後74年間、朝日新聞のこのような記事に感激し、日本だけを悪と信じてきた「お花畑の信仰」から、卒業しませんかと、氏が読者に語りかけています。
著作の124ページです。「親日家」と言われている、ロックフェラー氏が、どのような親日家だったのか、氏が説明しています。
・デイヴィッド・ロックフェラーは、現在までに4回訪中している。
・初回は73年、ニクソン 訪中の翌年。もちろん、毛沢東、周恩来と会談した。
・彼の『回想記』を読むと、自分のような資本主義の首魁に対して、考えられないほど歓待してくれたと書いている。
・鄧小平の復活後、78年にも訪中している。88年には、キッシンジャーを連れて行き、鄧小平に会っている。
今から紹介するのは、昭和60 ( 1985 ) 年に北京でなされた、ロックフェラーと鄧小平の会話です。
鄧小平
・お国は、財政赤字で、貿易赤字。それもこの先、どんどん増えるようですが、いったい、どうされるおつもりですか。
ロックフェラー
・正直言って、対策はありません。まあ、日本から出させる以外はないでしょう。
昭和60年代の日本の総理は、中曽根氏です。馬野氏は言及していませんが、トロイの木馬中曽根氏は、ロックフェラー氏の言葉通り、紙屑同様の米国国債を、大量に買っています。
日本嫌いのキッシンジャー氏を連れて、中国を訪問していると知りますと、眼から鱗の「親日家ロックフェラー氏」でした。
ロックフェラー氏の指示に従い、「日米欧三極委員会」を主導したブレジンスキー氏について、日本の政界や知識人たちは、知日派の政治家として、好意的に見ています。しかしそれも、「お花畑の思考」に過ぎませんでした。
『大いなる失敗』の著書で、氏は崩壊したソ連の共産主義を酷評します。「マルクス主義は、20世紀最大の失敗だった」と言い、本の題名もソ連を意味しています。知日派の氏が、中国をどのように見ているのかを紹介します。
・中国共産党の軌跡は、東欧諸国やソ連とは違っている。
・中国の共産主義は、国産である。中国の若い指導者は、ロシア革命に衝撃を受けたが、モデルとして見習うべきとは、考えなかった。
・注目すべきは、伝統ある文明を誇る中国人は自らの手で革命を達成し、戦略を立てたいという、知的、文化的自負心があったということだ。
日本の政治家や知識人たちが、親日家、知日家と言って褒める米国人に、大抵碌な人間がいません。ブレジンスキー氏もライシャワー氏と同様、高く評価し、親近感を抱いているのは、日本でなく中国です。
・中国共産党は、イデオロギーと歴史をうまく結びつけることができた。単に労働者の不満をすくい上げる、階級闘争だけでなく、100年にわたって、西欧諸国に痛めつけられたきた自国の、屈辱感や愛国心に結びつけて、イデオロギーを訴えたのである。
・こうした国民感情は、日本の侵略によって、さらに燃え上がった。
・中国の悠久の歴史は、19世紀になりどん底に落ちていた。文化的に誇り高い中国人にとって、これは耐え難いことであり、近代的な民族論と急進的な社会改革論が、ここ中国でひとつになった。
・ソ連でさえ、共産主義が民族主義の色合いを帯びたのは、ドイツとの戦争中だけであった。
手放しの礼賛です。氏の著書が出版されたその年の10 月に、鄧小平氏が、天安門で学生のデモ隊を弾圧し、戦車でひき殺しています。ブレジンスキー氏は、安全保障関係の政治家として、緊迫した中国を知っているはずなのに称賛は変わりません。
・中国の歴史的再生を進める上で、共産党の指導者は、理論の大幅な見直しをはかっている。
・プロレタリアートの独裁を主張する、革命的な党という主張が次第に薄れ、国家を後ろ盾とした、新商人階級の独裁を主張する近代化思考の党、というニュアンスに変わってきた。
おかげで一つ、発見をしました。自民党の幹事長だった加藤紘一氏が、そっくり同じ言葉で中国政府を語っていました。ブレジンスキー氏の受け売りだったのです。
・中国の高度な文化、孔子の思想、国家に奉仕する官吏階級、優れた商業的手腕に裏付けられた文化、これらにはしっかりした伝統があるため、共産主義といえども、その影響は免れなかったのである。
アメリカが独立宣言をしたのが、1776年です。米国の歴史はやっと300年を越えたばかりですから、2000年以上の歴史を持つ中国に対し、氏のような知識人は、理屈抜きに引け目を感じるようです。
米国人らしく「東京裁判史観」そのままで、日本のことを語ります。こういう意見を持つ人物が、果たして「知日派の米国政治家」なのでしょうか。中国が日本に居丈高になるのは、中国贔屓のロックフェラー氏やブレジンスキー氏のような政治家が、アメリカに数多くいるからです。
「アメリカと中国は、根っこのところで結びついている。」
日本の政治家や知識人と言われる人々は、どうして馬野氏が語る簡単な事実に、気がつかないのでしょう。戦前の政治家に比べ、愛国心だけでなく、知的レベルも落ちているのでしょうか。
「来るべき世界の状況は、日本の孤児化であり、米ソ、そして中国に囲まれ、これらにいたぶられるという構図が、浮かび上がってくる。」
馬野氏が鳴らす警鐘を、せめて息子たちと、「ねこ庭」を訪問される方々には、伝えたいものです。暑い夏がさらに暑くなりますが、次回も氏の警鐘と向き合います。