平成7年、ダイヤモンド社刊『アジアの新聞で読む50年目の8月15日』という、恐ろしく長い題名の本を読んだ。取り上げられているのは、平成 6年、今から20前の新聞記事だ。
名前が恐ろしく長いだけでなく、内容も私の肝を冷えさせた。それこそ、「これは本当だろうか」である。日本の戦後50年の節目に、アジア諸国の新聞が、日本をどのように見ていたかという内容だ。
200ページ余の本で、最初から24ページまでは、大東亜戦争の開戦前と後の経緯が書いてある。
日清、日露戦争から、日韓併合、
第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、
第二次世界大戦、ミッドウエイ海戦、原爆投下、ソ連参戦、日本敗戦
と、順を追って記述されている。
アジア各地を侵略した日本軍は、その過程で数々の残虐行為を行ったという基本姿勢で書かれている。
残虐の例として、
「南京大虐殺」と「従軍慰安婦」
「シンガポール・マレー半島の華僑虐殺」「バターン死の行進」
「ベトナムでの大量餓死」「731部隊」と続く。
前書き、後書き、解説等を除くと、本文は171ページとなる。
各国の新聞がのどのようなことを書いているか、紹介してある順番は、
韓 国、 北朝鮮、 中国、 フィリッピン、 マレーシア、
シンガポール、 インドネシア、 タイ である。
韓国・北朝鮮・中国の新聞記事が98ページで、全体の57パーセントを占めている。後の5ヶ国で43パーセントだから、中・韓のボリュームが圧倒的に多い。
細かな詮索をしていると思われるだろうが、日本の悪行を強調する文章が「南京大虐殺」「従軍慰安婦」から始まったので、この本の客観性と中立性に疑問が生じた。
日本敗戦の50年後の8月15日に、アジアの国々が日本の記事にまだ大きく紙面を割いていると言う事実に、驚かされた。韓国・北朝鮮・中国の新聞記事は、辛辣な悪意に満ちた日本非難で埋まっている。
この日わが国では両陛下のご臨席のもとに「戦没者慰霊祭」が行われ。マスコミが「平和と反戦」の記事で紙面を飾る。
私は今まで、第二次大戦について日本に文句をつけてくるのは、中国、韓国、北朝鮮だけで、他のアジア諸国はむしろ好意的であると言う、保守の論客人の言葉を信じて来た。
ところが、フィリッピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイの新聞が中国、韓国、北朝鮮以上の悪口雑言なので、「これは本当なのだろうか」と、疑問が生じた。
1. アメリカは投下した原爆について、いまだに謝罪していない。他方日本は、アジアで侵略戦争を行ったことを、いまだキチンと謝罪しようとしていない。
2. 太平洋戦争の侵略国である日本は、その軍国主義的で拡大主義的な野望を捨てていない。
3. 6月9日の「国会での不戦の決議」は、むしろ日本の戦争責任を負うべき人たちを讃えるように作成された。
4. 歴史を歪曲するという行為は、アジア民衆の見識に対する偏見が現われている。
5. 歴史を偽ることは誰にもできない。真実はいつも私たちの前にある。
6. 日本人の中には、東アジアで何百万人もの人々を殺した侵略戦争について、いまだに反省しない者がいる。今なお、白人の植民地から、アジアを開放したと信じる者がいる。
7. 日本人は、戦争について謝罪する必要はないと思っているようである。世界の人々の最大の懸念は、侵略の過去を反省しない国が、再びそれを繰り返しはしないか、ということである。
8. 村山首相は、日本のこれまでの禁忌を破った初めての首相である。村山首相は謝罪はしたが、賠償問題については扉を閉じた。しかし賠償をして初めて、戦争に対する罪滅ぼしの具体的な現れとなるのだ。
9. 日本の歴代首相の数は、アジアでトップであり、謝罪の回数も少なくない。にもかかわらず、今日まで本当の謝罪がされたことは一度もない。
まだ続くが、ここで紹介を止める。
「歴史認識が間違っている」、「心からの謝罪がない」という言葉を、中国・韓国・北朝鮮だけでなく、他の国がそのまま使っている。彼らが、何をもって本当の謝罪をしないと言っているかと言う、意味も同じだ。
・国家間の賠償は済んでいても、金銭による個人への賠償がなされていない
ドイツはそれをしたと彼らは言うが、こうなると疑問でなく反論になる。ドイツが謝罪したのは、「戦争」でなく、「ユダヤ人の虐殺」だ。一つの民族を憎み、抹殺するというヒトラーの狂気に引きずられた「犯罪行為への謝罪」だ。
ドイツには気の毒だが、比較する土台が違う。日本が実行した殺人は、戦争中の行為だ。
第一次世界大戦と第二次世界大戦に参戦した諸国は、戦争中に敵国人を多数殺害した。しかしどの国が戦争中の殺害を謝罪し、個人への賠償をしたのか。そんな事例は何処にもない。
疑問が大きな岩のようになったため、四人の執筆者 ( 記事紹介者 ) たちの名前と略歴を調べた。
1. 根津清氏 S19生 ( 50才 ) 長野県出身 神奈川大卒 元読売新聞記者
2. 姜英之氏 S22生 ( 47才 ) 大阪出身 大阪市立大卒 韓国籍 韓国新聞記者 雑誌編集長
3. 陸培春氏 S22生 ( 47才 ) クアラルンプール出身 マレーシア国籍 東京外大卒 駒大非常勤講師 シンガポール紙特派員
4. クリエンクライ・ラワンクル氏 S37生 ( 32才 ) 東京出身 タイ国籍 日本で高校・大学卒業 フリージャーナリスト
本の裏表紙にある、彼らの略歴だ。 3.の陸培春氏の名前を見た時、この本の実態が見えた。陸氏は、昨年のブログに取り上げたばかりだ。朝日新聞とNHKに手厚く支援されるシンガポール紙の特派員で、反日の記事ばかりを書いている人物だ。
根津氏は日本人だが、他の三人は三人とも日本の大学を卒業し、日本で反日左翼の人間に囲まれて暮らしている。彼らがその気になれば、フィリッピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイの反日記事を探すのは困難ではない。マレーシアとタイの記事は、本人たちが書いた可能性もある。
本気になった心配して自分を、笑わずにいられない。ダイヤモンド社が、朝日新聞の真似をする出版社だとは知らなかった。だから私は、言う。
「ブルータス、お前もか。」