市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

首都高5号線の横転炎上事故から1年半・・・未だに請求しない首都高の事情と多胡運輸の余裕綽々

2010-02-15 23:57:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■平成20年8月3日(日)、午前5時52分、首都高速道路5号池袋線下り熊野町ジャンクションにおいて、走行中の多胡運輸(高崎市)のタンクローリーが横転・炎上事故が発生してから、はやくも1年半以上経過しました。

 事故による火災の熱で上り線の鋼桁が大きく変形し、路面が60~70cm沈んだため、道路を部分開放しながら半断面ずつ施工するという厳しい条件の下、事故発生から73日後の平成20年10月14日正午、当初の予定よりも約1カ月早く全面開通しました。

■同時に行われた首都高の社長の記者会見では、復旧工事費や本事故による通行料金の減収額については今後精査の上、原因者に請求していく予定だとしながらも、被害額については、①通行止めのあった8、9月の料金収入が25億円減少、②橋桁の架け替えなどの復旧工事に20億円、合計被害額は最大約45億円にのぼると表明しました。

 一方、事故を起こした多胡運輸では、「被害額を聞いて驚いている。出来る範囲で誠心誠意、対応させていただきたい」と当時、コメントしていました。

 あれから、すでに562日が経過したにもかかわらず、多胡運輸は今も何事もなかったかのごとく営業を続けています。

■この間、事故から1年が経過した平成21年8月14日に、首都高はホームページの「インフォーメーション」欄http://www.shutoko.jp/info/h21/0813.htmlに次の記事を掲載しました。

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不正通行に対する弊社の考え方
 不正通行という行為は、車を凶器のように悪用して、料金を支払わずに力ずくで通行する極めて卑劣で許しがたい犯罪行為です。不正通行に対しては、今後とも全社一丸となって断固とした態度で臨んでいく所存です。
 不正通行者に対しては、警察への積極的な通報や、割増金を含めた通行料金の請求・督促及び回収を今後も継続して行ってまいります。
 首都高の料金所を未払いのまま通過し、その後お支払いのご連絡をいただかなかった場合は不正通行として取り扱い、レーンに設置してある不正通行対策監視カメラ等を活用し、割増金も含めた通行料金を請求させていただきますのでご注意ください。
不正通行に対する取組み
・全料金所において不正通行車両の特定が可能となる整備が完了
・不正通行対策監視カメラを活用した不正通行等車両の捕捉の強化
・戸別訪問による通行料金・割増金の回収の強化
・他会社との情報共有等による連携強化
・道路整備特別措置法違反による警察への通報
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 そして、関連リンクとして、「首都高速道路株式会社供用約款」や「首都高速道路株式会社営業規則」などを掲げています。

■この約款を見ると、第1条で、高速道路を通行し、利用する者はこの約款を承認して同意したものとするとあります。そのうえで、会社の責任と、利用者の責任について明記しています。

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首都高速道路株式会社供用約款
(会社の責任)
第7条 高速道路の設置又は管理に瑕疵があったために利用者に損害を生じたときは、会社は、これを賠償する。
2 前項の場合において、利用者に過失があったときは、損害賠償額の算定に当たり、これを考慮することができる。
3 高速道路の設置又は管理に瑕疵がない場合を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 利用者の故意
二 会社の責任によらない車両相互の接触若しくは衝突又は落下物等による事故
三 盗難その他第三者による危害
四 天災地変その他の不可抗力
4 次に掲げる事由により生じた損失については、会社は、補償する責任を負わない。
一  第5条の規定に基づく供用の拒絶その他通行の禁止又は制限のための必要な措置
二 渋滞による遅滞
5 前4項の場合において、会社の責任は、利用者がこの約款に従って、高速道路に進入したときに始まり、高速道路から退出したときに終わる。
(利用者の責任)
第8条 高速道路を損傷し、又は汚損した利用者は、当該損傷又は汚損により必要を生じた高速道路に関する工事又は道路の維持に要する費用について、法第40条第1 項の規定により読み替えて適用する道路法(昭和27年法律第180号)第58条第1項の規定に基づき、会社に対して負担金を支払わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、高速道路を損傷し、又は汚損した利用者は、法第8条第1項第12号の規定により道路管理者の権限を代行する機構から道路法第22 条第1項の規定に基づき当該損傷又は汚損により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の施行を命ぜられた場合は、機構から命ぜられた道路に関する工事又は道路の維持を施行しなければならない。
3 前2項に規定するもののほか、利用者は、故意又は過失により会社に損害を与えた場合は、その損害を賠償しなければならない。
**********

 これによると、会社の責任は「高速道路の設置又は管理に瑕疵があったために利用者に損害を生じたときは、会社は、これを賠償する」としていますが、「渋滞による遅滞」などは保証責任がないとしています。

■他方、利用者の責任としては第1項で、「高速道路を損傷したり汚損した利用者は、修理工事や道路維持に要する費用について、法令の規定に基づき、会社に対して負担金を支払わなければならない」と規定しています。

 ここでいう法令として、「道路整備特別措置法第40条第1 項」を読み替えた「道路法第58条第1項」というのが挙げられています。道路法第58条第1項は、原因者負担金を定めており、「道路管理者は、他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については、その必要を生じた限度において、他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させるものとする。」とあります。

■利用者の責任として、もうひとつ第2項が規定されています。そこでは、首都高ではなく、その元締めの独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構も利用者の責任を問えることになっています。第2項は「前項の規定にかかわらず、高速道路を損傷し、又は汚損した利用者は、法令により、補修工事又は道路の維持施行を命ぜられた場合は、機構から命ぜられた道路に関する工事又は道路の維持を施行しなければならない」と定めています。

 ここでいう法令として「道路整備特別措置法第8条第1項第12号」の規定により道路管理者の権限を代行する機構から命じられた「道路法第22 条第1項」というのがあります。
道路法第22条は工事原因者に対する工事施行命令等を定めており、「道路管理者は、道路に関する工事以外の工事(以下「他の工事」という。)により必要を生じた道路に関する工事又は道路を損傷し、若しくは汚損した行為若しくは道路の補強、拡幅その他道路の構造の現状を変更する必要を生じさせた行為(以下「他の行為」という。)により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持を当該工事の執行者又は行為者に施行させることができる。」とあります。

■また、首都高の営業規則では、利用者の料金の徴収について定めています。この中で、第10条では未納の取り扱いについて規定しており、利用者が料金所でカネを払えないときは、所定の書面に氏名、自宅の住所、電話番号などの連絡先、運転免許証番号、車両登録番号等を記入して、首都高の指定した納入期限及び納入方法により支払を確約して、後払いできるとあります。

 また、第11条では、指定された納入期限前に払わない場合、手数料と共にと苦情による督促を行うと定めています。督促状に定めた納入期限前にカネを払わない場合、法26条によって、年10.75%の割合で日割り計算した金額が延滞金として課せられるとあります。

■いろいろ難解な用語が並んでいますが、要するに、首都高の道路を壊した利用者には、賠償責任を課すというものです。また、不正通行を行った利用者には、その免れた額のほか、その免れた額の2倍に相当する額を割増金として徴収できるとしており、料金を後払いにして踏み倒した利用者には、督促手数料や年10.75%の延滞金を課すということです。

 これらの観点から、多胡運輸のタンクローリー横転炎上事故による巨額損害金に対して、首都高が手をこまねくことは、一般の利用者に対して適用されるさまざまなルールやペナルティが、多胡運輸に対しては特例として免除されるということになります。

■一般利用者が、不正通行で1000円を踏み倒して、3000円を徴収されても、多胡運輸の場合、修理代45億円を踏み倒しても、チャラにしてもらえるのですから、到底一般利用者の理解は得られるはずがありません。

 いつ、前原国交大臣が、この変な現象に気付いて、首都高に対して、きちんと請求書を多胡運輸(高崎市)やその元締めのホクブトランスポート(高崎市)、さらには荷主の出光興産(東京都中央区)に出すよう行政指導できるのかどうか、また、多胡運輸を取り巻く自民党筋の政治権力のバリアーを粉砕できるのかどうか、日本の道路行政の根幹にも掛かる重大事として、注目していきたいと思います。

【ひらく会情報部】

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