■2008年(平成20年)8月3日(日)午前5時52分、首都高5号池袋線下りを走行中のタンクローリーが、熊野町ジャンクション内の急な右カーブを曲がり切れずに横転、左側側壁に衝突しました。このタンクローリーは群馬県高崎市にある運送会社の多胡運輸所有で、東京都江東区の油槽所から埼玉県さいたま市のガソリンスタンドに向けてガソリン16キロリットル、軽油4キロリットルを輸送していました。この日から先日の8月3日が5周年目にあたります。
↑新宿駅の西口から北西方向に徒歩約15分のところにある多胡運輸が組合員として加盟している関東交通共済協同組合(関交協)の自社ビル。首都高が多胡運輸らを相手取り総額およそ34億5千万円の損害賠償請求の行方の鍵の一部はこの関交協にあると言えよう。地下には客席数約150席の本格的なホールがあり有料で外部にも貸し出している。↑
この事故は、発生から73日後の10月14日正午頃に全面復旧しましたが、当時、首都高は、被害総額として復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と試算し、多胡運輸に請求すると発表しました。また、当時の記者会見において、首都高速の被害額45億円の他、首都高速利用者の経済的損失は天文学的数値として算出不能とされました。一説には数千億円とも1兆円前後とも言われました。
ところが、単独車両による事故としては国内史上最大規模の損壊事故であったにもかかわらず、マスコミによる報道はなぜか消極的で、事故を起こしたのが多胡運輸だということも余り知らされませんでした。
■当会は、この多胡運輸が、平成7年5月18日、安中市土地開発公社を舞台にひそかに発覚した地方自治体史上最大の巨額詐欺横領事件で単独犯とされた元職員の実弟が経営していることから、事件直後からマークしていました。
安中市民がタゴ51億円事件と呼ぶ巨額詐欺横領事件でも、マスコミはなぜか非常に消極的な報道姿勢を見せました。その理由として、警察による緘口令がマスコミに対して為されていたことが挙げられます。
そのため、タゴ51億円事件で単独犯とされた元職員の救済策として、多胡運輸に対する手厚い保護が、地元大物政治家の後ろ盾により、高崎北部運送(現・ホクブトランスポート)を通じて与えられていたのでした。
ところが、この首都高史上最悪の物損事故においても、マスコミによる報道はなぜか消極的で、事故を起こしたのが多胡運輸だということも余り知らされませんでした。そのため、当会では、この事故の処理についても不透明な経緯を辿るに違いないと見て、爾来、成行きを注意深く見守ってきました。
■当会は、首都高に対しても情報公開請求を幾度も行なってきました。平成23年8月3日に3年間の時効到来となるため、首都高の動きを注視していたところ、平成23年10月7日(金)に、首都高が、多胡運輸と、その元請のホクブトランスポート、さらには荷主の出光興産を相手取り、総額およそ34億5千万円の損害賠償を求める訴えを起こし、第1回口頭弁論が東京地裁で開かれたことが報じられました。
しかし、首都高にいくら裁判情報を聞いても情報不開示という返事しかもらえないため、今度は首都高の元締めの日本高速道路保有・債務返済機構に裁判情報の開示を請求しました。
多胡運輸が起こした首都高の歴史に名を残すこの大事故について、事故の真相と責任の所在を確認し、再発防止につなげ、安中市のタゴ51億円事件を再検証するためにも、この事故処理の情報と、事故を巡る当事者間の損賠裁判の情報が欠かせないためです。
そこで、首都高のお目付け役の日本高速道路保有・債務返済機構に情報開示請求を平成24年11月28日付で行ったところ、同12月25日付で同機構から不開示通知が当会に送られてきました。
そのため、平成25年1月4日付けで異議申立てをしていたところ、平成25年1月28日付で同機構から、本件を情報公開・個人情報保護審査会に諮問した旨の通知が届きました(諮問番号:平成25年(独情)諮問第3号)。
そして、平成25年2月12日付で同審査会から、同機構が作成した情報不開示の理由説明書が送られてきて、これに対する意見書を3月6日までに提出するように通知があったので、当会は平成25年3月6日付で意見書を内閣府に提出しました。その後、現在に至るまで内閣府からは何も通知が来ていません。
■一方、ネット情報によれば、一時期、「出光が損害金を支払った」などという未確認情報が出たこともありましたが、平成24年12月14日の業界紙報道によれば、依然として首都高と多胡運輸+ホクブトランスポート+出光興産との損害賠償訴訟は継続していることが分かりました。
さらに平成25年1月24日に関東交通共済協同組合で開かれた理事会の席上で、首都高速タンクローリー横転事故については平成25年2月20日(水)に東京地裁で第7回口頭弁論が行われることが報告され、日本高速道路保有・債務返済機構からの突然の損害賠償請求問題は「回答書を送ったが、その後は全くアクションがない」と報告されました。
■しかし、その後の状況は全く分かりません。そこで当会は直接関東交通共済協同組合を訪れて、首都高と多胡運輸らとの裁判の現況について先日、ヒヤリングを試みました。
全国に幾つか交通共済はありますが、関東に事業所を構えているのが関東交通共済協同組合です。これは、自動車を使用した中小企業が互いに費用を払って、事故の場合の保険金などが支払われます。
関東交通共済協同組合は、中小企業等協同組合法に基づき国土交通省関東運輸局の認可を得て、関東7都県(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬)のトラック運送事業者により1971年(昭和46年)5月22日に設立された協同組合です。 所在地は〒160-0023東京都新宿区西新宿7丁目21番20号(関交協ビル)(TEL:03-5337-1750、FAX:03-5337-1765)にあります。同組合は、相互扶助の精神に基づき、対人・搭乗者傷害・対物・車両の各共済事業および自動車損害賠償責任共済事業並びに事故防止、その他関連事業を運営して、運送業者によるトラック事業の為の自動車共済として、組合員の経営の安定と社会的、経済的地位の向上を目的としています。
その自動車共済事業の掛金等は、「貨物自動車運送事業者の事故防止の徹底および経営基盤の強化ならびに第三者たる被害者の保護の見地から運輸省が積極的に指導育成している」として、共済期間の経過に応じ損金の額または必要経費に算入できることになっています。
■多胡運輸も北部トランスポートも組合員となっているこの関東交通共済協同組合、略して「関交協」を、当会では平成25年8月9日の午前10時半に訪れました。
受付で訪問目的である情報開示の依頼を告げたところ、関交協の組合員かどうかを尋ねられました。組合員ではなく一般人である旨を告げると、受付の女性から担当部署にさっそく連絡していただきました。しかし、担当責任者のかたの所在が掴めずに、3階や5階にある各部署に所在を確認していただきました。ちょうどその時、たまたま1階に下りて来た年配の職員の方に受付のひとが担当責任者の所在を聞いたところ、その職員の方がこちらに来てくれました。当会の訪問目的を話すと、やはりタゴ運輸の問題はよく知っている様子です。それだけに当会の訪問目的についていぶかしく思われた様子でした。
そのうち担当責任者の方の所在が判明し、受付の奥の待ち合いスペース(以前は喫茶店だったらしい)で待つように案内されました。受付の方の配慮で、冷房を強くしていただきました。それほどこの日は暑い日でした。
■やがて5分ほどすると2名の男性職員の方が現れました。関交協の橋谷田常務理事と損害サービス部損害サービス第二課の野村課長でした。
挨拶の後、当会からまずアポイント無しで訪問したことについての非礼を詫びました。関交協側から当会の素状と訪問目的について質問があったので、最初に当会から、当会の活動概要と、今回の訪問目的について、平成7年に起きた安中市のタゴ51億円事件の背景と当会の活動内容、そして、その後平成20年に起きた首都高5号線熊野町ジャンクションでの多胡運輸所属のタンクローリーの横転炎上事故とその後の経緯、当会が首都高やその上級庁の日本高速道路保有・債務返済機構に対する情報開示請求とそれらに対する首都高や機構の対応などを説明しました。その上で、平成23年10月7日に、首都高が、多胡運輸+ホクブトランスポート(元請)+出光興産(荷主)を相手取り総額約34億5千万円の損害買収請求訴訟を起こした第1回口頭弁論が行われた件について、その後の経緯に関心がある旨を伝えました。
■当会の説明と関心事に対する関交協側の説明は次の通りでした。
「説明頂いた小川さんの活動や行動は大変理解できる。しかし我々は、あくまでも運送事業者の交通事故に対する事業という形で、組合員の多胡運輸の事故についてということなるので、個別の内容まで、我々は話したくても言えない部分がある。それはご理解いただきたい。」
「現在(首都高と多胡運輸棟との裁判が)どうなっていることについても、そちらではいろいろ情報を集めているようだが、こちらについても、契約者のほうから反対にいろいろ問題も出てくるので、本当に申し訳ないが話すことはできない。小川さんの運動は理解するが、契約者はうちの組合員なので、その内容はよく判っていても、(第3者の皆さんには)申し上げられない。」
「もちろん、(首都高の事故や裁判についても)うちの方は組合員には都度説明しているし情報は入手している。しかし、あくまでうちの組合員である多胡運輸のことについては話せない」
■以上のように、やはり組合員のことについては守秘義務のため、全く聞き出すことはできませんでした。それでも30分程度の会話で感じたことは、依然として首都高と多胡運輸らとの民事訴訟は係争中であるらしいこと、また、多胡運輸は高崎市箕郷町の本社事務所には「株式会社美正」という看板に掛け替えられていますが、裁判では被告として存在しているらしいことがうかがい知れます。
今回の関交協の訪問では具体的な成果は全くありませんでしたが、安中市土地開発公社を舞台にしたタゴ51億円巨額詐欺横領事件のことと当会の活動については同協会に十分説明することができました。多忙中にもかかわらず応対していただいた同協会の関係者の方々にはこの場を借りて御礼申し上げます。
【ひらく会情報部】
※参考情報
**********物流ウィークリー2012年12月14日 13:19
http://weekly-net.jp/2012/12/post-1534.html
関交協に突然賠償請求 高速道路保有・債務返済機構
08年8月、ガソリンを積んだ大型トレーラが首都高で横転、炎上するという事故が起こった。道路がトロトロに溶けるという日本の高速道路史上、未経験の大火災事故だった。4年以上経った今も、事故を起こした多胡運輸(群馬県高崎市)と首都高速道路会社との間で裁判は続いているが、多胡運輸が加入する関東交通共済協同組合(大高一夫理事長)に、今年に入って突然、日本高速道路保有・債務返済機構から損害賠償の請求書が届いていたことが本紙の取材で分かった。関交協が支払えるのは危険物特約として再共済を利用した10億円が限度。「それをはるかに上回る金額」の要求に関係者は戸惑っている。
全面復旧までに2か月以上かかり、市民の生活から首都圏経済まで大打撃を与えた事故を起こした多胡運輸は保有車両30台。直荷主の出光興産から元請けのH運送を経由して仕事をする、いわゆる下請け業者だ。事故の2か月後、関東運輸局は同社に対し車両5台を55日間使用停止とする行政処分を行った。さらに特別監査の結果、運転者に対する指導監督違反など8項目の法律違反が判明。追加の車両停止処分と運行管理者資格者証の返納命令を発出している。
当初、被害総額は復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と噂されたが、9か月後に首都高速が関交協に示した「損害見積もり」は、復旧費用17億円、営業損害15億6000万円の計32億6000万円だった。その頃、関交協には、東京都建設局(排水システム被害ほか)、東京ケーブルテレビジョン(配線ケーブル全焼)、隣接するマンション(外壁被害)など首都高速以外の各方面からの損害賠償が出そろったが、現在、2次被害も含めて「ほぼ片付いた」という。
未解決なのが首都高速に対する損害賠償。多胡運輸との裁判がいまだに続いており、損害賠償額は決定していない。そこに機構からの請求書。関交協は「まだ被害総額も確定せず、当事者の賠償額も決まっていないのに訳が分からない」と困惑。確かに民営化に際して採用された「上下分離方式」では「下」の部分、つまり道路施設は機構の所有物で、損害賠償を請求できる立場といえるが、裁判には現在も参加しておらず「突然、一方的に」加害者の保険会社に文書が送られてきた格好だ。
首都高速に「今後、どう対応するのか」聞いてみたが、「ノーコメント」。膠着状態が続く炎上事故の裁判が、複雑な様相を見せ始めた。(土居忠幸)
↑新宿駅の西口から北西方向に徒歩約15分のところにある多胡運輸が組合員として加盟している関東交通共済協同組合(関交協)の自社ビル。首都高が多胡運輸らを相手取り総額およそ34億5千万円の損害賠償請求の行方の鍵の一部はこの関交協にあると言えよう。地下には客席数約150席の本格的なホールがあり有料で外部にも貸し出している。↑
この事故は、発生から73日後の10月14日正午頃に全面復旧しましたが、当時、首都高は、被害総額として復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と試算し、多胡運輸に請求すると発表しました。また、当時の記者会見において、首都高速の被害額45億円の他、首都高速利用者の経済的損失は天文学的数値として算出不能とされました。一説には数千億円とも1兆円前後とも言われました。
ところが、単独車両による事故としては国内史上最大規模の損壊事故であったにもかかわらず、マスコミによる報道はなぜか消極的で、事故を起こしたのが多胡運輸だということも余り知らされませんでした。
■当会は、この多胡運輸が、平成7年5月18日、安中市土地開発公社を舞台にひそかに発覚した地方自治体史上最大の巨額詐欺横領事件で単独犯とされた元職員の実弟が経営していることから、事件直後からマークしていました。
安中市民がタゴ51億円事件と呼ぶ巨額詐欺横領事件でも、マスコミはなぜか非常に消極的な報道姿勢を見せました。その理由として、警察による緘口令がマスコミに対して為されていたことが挙げられます。
そのため、タゴ51億円事件で単独犯とされた元職員の救済策として、多胡運輸に対する手厚い保護が、地元大物政治家の後ろ盾により、高崎北部運送(現・ホクブトランスポート)を通じて与えられていたのでした。
ところが、この首都高史上最悪の物損事故においても、マスコミによる報道はなぜか消極的で、事故を起こしたのが多胡運輸だということも余り知らされませんでした。そのため、当会では、この事故の処理についても不透明な経緯を辿るに違いないと見て、爾来、成行きを注意深く見守ってきました。
■当会は、首都高に対しても情報公開請求を幾度も行なってきました。平成23年8月3日に3年間の時効到来となるため、首都高の動きを注視していたところ、平成23年10月7日(金)に、首都高が、多胡運輸と、その元請のホクブトランスポート、さらには荷主の出光興産を相手取り、総額およそ34億5千万円の損害賠償を求める訴えを起こし、第1回口頭弁論が東京地裁で開かれたことが報じられました。
しかし、首都高にいくら裁判情報を聞いても情報不開示という返事しかもらえないため、今度は首都高の元締めの日本高速道路保有・債務返済機構に裁判情報の開示を請求しました。
多胡運輸が起こした首都高の歴史に名を残すこの大事故について、事故の真相と責任の所在を確認し、再発防止につなげ、安中市のタゴ51億円事件を再検証するためにも、この事故処理の情報と、事故を巡る当事者間の損賠裁判の情報が欠かせないためです。
そこで、首都高のお目付け役の日本高速道路保有・債務返済機構に情報開示請求を平成24年11月28日付で行ったところ、同12月25日付で同機構から不開示通知が当会に送られてきました。
そのため、平成25年1月4日付けで異議申立てをしていたところ、平成25年1月28日付で同機構から、本件を情報公開・個人情報保護審査会に諮問した旨の通知が届きました(諮問番号:平成25年(独情)諮問第3号)。
そして、平成25年2月12日付で同審査会から、同機構が作成した情報不開示の理由説明書が送られてきて、これに対する意見書を3月6日までに提出するように通知があったので、当会は平成25年3月6日付で意見書を内閣府に提出しました。その後、現在に至るまで内閣府からは何も通知が来ていません。
■一方、ネット情報によれば、一時期、「出光が損害金を支払った」などという未確認情報が出たこともありましたが、平成24年12月14日の業界紙報道によれば、依然として首都高と多胡運輸+ホクブトランスポート+出光興産との損害賠償訴訟は継続していることが分かりました。
さらに平成25年1月24日に関東交通共済協同組合で開かれた理事会の席上で、首都高速タンクローリー横転事故については平成25年2月20日(水)に東京地裁で第7回口頭弁論が行われることが報告され、日本高速道路保有・債務返済機構からの突然の損害賠償請求問題は「回答書を送ったが、その後は全くアクションがない」と報告されました。
■しかし、その後の状況は全く分かりません。そこで当会は直接関東交通共済協同組合を訪れて、首都高と多胡運輸らとの裁判の現況について先日、ヒヤリングを試みました。
全国に幾つか交通共済はありますが、関東に事業所を構えているのが関東交通共済協同組合です。これは、自動車を使用した中小企業が互いに費用を払って、事故の場合の保険金などが支払われます。
関東交通共済協同組合は、中小企業等協同組合法に基づき国土交通省関東運輸局の認可を得て、関東7都県(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬)のトラック運送事業者により1971年(昭和46年)5月22日に設立された協同組合です。 所在地は〒160-0023東京都新宿区西新宿7丁目21番20号(関交協ビル)(TEL:03-5337-1750、FAX:03-5337-1765)にあります。同組合は、相互扶助の精神に基づき、対人・搭乗者傷害・対物・車両の各共済事業および自動車損害賠償責任共済事業並びに事故防止、その他関連事業を運営して、運送業者によるトラック事業の為の自動車共済として、組合員の経営の安定と社会的、経済的地位の向上を目的としています。
その自動車共済事業の掛金等は、「貨物自動車運送事業者の事故防止の徹底および経営基盤の強化ならびに第三者たる被害者の保護の見地から運輸省が積極的に指導育成している」として、共済期間の経過に応じ損金の額または必要経費に算入できることになっています。
■多胡運輸も北部トランスポートも組合員となっているこの関東交通共済協同組合、略して「関交協」を、当会では平成25年8月9日の午前10時半に訪れました。
受付で訪問目的である情報開示の依頼を告げたところ、関交協の組合員かどうかを尋ねられました。組合員ではなく一般人である旨を告げると、受付の女性から担当部署にさっそく連絡していただきました。しかし、担当責任者のかたの所在が掴めずに、3階や5階にある各部署に所在を確認していただきました。ちょうどその時、たまたま1階に下りて来た年配の職員の方に受付のひとが担当責任者の所在を聞いたところ、その職員の方がこちらに来てくれました。当会の訪問目的を話すと、やはりタゴ運輸の問題はよく知っている様子です。それだけに当会の訪問目的についていぶかしく思われた様子でした。
そのうち担当責任者の方の所在が判明し、受付の奥の待ち合いスペース(以前は喫茶店だったらしい)で待つように案内されました。受付の方の配慮で、冷房を強くしていただきました。それほどこの日は暑い日でした。
■やがて5分ほどすると2名の男性職員の方が現れました。関交協の橋谷田常務理事と損害サービス部損害サービス第二課の野村課長でした。
挨拶の後、当会からまずアポイント無しで訪問したことについての非礼を詫びました。関交協側から当会の素状と訪問目的について質問があったので、最初に当会から、当会の活動概要と、今回の訪問目的について、平成7年に起きた安中市のタゴ51億円事件の背景と当会の活動内容、そして、その後平成20年に起きた首都高5号線熊野町ジャンクションでの多胡運輸所属のタンクローリーの横転炎上事故とその後の経緯、当会が首都高やその上級庁の日本高速道路保有・債務返済機構に対する情報開示請求とそれらに対する首都高や機構の対応などを説明しました。その上で、平成23年10月7日に、首都高が、多胡運輸+ホクブトランスポート(元請)+出光興産(荷主)を相手取り総額約34億5千万円の損害買収請求訴訟を起こした第1回口頭弁論が行われた件について、その後の経緯に関心がある旨を伝えました。
■当会の説明と関心事に対する関交協側の説明は次の通りでした。
「説明頂いた小川さんの活動や行動は大変理解できる。しかし我々は、あくまでも運送事業者の交通事故に対する事業という形で、組合員の多胡運輸の事故についてということなるので、個別の内容まで、我々は話したくても言えない部分がある。それはご理解いただきたい。」
「現在(首都高と多胡運輸棟との裁判が)どうなっていることについても、そちらではいろいろ情報を集めているようだが、こちらについても、契約者のほうから反対にいろいろ問題も出てくるので、本当に申し訳ないが話すことはできない。小川さんの運動は理解するが、契約者はうちの組合員なので、その内容はよく判っていても、(第3者の皆さんには)申し上げられない。」
「もちろん、(首都高の事故や裁判についても)うちの方は組合員には都度説明しているし情報は入手している。しかし、あくまでうちの組合員である多胡運輸のことについては話せない」
■以上のように、やはり組合員のことについては守秘義務のため、全く聞き出すことはできませんでした。それでも30分程度の会話で感じたことは、依然として首都高と多胡運輸らとの民事訴訟は係争中であるらしいこと、また、多胡運輸は高崎市箕郷町の本社事務所には「株式会社美正」という看板に掛け替えられていますが、裁判では被告として存在しているらしいことがうかがい知れます。
今回の関交協の訪問では具体的な成果は全くありませんでしたが、安中市土地開発公社を舞台にしたタゴ51億円巨額詐欺横領事件のことと当会の活動については同協会に十分説明することができました。多忙中にもかかわらず応対していただいた同協会の関係者の方々にはこの場を借りて御礼申し上げます。
【ひらく会情報部】
※参考情報
**********物流ウィークリー2012年12月14日 13:19
http://weekly-net.jp/2012/12/post-1534.html
関交協に突然賠償請求 高速道路保有・債務返済機構
08年8月、ガソリンを積んだ大型トレーラが首都高で横転、炎上するという事故が起こった。道路がトロトロに溶けるという日本の高速道路史上、未経験の大火災事故だった。4年以上経った今も、事故を起こした多胡運輸(群馬県高崎市)と首都高速道路会社との間で裁判は続いているが、多胡運輸が加入する関東交通共済協同組合(大高一夫理事長)に、今年に入って突然、日本高速道路保有・債務返済機構から損害賠償の請求書が届いていたことが本紙の取材で分かった。関交協が支払えるのは危険物特約として再共済を利用した10億円が限度。「それをはるかに上回る金額」の要求に関係者は戸惑っている。
全面復旧までに2か月以上かかり、市民の生活から首都圏経済まで大打撃を与えた事故を起こした多胡運輸は保有車両30台。直荷主の出光興産から元請けのH運送を経由して仕事をする、いわゆる下請け業者だ。事故の2か月後、関東運輸局は同社に対し車両5台を55日間使用停止とする行政処分を行った。さらに特別監査の結果、運転者に対する指導監督違反など8項目の法律違反が判明。追加の車両停止処分と運行管理者資格者証の返納命令を発出している。
当初、被害総額は復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と噂されたが、9か月後に首都高速が関交協に示した「損害見積もり」は、復旧費用17億円、営業損害15億6000万円の計32億6000万円だった。その頃、関交協には、東京都建設局(排水システム被害ほか)、東京ケーブルテレビジョン(配線ケーブル全焼)、隣接するマンション(外壁被害)など首都高速以外の各方面からの損害賠償が出そろったが、現在、2次被害も含めて「ほぼ片付いた」という。
未解決なのが首都高速に対する損害賠償。多胡運輸との裁判がいまだに続いており、損害賠償額は決定していない。そこに機構からの請求書。関交協は「まだ被害総額も確定せず、当事者の賠償額も決まっていないのに訳が分からない」と困惑。確かに民営化に際して採用された「上下分離方式」では「下」の部分、つまり道路施設は機構の所有物で、損害賠償を請求できる立場といえるが、裁判には現在も参加しておらず「突然、一方的に」加害者の保険会社に文書が送られてきた格好だ。
首都高速に「今後、どう対応するのか」聞いてみたが、「ノーコメント」。膠着状態が続く炎上事故の裁判が、複雑な様相を見せ始めた。(土居忠幸)
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