市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

容疑者帰国で真相解明が始動する長野県サカモト24億円事件と真相が闇のままの安中タゴ51億円事件

2013-11-15 01:01:00 | 他の自治体等の横領事件とタゴ51億円事件
■隣の長野県で2010年9月12日に公表された約23億8700万円の巨額横領事件で、その3日前に「東京にいく」と言って姿をくらまし、タイに逃亡していた長野県建設業厚生年金基金の元事務長が今月1日に滞在先のバンコクで逮捕され、本日14日朝6時40分頃、成田空港に移送され、機内で逮捕されました。そして、長野県警の車両で午後0時半に、3年2カ月ぶりに長野市に着きました。さっそく、長野中央署による取調べが開始されたはずです。


 当会では、長野県建設業厚生年金基金を舞台に発生した24億円巨額横領事件と、18年前に安中市土地開発公社を舞台に発生した51億円巨額横領事件とを対比させつつ、事件の真相をいろいろな角度から分析を試みてきました。今後は、元事務長の逮捕で、具体的な犯行形態が明らかにされることが期待される為、都度、安中市タゴ51億円事件の犯行形態を比較しつつ、両方の事件の真相、責任所在、再発防止策の観点から解析してゆきたいと考えています。

■それでは、3年2ヶ月ぶりにふるさとの土を踏んだ元事務長の帰国にともなう13日晩から14日にかけてのマスコミ報道を時系列的に見てみましょう。

**********FNN2013年11月13日18:20(長野放送)
巨額横領事件 坂本芳信容疑者、タイで移送直前に元愛人と面会
巨額横領事件をめぐる追及が、いよいよ本格化しようとしている。
タイ・バンコクで逮捕された男の身柄が、13日夜、日本に送られることになった。
現地での別れの場面を、FNNのカメラがとらえた。
日本時間13日午後1時半ごろ、タイ・バンコクの入国管理局本部を訪れたのは、日本の警察庁の担当者らだった。
警視庁の担当者は「この度は、逃亡者の身柄確保にご協力いただき、ありがとうございます」と話した。
タイ側の関係者に礼を述べ、手土産の梅酒を手渡した捜査員。
その目的は、およそ24億円が不明となっている、長野県建設業厚生年金基金の横領事件で国際手配されていた、坂本芳信容疑者(56)の身柄引き渡しについてだった。
坂本容疑者は事件発覚後、基金の口座から、6,000万円余りを引き出し、およそ3年間、バンコクに潜伏していたが、11月1日、不法滞在の疑いで逮捕された。
まもなく、身柄が日本に引き渡される坂本容疑者。
そうした中、12日、坂本容疑者のもとを訪れたのは、元交際相手の女性だった。
坂本容疑者は、元交際相手の女性と面会中、時折、手を大きく動かすなど、感情的な表情も見られた。
女性は、坂本容疑者の元交際相手で、およそ2年間にわたって、現地でつきあいがあったという。
しかし、坂本容疑者が金を使い果たし、女性に借金を求めるようになったことから、2人の関係は終わった。
その後、女性は警察に通報し、今回の逮捕となった。
元交際相手のタイ人女性は「きょうは、彼がこの国で過ごす、最後の日です。彼はあす、日本に帰ってしまいます」と話した。
タイで過ごす最後の日なので、面会に来たという女性。
面会中、坂本容疑者は、取材カメラを意識してか、右手で顔を覆うようなしぐさをしていたが、その左手は、しっかりと女性に握り締められていた。
最後に、2人は涙を流しながら、抱き合って別れたという。
面会を終えて、部屋を出る坂本容疑者。
その手には、女性から手渡されたスニーカーがあった。
2人で一緒に暮らしていた時に使っていたものだという。
面会後、坂本容疑者に何を話したのか尋ねたが、何も語らなかった。
一方、取材に応じた元交際相手のタイ人女性は「わたしは、彼に『自分がしたことを償ってください、耐えてください』と言いました。そして、『体に気をつけてください』と言いました。彼は泣いていました」と話した。
坂本容疑者は「あなたに会えてうれしい。でも、悲しい」と話し、涙を流したという。
女性は、自らが警察に通報したことについては、「彼には、申し訳ないことをしたと思いました。でも彼は、日本へ帰れて幸せだと思います。(彼は)怒っていない。涙」と話した。
13日、タイ警察のパーヌ・グラーポン捜査部長は「いつも坂本容疑者の状態を気にしていましたが、報告によると、最初にここへ来た時より、状態は良く、精神的にも良好です」と話した。
坂本容疑者は、現地時間13日夜、バンコクをたち、日本に向かうという。
長野県警は14日、成田空港で、坂本容疑者の身柄を、タイ当局から引き渡されたあと、業務上横領の疑いで逮捕する方針。

**********読売新聞2013年11月14日08時58分
交際女性、面倒みきれず通報?元事務長タイ潜伏
 長野県建設業厚生年金基金(長野市)の横領事件で、長野県警は14日、基金の口座から約6400万円を着服したとして、国際手配していた基金の元事務長、坂本芳信容疑者(56)を業務上横領容疑で逮捕した。
 坂本容疑者は今月1日、逃亡先のタイ・バンコクで、不法滞在容疑でタイの入国管理局に逮捕された。
       ◇
 【バンコク=石崎伸生】坂本芳信容疑者は、タイの首都バンコクで逮捕された当時、交際するタイ人女性に頼って生活していた。
 一時期は、羽振りのいい生活をし、女性に金をつぎ込んでいたという。
 タイ捜査当局の関係者によると、坂本容疑者は2010年9月に入国して以来、複数のタイ人女性と交際。女性の知人によると、交際を始めた頃には、高級腕時計や現金約60万バーツ(約190万円)を贈るなどしていたという。別の女性とは、タイのリゾート地で高級ホテルに宿泊するなどしており、交際女性の知人は「ぜいたくな生活をしていたようだ」と話した。
 タイ当局に逮捕された当時は、日本人が多く住む地域から離れた、バンコク西部の路地裏にある築約30年の6階建てマンションに潜んでいた。部屋は2階。30平方メートル程度で、エアコンはない。月々の家賃2500バーツ(約7900円)は交際女性が払っていた。マンションの男性オーナー(64)によると、部屋は原則、タイ人にしか貸していないが、交際女性の友人名義で借りられていた。
 来客もなく、ほとんど外出しなかったという坂本容疑者。着古したポロシャツや短パン姿で、1食30バーツ(約95円)の近くの食堂をよく利用していた。
 オーナーは「礼儀正しく、物静かな人だった。ただ、大金を持っているようには見えなかった」と振り返る。
 捜査関係者によると、潜伏先を通報したのは交際女性だったという。オーナーは「面倒をみきれなくなったのだろう」と話した。

**********朝日新聞デジタル2013年11月14日10時17分
厚年基金元事務長、横領容疑で逮捕 24億円不明事件
 長野県建設業厚生年金基金(長野市)で会員企業から集めた掛け金23億8700万円が不明になった事件で、長野県警は14日、業務上横領容疑で指名手配していた元事務長坂本芳信容疑者(56)を成田空港の機内で逮捕した。逃亡先のタイで身柄を拘束され、日本に移送されていた。容疑を認めているという。
 午前7時過ぎ、捜査員に囲まれた坂本容疑者は、空港の通路をうつむきがちに歩いて捜査車両に乗り込み、午後0時40分すぎ、長野市の長野中央署に到着した。
 県警によると、逮捕容疑は、坂本容疑者が2010年7月、基金の口座から引き出した掛け金約1億3千万円のうち約6400万円を着服した疑いがあるというもの。同年9月、掛け金の不明が発覚した直後に坂本容疑者の行方が分からなくなり、今月1日、バンコクでタイ当局に不法滞在容疑で拘束されていた。
 同基金では掛け金の不明事件のほか、AIJ投資顧問(現・MARU)から約65億円の詐欺被害に遭い、未公開株を巡る別の資金運用でも約46億円の損失が出たことが金融庁の検査で判明。一連の資金運用は坂本容疑者が事務長時代に始まっていた。

**********朝日新聞2013年11月14日11時00分
社長称し豪遊、女性にはロレックス 元事務長の逃亡生活
 【バンコク=軽部理人】坂本芳信容疑者(56)は、どのような逃亡生活を送っていたのか。タイ入管警察によると、坂本容疑者は10年9月10日に入国。バンコク中心部のホテルが併設される高級マンションに住み始めた。家賃月4万バーツ(約12万円)。大卒の初任給が1万5千バーツほどのタイでは高額だ。当時、部屋の手配などをした女性(47)にはベンツを贈った。
厚年基金元事務長、横領容疑で逮捕
 翌年3月ごろ、繁華街の「タニヤ通り」の飲食店に通うようになり、1人のタイ人女性(37)と出会って交際するようになった。店の関係者によると、多い時には月に約10万バーツを女性に渡し、約20万バーツのロレックスといった高級時計を贈っていた。その後、月2万バーツほどの部屋に移り住み、同居していたという。
 交際していた女性によると、坂本容疑者は自らのことを「社長」と称していた。タイ入管警察の調べでは、同時期、タイ中部のリゾート地ホアヒンを訪れ、1泊5万バーツほどのスイートルームに宿泊、ゴルフをしたことが確認されている。

**********毎日新聞 11月14日(木)8時3分配信
<長野基金横領>元事務長、逃亡先タイから帰国 空港で逮捕

↑逃亡先のバンコクから帰国した長野県建設業厚生年金基金元事務長の坂本芳信容疑者=成田空港で2013年11月14日午前7時14分、中村藍撮影↑
 長野県建設業厚生年金基金(長野市)で掛け金23億8700万円が使途不明になり、このうち6000万円超を着服したとして長野県警から業務上横領容疑で指名手配されていた同基金の元事務長、坂本芳信容疑者(56)が14日朝、逃亡先のタイから帰国した。県警は到着した成田空港の機内で、坂本容疑者を逮捕した。
 坂本容疑者はバンコクで不法滞在の疑いで現地当局に逮捕された。罰金刑を受け、身柄引き渡しを受けた警察庁職員が同行して帰国した。
 容疑は2010年7月、加入者から徴収した年金掛け金を運用委託先の生命保険会社に送金する名目で基金名義の口座から約1億3000万円引き出し、うち約6400万円を着服したとされる。容疑を認めている。
 同基金は10年8月、生命保険会社から「掛け金が不自然に少ない」との指摘を受け、厚生労働省が監査を実施。その後24億円近くが使途不明となっていることが判明した。
 県警などの調べでは、坂本容疑者は「一部の企業から独自で資金を運用したいと申し出があり、別の口座に振り込んでいる」などと説明していたが、同9月、妻に「東京に行く」と言い残して所在不明となった。県警は着服した資金の使途や使途不明金の所在などについて追及する方針。
 基金は使途不明金とは別に、資産の大半を消失させたAIJ投資顧問(現MARU)に約65億円を委託し、多額の損失を出した。資金管理は実質的に坂本容疑者が1人で行っていたとされ、県警は不透明な経理の実態解明も進める。
 同基金は坂本容疑者を相手取って損害賠償請求訴訟を長野地裁に2回起こし、いずれも本人が出廷しないまま計約2億5500万円の支払いを命じる判決が出ている。
 坂本容疑者は帰国時、黒色のジャンパーにベージュのズボン姿。野球帽を深くかぶり白いマスクをつけ、表情を変えずうつむきながら空港内を歩いた。同容疑者を乗せた捜査車両は午前7時半過ぎ空港を出発。午後0時半過ぎ長野中央署に到着した。【巽賢司、野口麗子、味澤由妃】

**********J-CASTニュース2013年11月14日 12:32
ラモス、長野年金基金24億円不明男と飲み友達だった 「ハワイ旅行」「高級店で食事」と交際明かす
長野県建設業厚生年金基金で約24億円が不明になっている問題に関連し、約6000万円の業務上横領容疑で長野県警に指名手配されていた同基金の元事務長、坂本芳信容疑者(56)が逃亡先のタイから移送され、2013年11月14日早朝、成田空港に到着した航空機内で同県警に逮捕された。
消えた約24億円の行方に注目が集まる中、交際があったというビーチサッカー日本代表監督のラモス瑠偉氏(56)が坂本容疑者のお金で「ハワイ旅行に行ったことがある」と明かし、その豪遊ぶりの一端を証言した。
坂本容疑者は「お茶ばかり飲んでいた」
11月13日の夜、「朝ズバッ!」(TBS系)の独占取材に応じたラモス氏は、坂本容疑者の写真を見せられると「間違いない。めちゃくちゃ老けていますけど、彼です」と答えた。ラモス氏と坂本容疑者の出会いは今から約5年前のことだ。坂本容疑者がラモス氏のファンだと知り、知人が六本木のクラブで引き合わせた。当時は「社長」として紹介されたようだ。その後、銀座や六本木の高級店に行って酒を飲み交わすようになったが、坂本容疑者はあまり酒を飲まず、お茶ばかり飲んでいたという。支払いはすべて坂本容疑者持ちだった。
交際は高級店での食事にとどまらない。ラモス氏はハワイ旅行に連れて行ってもらったこともあると話した。スケジュールがなかなか合わず3回目に誘われた際にようやく都合がつき、5~7日のうち最後の3日間で合流したという。「寿司屋の職人まで連れて行って。やっぱりすごい金持っているなと・・・何をやっている社長なのかなと・・・」と驚いたようだ。

下ネタに怒るほど「上品な人」だった
坂本容疑者の印象については「本当に品があって、まさかこういうことをやる人だとは思わなかった。言葉も丁寧だし、本当に礼儀正しくて気さくで上品」と語る。ラモス氏が下ネタを使うと「ラモちゃんのイメージがよくない」と怒られることもあったそうだ。
坂本容疑者の贅沢な暮らしぶりに付き合っていたラモス氏だが、横領については全く知らず、報道が出た際には一瞬パニックになったと振り返る。「ありえない。そういう人に見えなかった」と強調し、知っていたら付き合っていなかったと思うとも話していた。ただ、亡くなった妻・初音さんは不審に思う部分があったのか、今後の付き合いについてラモス氏に「気をつけた方がいいよ」と忠告したことがあったという。
なお、ラモス氏のブログには放送後(14日)に「本日放送されました『TBS 朝ズバッ!』での証言を以てコメントを差し控えさせていただきます」とスタッフからのお知らせが掲載され、今後は取材に応じない姿勢を示している。
坂本容疑者は、横領については「日本で話す」としており、警察は横領事件の全容解明を急ぐ。
**********

■この横領事件は、今のところ犯行総額が24億円とされていますが、AIJ等の投資による損失が数十億円と言われており、ひょっとしたら犯行総額がさらに膨れ上がり、安中タゴ51億円事件を越える可能性もあります。

 当会は、タゴ51億円事件の教訓をもとに、この事件についても今後の展開を注目していく所存です。

【ひらく会情報部・タゴ51億円事件18周年記念調査班】

**********週刊新潮2013年11月21日
[特集]ラモス瑠偉と親しかった「24億円横領男」黄金の日々
銀座クラブ経営で大赤字 定宿は「リッツ・カールトン」
「久兵衛」職人帯同でホステス5人とハワイ旅行
 24億円の使途不明金が発覚し、海外に高飛びした年金基金元事務長の坂本芳信(56)がタイで捕まった。所持金わずか1万円少々。実は大金はほとんど蕩尽した。銀座・六本木の愛人ホステス達に貢ぎ、高級クラブまで経営するという“黄金の日々”だったのである。
 「しょっちゅう喧嘩したし、冷たい男だったけど、痩せ細った彼を見ると、驚くばかりで何と言ったらいいか」
 色褪せた青のポロシヤツと白髪混じりの頭……テレビに映された姿を見て、銀座のクラブの雇われママ、エリさん(仮名)はため息をついた。
 その男、坂本芳信は今月1日、タイ・バンコクで不法滞在により逮捕された。
 この一見しょぼくれた男がマスコミを騒然とさせたのは、彼が事務長を務めていた長野県建設業厚生年金基金で約23億8700万円の使途不明金が発覚し、業務上横領容疑で国際手配されていたからだ。
 逮捕時の所持金は1万円ちょい。外国人がほとんどいない郊外の家賃8000円のワンルームのアパートに住み、その家賃も2ヵ月滞納していた。
「坂本さんは毎朝タクシーで出勤していました」
 そう語るのは、長野市郊外にある坂本の自宅近所の住人である。
「そのエンジン音がうるさくて、事件後は、一家で夜逃げしたようにいなくなりましたけど」
家賃5万5000円の3DKの借家住まい。タクシーだけで到底、億単位の金は使えまい。いったい300社超がこつこつ貯めた24億円はどこに消えたのか。
 謎を解く鍵は、冒頭に登場したエリママにあった。
「彼と初めて会ったのは8年前、六本木で当時、私が勤めていたクラブに来たのがきっかけだったわね」
 とママが重い口を開く。
「常連だった保険外交員の方と一緒に来たのが始まり。彼はその後も一人や接待で月に1、2階のペースで顔を見せるようになったの」
 エリママの知る限りでは、坂本は新橋にある投資ファンド会社の社長。長野にある自宅から東京まで新幹線で通っていて、定宿は赤坂のANAインターコンチネンタルや、東京ミッドタウンのザ・リッツ・カールトンなど5ツ星の超高級ホテルを渡り歩いていた。
 「一度も名剌をくれなかったけど、話に信憑性があったので疑うことはなかったの。移動は黒塗りの高級車のハイヤーを貸し切っていたし、本当にお金持ちなんだなあと信じちゃったのよ。実際は、長野で仕事をしていたのに、そんなこと一切言わなかったわね。平日もお店に来ていたので、本当に束京に会社があって仕事をしていると思ってた」
 実際は高卒ながら、早稲田大学卒業と称していた。
「息子も早大に人学、高校時代からパソコンで株の売り買いを覚えて1000万円くらい儲けているとか、受験の際はリッツに泊まらせたとか言っていました」
 ママが続ける。
「詐欺師や嘘つきは訊いてもいないのに自分のことをよく喋るけど、彼はこちらから訊かない限り自分のことは喋らない。よく“オレは年商2000億円だ”とか言う社長さんがいるけど、彼は自分の会社の年商とかも言ったことがないし、自慢話もしないので、疑うよりも逆に信用してしまったところがありました」
 200万~300万円もするオーダースーツを着こなし、時計は1500万円の海外ブランド品だった。
「事件後、銀座の仏高級ブランド店に数十着、何千万円分かの洋服を預けているとも聞いたわね。今となっては警察に差し押さえられているのでしょうけど」
 逮捕された際のみすぼらしさからは想像もつかない“紳士”だったようだ。
「でもね、私の知る彼は泡銭をパーッと使うとか、派手な遊び方はしなかった」
 エリママの述懐は続く。
「飲み方もいたって普通。ウィスキーのボトルから水割りをチビチビ飲む程度で、成金やITベンチャーの人たちみたいに、女の子のために高いお酒を入れるなんてことはなかった。店内で女の子とイチャイチヤしたり、大騒ぎして派手に飲むのではなく、ボソボソッと話すタイプ。おっとりとした猫なで声で“僕ねぇ”と言うのが口癖だったわ。″`
の子が席につくと、私に“お酒を作ってあげてよぉ”と女々しい感じで言う、そんな具合よ。乱暴な言葉は一切使わない。温厚で線の細い、どこにでもいるような中年の男でした」
 ところが、彼女が坂本と知り合ってから半年も経たないうちに、男の別の一面を知ることになったという。

★貢ぐ額が一桁違う★

「彼はお店で気に入った子がいるとデートに誘い出し、すぐにいい仲になってしまう。店の外で女の子に会っては“突っ込む”わけよ。いきなりというわけではなく、何度か会ってからいい仲に持ち込んでいた様子でしたけど。でも、一度でもセックスさせてくれた女の子には、途方もないお金を貢いでいた」
 店外デートで行く店は、決まって一人2万4000円の高級鉄板焼店もしくは寿司屋の「久兵衛」。なお後者については後述する。
「例えば“車が欲しい”と言われればポンと買ってあげる。“家具が欲しい”と言うには、平気で海外の800万円もする家具一式を買ってあげたりとかね。今は閉店してるけど、六本木にカウンターバーのお店をオープンさせてあげたこともあったそうよ。女に貢ぐ額が一桁違うの。一度でもセックスできると、一人当たり軽く1000万円は貢いでいたと思う。そういう具合で、好きな女の子一人に入れ込むタイプではなく、常時3、4人の女の子と付き合っていて、私が知る限り二十数人の子と関係を持っていた」
 20人の女に1000万円ずつ貢いだら……それだけで2億円が消えた計算だ。
「それでも飽き足らず、VIP専門の斡旋所にはまって数百万円使ったとも聞いたわね。登録すればすぐにカワイイ女の子を紹介してくれて“突っ込める”とでも言えばいいのかしら。香港やタイにも愛人がいたとか、人づてに聞いたこともあったわ」
 意外にも、家やマンションを買い与えて囲うということはしなかった。
「同じお店の女の子数人と常時付き合っていたので、一人でもそういうことをしてバレると嫌われるとでも思ったんじゃないかしら。
 一度、私が“そんなに女の子にお金を使うのなら、ピルの一つでも買ったら”と言ったら、彼は、“ビルとか買うと奥さんに取られちゃう。もうすぐ離婚するから”と。奥さんとは上手くいってなかったみたい」
 齢50を過ぎ、金に飽かして両手でも足りない数の若い女性と付き合う、その“性豪”ぶりには目をみはるが、「全員に騙されていたのが彼のバカなところね。大抵は2、3ヵ月で女の子にフラれて、長く続いても1年程度。何でも彼は普段は大人しそうなくせに一度、関係を持った相手には急に束縛しだして、すぐに“オレの女だ”という態度に出て勘違いしてしまうタイプらしいのよ。今何しているとかメールを頻繁に送ってしまう。最近の若い子は本当にサバサバしているからね。いくらカネ払いはよくても、そういう男はウザったい。だから、欲しいものを貰えるだけ貰ったら、すぐにポイ捨てされてしまった」
 先に述べた車を貢いだ女の子。哀しいかな、翌日には本命の彼氏がその車を駆っていたのだとか。
「よっぽどセックスがねちっこくて変態だったから嫌われたのかもね。私はヤったことないからわかんないわよ。基本的に私みたいな年増は相手にしないもの。好きなタイプは21歳から25歳くらいまでの“可愛らしい”というか、夜の世界で右も左も分からないような子ね。大人しそうな素人っぽさが残る娘さんが好みだったわ。だから、決して水商売のプロに見える、派手な玄人タイプの女の子には手を出さなかった。そのくせ、結局騙されていたのだ
から彼もお人よしなのよ」
 当時、店の女の子が坂本に“妊娠した”と中絶費用や慰謝料など300万円を要求したことがあった。だが実は、赤ん坊の父親は坂本ではなく本命の彼。そこでママが間に入って女の子に言い含め、尻拭いをして
やったこともあったという。
「聞けば、私と出会う以前にも、5年ほど付き合っていた韓国人ホステスがいたみたい。町田の店で知り合ったとかで、デザイン学校に勉強に行くのでその学費や、脳の病気を患っているからと手術費用3000万円を出してあげたとか言っていた。その後、連絡がとれなくなったそうだけど」
 そんな坂本に対し、ママは“あんた、騙されてるのよ。そんな女とは関係を絶ちなさい”と、口酸っぱく叱り飛ばしていたのだとか。
「でも、叱ると彼はお坊ちゃんタイプから豹変して、私を睨み付けて本当に恐ろしい顔で“そんなこと言われたくないッ!”“お前には関係ないだろ!”と怒り出すのよ。すぐにヘソを曲げて、むくれて怒り出す。そうなると2、3ヵ月も口を利いてくれないことなんてザラにありました」
 そんな坂本とエリママに大きな転機が訪れる。

★1億円でポルシェビルに★

08年、ママが六本木の店を辞め、銀座8丁目のポルシェビル2階に「ピノ」というクラブを開業するのだ。出資者は坂本だった。
「元々入っていた店が潰れて、居抜きでオープンすることになったの。私のお客で、大阪に本社があるフランチャイズのたこ焼き屋を経営している男がいてね。そのつてで話が来たの」
 ポルシェビルと言えば、眩しいスポーツカーがショールームに鎮座する銀座の名物ビル。「グレ」「サードフロア」「O(オー)」といった超高級クラブが軒を連ね、政治家や財界人、芸能人が足繁く通う一等地だ。
“私は月給を貰うだけで、経営には一切タッチしていない”というママに代わって、某銀座通が解説する。
「開店は08年11月。30坪ほどで、女の子は20~30人いました。開店する際の保証金は約6000万円、内装やスタッフの支度金などで約4000万円、計1億円かかったと聞いています」
 もちろん坂本も店に頻繁に顔を出した。ママ日く、
「彼はまったくオーナー然とするところがありませんでした。お客として席に座り、店の女の子と話すだけ。要は“突っ込める”女の子を物色していただけで、店の運営に口を挟んでくることはありませんでした」
 あくまでも、“たこ焼き屋”とその知人が店を運営していたという。
「彼からすれば、自分好みの女の子を自由に選べる拠点が欲しかっただけで、クラブ経営をして儲けようとか、そういうことは頭になかったみたいね」
 店のホームページには、坂本の趣味か、銀座のホステスらしからぬメイクの若い女性たちがズラリ並んでいた。
「開店当初は“たこ焼き屋”の人脈や前の店の常連で賑わっていたけど、銀座も不景気だし、私も銀座に不慣れだったのよ。だから、開店して1年くらい経つと赤字になってしまったの」
 先の銀座通によると、毎月平均500万円の赤字が出ていたとか。
「けれど、坂本はそんなことはお構いなしで、社貝旅行と称して「ワイに行くことを楽しみにしていたわ」
 坂本は、「ピノ」があった22ヵ月間に、約1週間のハワイ旅行を6回も敢行元Jリーガーのラモス瑠偉氏が加わる大名旅行になったこともあった。
 ラモス氏が坂本と知り合ったのは08年頃。六本木の店でエリママに紹介されたのがきっかけだった。
「長野のお金持ちの社長さんがいて自分のファンだという。野球だと松井秀喜が好きで、わざわざニューヨークに2度観戦に行くくらいの大ファン。物凄いお金持ちだけど、偉ぶらず、礼儀正しくいい人だってね」
 とラモス氏が明かす。
「それからは毎月I回くらいのペースで、僕がプロデュースするプラジル料理店とか、焼肉屋さんで食事をした。その都度、お金は全部、社長(=坂本)が持ってくれました。僕が辛い物好きだと覚えてくれていて、わざわざ旅先の韓国からキムチや韓国海苔、辛いカップ麺などを何箱も段ボールの箱に詰めて送ってくれたこともあった」
 ラモス氏は9月までビーチサッカー日本代表監督を務めていた。
「09年、チームがW杯ベスト8に入った時、社長から“お祝いをしましょう”と言われて、僕の店でパーティーをすることになった。でも選手は十数人、沖縄に2人、九州にI人と全国各地に散らばっている。けれど、社長は全員分の交通費まで負担してくれると。お店の貸切料金も20万円くらいかかったかな。そんな無茶なことしなくていい、と何度も断ったんだけどね」
 事件発覚後、ラモス氏は今は亡き妻に“これからは交際相手のことをちゃんと調べないと”と注意された。
「ハートでの付き合いを心掛けてきたのに悲しいです。でも、そもそもどうやって調べればいいのか……」

★王族級の寿司パーティー★

 話をハワイに戻そう。
“たこ焼き屋”とその知人、店の女の子5~6人の計10人程度を引き連れ、宿は1泊4万5000円の有名ホテル「ハレクラニ」。
 エリママが振り返る。
「坂本はゴルフとか海水浴とかショッピングには興味がなくて、朝食をとると、ホテルのプールサイドで一日中、女の子たちと日焼けをしながらのんびりするだけ。メインは夜の7時頃からみんなで食事をして遊ぶというスタイルだったわ。坂本は悪趣味で、久兵衛の社長と若社長を呼び、寿司がなくて、朝食をとると、ホテルのプールサイドで一日中、女の子たちと日焼けをしながらのんびりするだけ。メインは夜の7時頃からみんなで食事をして遊ぶというスタイルだったわ。坂本は悪趣味で、久兵衛の社長と若社長を呼び、寿司職人をハワイまで同行させ“寿司パーティー”開いたこともありました。なんでも久兵衛には、サウジアラビアとかアラブの王族に呼ばれて海外へ出張に行く職員さんのチームみたいなものがあるらしいの」
「久兵衛」といえば、安倍首相の“クールジャパン”政策の一環で海外随行団に同行することもある、銀座いや日本を代表する寿司屋だ。
「坂本さんとは、お客さんと店という関係でしかない。来店は月に2、3回で、支払いは現金だった。うちはマイルの特約店だからカード支払いが多いんだけどね」
 とは久兵衛の社長氏。
「私や息子は(客として)『ピノ』に行ったことは一度もないよ。店のI周年のときに、そこで寿司を握ったことはあるけど。ハワイも頼まれて行った“出張”なんだ。必要経費約100万円以外は貰っていません。
 冷凍マグロやウニなどをスーツケースに入れて日本から持って行きました。我々が滞在していたのは貸し別荘のようなところで、坂本さんが1ヵ月単位で借りていたようです。ご本人たちはホテルに泊まっていましたが。プールがあって、そばにせり出す形のオープンエアーのダイニングキッチン。我々が握ったのは2回で、皆さんはプールサイドにテーブルを置いて食事をされていました」
 そんな絵に描いたような優雅な光景も終焉を迎える。
「開店から1年半、お客さんがつきはじめ、経営も上向きかけた10年8月、坂本が急に“お店をやめたい”と言い出したの」
 と再びママ。
「理由はわかりませんが、坂本がそう言うなら仕方がないし、私もこれを機にスポンサーが替わってもいいかなと思ったのよね。それで“たこ焼き屋”に頼んで新しいスポンサーを見つけてもらった。これで『ピノ』も何とかやっていけると思った矢先……」
 9月、事件が発覚。同時に坂本は音信不通となった。
「“たこ焼き屋”と私はもうびっくりしてね。坂本がこんな大それたことをしていたと、知らなかったとはいえ、このままお店を続けていては、私たちまであらぬ疑いをかけられるかもしれないし、いろいろな人に迷惑がかかる。そう思って泣く泣く『ピノ』を閉店することにしたのです」
 一方、坂本はタイに逃亡。
「バンコクの風俗街・パッポン通りで彼をよく見かけました。いつも現地の若い女の子と一緒でした」
 と、バンコク在住のジャーナリストは明かす。
「“カラオケ”と呼ばれる女の子をお持ち帰りできる店や、日本で言うソープに出入りして女に貢いでいました」
 坂本は家賃を払うために、元交際相手のタイ人女性に無心。その彼女が警察に夕レ込んで御用となった。
「もう、何をそんなに生き急いでいるんだろうと思うくらいのお金の使い方をしていた。末期ガンかなにかで、死ぬことを悟っているのかなと。そんな妙なお金の使い方でした」
 と、遠い日でエリママが深くため息をつく。
「でも、要は人様のお金でとんでもないことをしていたわけね。本当にびっくり」
 地方の高卒事務員に訪れた黄金のごとく輝ける日々。だが、その落日はあまりに哀しく滑稽なものだった。
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