市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

13年前の51億円横領事件、知られざる発覚前夜(その1)

2008-08-17 18:02:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
<平成7年3月の出来事>

■平成7年5月18日に安中市土地開発公社内部で密かに発覚した史上空前の巨額横領詐欺事件。安中市民がそのことを知ったのは同年6月3日朝の新聞記事でした。あれから13年が経過しようとしています。この間、当会はあらゆる手段で真相解明に向けて情報収集と分析作業を続けてきました。そして今後とも引き続き真相解明の努力を続けて行きます。そのためには、13年前にいったいなにが起きたのか。その事実を知ることから、すべては始まる、と考えています。時計の針を13年前に戻してタイムスリップ。まずは平成7年3月から。

▼2月下旬か3月初め
 群馬銀行安中支店の清水次長が、それまで噂程度の情報として承知していた「信越線の安中駅と磯部駅の中間に新しい駅を県と市の合同で建設する」ことに関して、タゴから県と合意できたことを聞いた。
 上毛新聞2月5日にこの計画が載った。この直後、Sはタゴに「新駅南地区開発のことが新聞にでましたがどうですか」と聞いた。タゴはSに「この計画の代替用地を一部取得することになった。資金を借りることになる。金額は正式に決定していなので判らない。市長選の争点になるだろうし、反対運動もあるので、この用地取得は市長の特命でやっている」と返事をした。

▼3月9日(木)か、それ以前
 3月末の融資の具体的な下話がタゴから群銀(群馬銀行)にあった。群銀はいつものように午前中来たタゴを、いつも通り応接室に通してSが応対した。このときSはタゴに年度内に残っている事業計画のことをきいた。なぜなら群銀では3月中に貸出金残高予想報告書を5日、中旬、25日の3回に分けて本部に報告する事になっており、残る平成6年度内に貸し出しがあるかどうか確認しなければならなかった。

▼3月9日(木)
 タゴが午前10時54分に正規口座から2万1400円、特別会計口座から1521万6300円を現金で引き出した。

▼3月20日(月)
 タゴが午前中に群銀安中支店を訪れた。群銀SとTが応対した。タゴは店のフロアから応接室に入り、席に着くと世間話をした。Sはタゴが前からゴルフ好きなのを知っており、過去2回ゴルフに招待したことがあった。
 そこでSが「今度26日の日曜日にゴルフに行きませんか」と誘うと、タゴは「その日はもう市長とゴルフに行く約束になっているから」と断った。群銀Sがタゴを誘ったのは融資契約をしてくれる上客だからだった。そのうちタゴが、「前に話した信越線新駅南地区の開発事業に資金を借りたい。予定金額は2億5千万円位。他の金融機関もかなり金利が下がっているので、群銀も検討して下さい」と言った。Sは「判りました。本店と協議して一両日中に回答しますから」と伝えた。
 このとき、タゴは利息計算を取りに安中支店を訪れた。これはTが作成した公社利息明細という手書きの書面の写しで、今まで群銀から公社への融資に関して、貸出日、現在残高、レート(金利)、利息額を一覧表にしたもの。この表の作成は平成6年9月の決算期にタゴから『前任者にも作ってもらったので』と依頼されていた。Tが作成後、幾日もたたないうちにタゴが来て応接室で渡した。Tが、赤丸マーク分の返済期日が3月で、一覧表のすべての金利を払ってもらうこと等をタゴに伝えた。タゴは表を受け取り、支払方法等について「後で回答します」と言って帰った。
 なお、この時タゴは特別会計口座から1380万円を引き出して持ち帰った。
 タゴは安中支店に10分くらいいた。タゴが帰った後、Sは支店長の松井に報告後、電話で本店公務部に、『公社ヘの融資金額が2億5000万円くらいで長期貸付』と伝え、なるべく金利を安くするよう依頼した。これは群銀と県内の各土地開発公社との協定金利(長期プライムレート適用、この当時約4.7%)を破ることになるので、本店としては許可したくない事であり、本店は、「金利が下がっており、協定金利で交渉してもらいたい」と回答してきた。Sは「他行の金利も下がっていることから、何とか4%で承認してもらいたい」と公務部に頼み、ようやく了解を得た。
 公務郎の了解がでた後、Sはすぐに電話でタゴに「4%でお願いします」と伝えると、タゴもこれを了解した。Sはこれで群銀での融資が確実になったものと判断し、借り入れ申し込みを待った。

▼3月22日(水)
 タゴが公社で群銀Tからもらった利息計算書の写しをゴミ箱に捨てた。

▼3月23日(木)
 公社でタゴが竹田清孝と一緒に借り入れまたは契約延長に伴う起案文を作り、決裁を受けることになった。タゴとTKは隣り合って座っており、タゴの方から「変更は俺がやらあ。今回の借り入れはTKさん頼むよ」というふうな言い方で、TKに起案分を作る内容を振り分ける指示をした。
 この時、借り入れとして事業資金調達のため新幹線新安中駅北側南側駐車場用地購入資金等の利息返済のため961万2000円、中宿水口線、観梅公園用地購入資金等の利息返済のため436万2000円、古城団地内の宅地買収資金6588万円、さざんかタウン下磯部住宅団地の植栽工事費等3281万8000円があり、今までの借り入れ分の返済期日が来ているもののうちで、支払いができずに契約の延長が必要なものとして、群銀に12件、かんら信金(現・しののめ信金)に2件があった。
群銀分は、観梅公園園路用地取得費2件9092万2000円、同委託料3件2468万円、観梅公園・都市計画道(中宿・水口線)用地費・造成費・委託料の支払利息7件3345万5000円、合計1億4905万7000円。ただし実際にタゴが契約延長したのは4件。タゴがTKと一緒に作った起案分は単なるセレモニーだった。
 かんら信金分は、平成3年9月5日借り入れの5936万1000円と、同年10月31日借り入れの102万4000円、合計6038万5000円を平成12年3月31日まで先送りするもの。

▼3月24日(金)
 午前9時5分、公社の異動内示があり、区画整理係主査のMHが幹線対策課へ、タゴが教育委員会社会教育課へ、共に係長昇格となった旨、市幹部から公社の加部局長に連絡があった。K局長はその後本人に内示を伝えた。この時、既にタゴは100%近い確率で、異動になるだろうと思っていた。タゴの内示は、すぐに市役所内の群銀安中支店の派出所のTMから、S次長に連絡された。
 公社理事長がタゴとTKの作成した起案伺いを決裁した。これを受けて、タゴが961万2000円の正規の借入申込書を作成した。しかし、K局長は、この日理事長印を押印した記憶がなかった。タゴは2億5961万2000円の不正の借入申込書も作成した。
 午後1時30分に都市計画委員会の会議が予定されていたが、中止となった。

▼3月25日(土)又は26日(日)
 群銀安中支店長のMが、タゴが係長に昇進して安中市教育委員会に異動する事になったのを知り、タゴの自宅にワインの詰め合わせか何かを持って、お祝いに行った。

▼3月27日(月)
 タゴが午後、群銀を訪れ「融資の件だが、正式に公社の決裁がおりたので、2億5961万2000円の手続きを進めて下さい」と借入申込書を差し出した。借入申込書の利率は4.0%とあった(公社控は3.9%)。これは安中支店のS次長やM支店長が本店と交渉してタゴに通知していた数字と一致している。借入申込書の各七の項目「本件借入金額は安中市の当公社あて平成6年度借り入れ分の債務保証額の範囲内であるには、平成6年9月末の融資の際、公社負債総額を支店Kがタゴにきいたところ「秘密だから」と教えてもらえなかったため、Kはそれなら「負債の総額までもが債務保証の範囲内であることを申込書に明記してもらい、この理事長決裁を受けてもらうことで再確認してもらおう」と考え、その後タゴに申し入れて実行してもらっていた。
 タゴはこの時、「前に話した新安中駅南地区の開発の件です」と言って群銀に借入申込書を渡した。この内容は1枚の申込書に2億5961万2000円と436万2000円の二つの資金融資額が記されていた。タゴが「2億5961万2000円は用地取得費で436万2000円は事務費です」とS次長に説明した。Sは、この事務費は過去の借入金の利息返済の費用を含むさまざま経費と理解していた。
 S次長は異動内示後に支店に来たタゴに「昨年は自治大学に行って勉強して早速の昇任ですね。今回は本当におめでとうございます」とタゴが市職員から選択されて平成6年10月から12月まで自治大学に行き勉強してきたことを知っていたので、そのことを踏まえて挨拶した。
 タゴはSの言葉に対し返礼を言ってから「教育委員会に異動になったが、市長から『公社の仕事をすべて知り尽くしているので、タゴ君が抜けると大変だから、当分の間兼務をなさい』と言われたので、まだしばらくはよろしく」と言った。
 タゴが差し出した借入申込書は、S次長が受け取ってKに渡され、Kが理事長印や内容を確認して手続きを進めた。タゴは申込書を提出するとすぐ群銀をでた。タゴは10分くらいしか支店にいなかった。また、Kはタゴに金銭消費貸借契約書の未記入のもの2枚を群銀の茶色の封筒に入れて渡した。
 支店のKはタゴから受け取った借入申込書をもとに本店審査部に、この融資をしてよいか否かの決裁をとるため、貸出申込書を作成した。その際、貸出申込書に記載すべき回答として、K自身すでにタゴから聞いて承知していたが、念のためS次長に『公有地取得事業』の具体的な名称を聞いてみたところ『信越線新安中駅周辺区域取得』とSが答えた。KはS次長がタゴから直接聞いた事業名称を教えてくれたと判断し、申請書にそのまま記載した。
 なお、この日、タゴは10時18分にも正規口座から5600円、1万3500円の2件払い戻していた。

▼3月28日(火)
 午前、タゴは安中支店で合計4回分の融資契約の延長依頼手続きをした。これはそれまでの群銀からの33回の借入のうち、この3月末に期限の来るものの延長契約の話をするため、タゴが安中支店を訪れたもの。タゴは群銀に「4口分は期限を変更し、他の4口分は返済する」と言ったので、群銀はタゴに変更契約書の未記入のもの4枚を渡した(29日に渡したという供述もある)。
 また、この日タゴはXからどうしても金を貸してほしいと頼まれ、公社特別会計口座から1340万円を引き下ろし、群銀駐車場で待ちかまえていたXにそのうち1000万円を渡した。
 タゴはこの日午後、時間休3時間をとり早退した。

▼3月29日(水)
 タゴが午後0時30分頃、自分の机でレターケース内の金証(金銭消費貸借契約証書)用紙に金額2億5961万2000円を記入し、理事長印を押して偽造しクリアケースに入れる。
 この日は午前10時30分から11時50分まで、市役所第一委員会室で南地区代表委員会を開いた。この委員会は、安中南地区まちづくり推進委員会第4回代表委員会のことで、公社の区画整理係が担当している。K局長は昼休みに、南地区代表委員会で支給された弁当を自席で食べた。
 安中支店融資担当のKが貸出条件変更申請書という表題の今までしていた融資の期限の延長契約をしてよいか否かを本店審査部に上げる稟議書を作成した。このため貸出申請書(稟議書)の申請日を3月29日とした。本店への申請が29日になったのは、3月31日に返済期限の到来するこれまでの融資分のうち、どれを延長して、どれを返済してもらえるかについて、タゴから申し出が29日まで遅れたため。結局S次長は、8本返済期日が到来しているもののうち、4本を返済してもらうことにした。
 つまり、この日タゴは群銀に返済期日の変更を申し出た。安中支店のS次長は、変更契約証書をタゴに渡した場面は覚えていないと後日供述した。

▼3月30日(木)
 タゴが変更契約書6枚に偽造した金証を混ぜ、秘書課係長Yから市長公印を貰った。本来の金証は封筒に入れて、公社事務局のゴミ箱に捨てた。

▼3月31日(金)
タゴが午前10時8分に群銀安中支店で正規口座から16万7400円と1万2600円を払戻した。
何かの正規な経費の払戻しらしいが、S次長はこの時タゴに面会していない。
安中支店のKは、午後3時に支店表出入口のシャッターが閉まった後、イライラしながらタゴの来店を待っていた。午後3時30分頃タゴが訪れ裏口から支店に入った。
SとKがタゴを応接室に通し、タゴが次々とバッグから取り出す書類をKが受け取った(S次長はタゴが訪れた時、何かの用で席を外し、戻ったところタゴが来ていることを伝えられて応接室にあとから行ったという供述もある)。
額面2億5961万2000円の金証、額面436万2000円の金証、4枚の変更契約証書、正規通帳1冊、特別会計口座通帳1冊、払戻請求書3枚。Kはこれらを受け取ると融資後方事務担当のAに全て渡し、これらの印鑑照合等の作業をさせた。
Kはその間、預金入金票を何枚か用意して応接室に戻り、タゴに渡して「今回はどのように振り分けますか」と、公社で2つ持っている各口座への振り分け金額を尋ねた。
タゴは特別会計口座の通帳を示し「2億5000万円をこれに」もう一方の正規通帳を示し「961万2000円、436万2000円をこれに入れて下さい」と言った。
これら手続をKが進めて、終了後は支払い済みの融資契約の証書4枚、新規の融資の計算書2枚、変更契約の計算書4枚、支払い利息分の計算書33枚位、支払い済みの融資契約の計算書4枚をタゴに渡した。この時、16時1分に436万2000円、15時59分に2億5961万2000円の貸付金の処理がされた。
 融資金は、16時10分、正規口座に961万2000円と436万2000円、16時9分に特別会計口座に2億5000万円が入金された。さらに公社に対する融資金の元金と利息返済分として16時14分に正規口座から3674万8000円、16時15分に特別会計口座から8888万7241円、16時15分に正規口座から1935万7578円の合計1億4499万2819円が払い戻され、群銀が受領した。この合計額の中には、今回の融資の1口分の利息2万8450円と478円が含まれている。この金額を除けばKが作成してタゴに渡した手書きの一覧表と一致する。
 次に返済日になっても支払いできないものの期日を延ばす変更契約の分として、8574万9000円、4億97万3000円、1967万円、1971万3000円の合計5億2610万5000円があった。元金と利息分の返済には、今回の融資金額では間に合わない分が正規口座から払い戻されていた。この日安中市の収入役から公社の正規通帳に3783万2778円に合わない分が正規口座から払い戻されていた。この日安中市の収入役から公社の正規通帳に3783万2778円が振り込まれており、タゴはこれにより預金残高が増えているのを承知でこのような払戻をした。
 こうして特別会計口座から8888万7241円が返済のために払い戻されていたが、同時にこの口座に2億5000万円が振り込まれ、タゴのものになったのであった。

【ひらく会情報部・続く】

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