市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

フリマ中止を巡る未来塾側と安中市・岡田市長とのバトル・・・第3ラウンド(その4)

2009-08-02 05:45:00 | 安中フリマ中止騒動
■原告未来塾側も負けていません。4月8日付で「原告第2準備書面」「証拠説明書」「甲第38号証」を提出しました。
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【原告第2準備書面】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原 告  松 本 立 家 外1名
被 告  岡 田 義 弘 外1名
次回期日 平成21年4月16日(木)14時30分
第2準備書面
平成21年4月8日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
    原告ら訴訟代理人
       弁護士 山 下 敏 雅
       同   中 城 重 光
       同   釜 井 英 法
       同   登 坂 真 人
       同   寺 町 東 子
       同   後 藤 真紀子
       同   青 木 知 己
       同   吉 田 隆 宏
       同   大 伴 慎 吾
       同   船 崎 ま み
       同   寺 田 明 弘

目 次
第1 原告らの社会的評価の低下
1 社会的評価の低下
2 名誉感情の侵害
第2 真実性
1 「談話」冒頭部分(訴状12頁「第4」「1」「(1)」「イ」「①」)
(1)安中市からの回答日
(2)開催準備期間
2 意見交換会の開始
3 意見交換会開始直後,特に原告松本が怒鳴ったとの点(訴状12頁同②)
4 参加費徴収・募金・市民からの苦情指摘の点(訴状12頁同③)
(1)募金に関するやりとり
(2)「ここへ何回も来たんですから」との発言の不存在
(3)参加費の徴収についての被告らの認識
(4)「市民からの苦情や指摘」の具体的な主張立証の不存在
5 駐車場利用の件(訴状15頁同④)
(1)被告岡田の主張
(2)利用時間について
(3)高橋議員が申請書を提出したことはない
(4)「市民からの抗議や指摘」の具体的な主張立証の不存在
6 罵言雑言の伴(訴状15頁同⑦)
第3 真実相当性
1 「談話」の記載内容を裏付ける証拠の不存在
2 出席者への確認の懈怠
3 広報編集会議の不開催
4 市民からの苦情等について
第4 「言論の応酬」の免責の法理について
1 総論
2 言論の応酬の法理の趣旨及び最高裁判例
(1)言論の応酬の法理の趣旨
(2)最高裁判例
3 本件では言論の応酬の法理の適用の前提を欠いている
(1)「未来塾ニュース]は名誉毀損等に当たらない
(2)最高裁判例へのあてはめ
4 反論可能性を理由とする免責は認められない
第5 その他

 被告安中市及び被告岡田の各第1準備書面に対し,必要な限りで以下反論する。
    記
第1 原告らの社会的評価の低下
1 社会的評価の低下
 被告安中市は,本件「談話」(甲1の1)について原告らが問題としているのは「名誉感情」であって「社会的名誉」ではない,などと主張するが(被告安中市第工準備書面4頁),失当である。
 市長との対談において冒頭から「目を見て話をしろ」と怒鳴った,などとの記載を始めとして,あたかも原告らが私利私欲のためにフリーマーケットに関し不正な活動に従事し,また,話し合いに際しても不誠実な態度を示す者・団体であるかのように虚偽の事実を接示した。そして,原告らは安中市の地域活性化・自然保護等のために従事し,その活動を高く評価され,多くの賞を受賞している。「談話」の内容が,客観的に原告らの社会的評価を低下させる内容であることは,論ずるまでもなく明らかである。
2 名誉感情の侵害
 また,「談話」の内容が,原告松本の社会的評価のみならず名誉感情を侵害することも当然である。
 そして,名誉感情の侵害を理由に損害賠償請求が認容された例は枚挙に暇がない(名誉感情の侵害を理由に損害賠償請求を認容する判例として,最判平成14年9月24日「石に泳ぐ魚」事件,東京地判平成2年7月16日判例時報1380号116頁,名古屋地判平成6年9月26日判例時報1525号99頁他多数)。

第2 真実性
1 「談話」冒頭部分(訴状12頁「第4」「1」「(1)」「イ」「①」)
(1)安中市からの回答日
 「談話」(甲1の1)では,「3.安中市から回答した日:平成19年9月13日午前8時30分誠意を持って許可する旨回答した」と記載されている。しかし,安中市が原告らに対し開催を許可する旨連絡したのは,9月14日午前9時ころ,長澤建設部長からの原告松本に対する電話によってである。
 長澤建設部長が原告らに使用許可を伝えた等の報告を,長澤建設部長が被告岡田に対し同月13目午前9時45分にしたとの点(被告岡田第1準備書面26頁。なお,同頁には午前8時50分とも記載がある)は,否認する。
(2)開催準備期間
 ア 「談話」では,「4.フリーマーケット開催予定日」の項目に「市の回答から44日間もある」などと,あたかも,準備期間が十分にあり,フリーマーケット開催の断念が原告側の責任であるかのような記載がなされている。
 イ 訴状で述べたとおり,フリーマーケット開催の準備には,約3か月を要するものである(甲25)。
   意見交換会においても,原告らは,すでに開催までぎりぎりの状況であること,1週間でも結論を待つことは無理であることなどを述べ,また,被告らが今日結論を出すことは無理なのかとも尋ねている。被告ら答弁書6頁に記載されているような,原告らが「1週間以内に結論を出すよう求めた」事実はなく,この点被告安中市も,第1準備書面5頁以降において主張を事実上修正している。
 ウ 他方,意見交換会において,被告岡田も,使用許可に関する結論は1週間で出すことは無理と明言した。
   被告岡田は,本訴訟において,原告未来塾のメンバーである高橋議員の一般質問中,「できますよ,40日あれば,44日あれば」との発言(丙4:134頁)を根拠に,あたかも被告らが使用許可を出した時期はフリーマーケット開催準備との関係で十分であったかのように主張するが(第1準備書面30頁),失当である。
   高橋議員の発言は,「(被告らから)確かに3日後に返事を出しますからお待ちくださいと言われれば」と前置きをした上でのものである。 フリーマーケットは関係者も多数に及び,事前説明会なども行う必要がある。開催を断念するか否かの最終的な判断を行い,関係者に通知するのには,意見交換会の時点すでに限界に近い状態であった。そのような状況で,被告らより数日中に確実に回答が見込めたのであればともかく,被告岡田からは「結論を1週間で出すことは無理」と明言された以上,原告らは開催を断念し9月12日に関係者に通知せざるを得なかったのである。被告岡田は上記の高橋議員の発言を都合良く部分的に引用しているが,フリーマーケット開催断念の原因がむしろ被告岡田の言動にあったことは明らかである。
 エ (求釈明)
   被告らの主張によれば,被告らは9月10日夕刻の意見交換会後,9月13日の朝,原告らに対し開催許可の回答を行ったとのことである(ただし原告らは,回答が9月13日であった点は否認する)。
   この点に関し,意見交換会から開催許可の回答までの間,被告らにおいて,いつ・いかなる調査・協議を行ったのか明らか,具体的に明らかにされたい。また,それを裏付ける報告書・議事録等を提出されたい。
2 意見交換会の開始
 意見交換会の開始の遅れについて,名誉毀損との関係では主要事実ではないものの,念のため反論する。
 被告らは当初,意見交換会の開始の遅れの原因について,原告らが「フリーマーケットの運営について」と題する文書(甲22の1)の件を明確に議題にするようにと「1時間20分余りにわたって自己主張を展開し続けた」と述べたためと主張していた(被告ら答弁書4頁)。被告らは,「談話」の掲載・発行にとどまらず,本訴訟においてもなお,原告らが,被告らとの話し合いに際して不誠実な態度を示す者・団体であるかのように主張したのである。
 これに対し,原告らが,「当日県議会による現地視察今議会での決算委員会が行われたために遅れたもので,被告らが意見交換会開始直前に詫びた」旨反論するや否や,被告岡田は,意見交換会の開始の遅れは台風の対応があったためである旨主張を修正した(被告岡田第1準備書面8頁以降及び22頁以降)。
 このような主張の変遷自体からも,被告らがいかに一貫性を欠き,悪意に満ちた虚偽の主張を行っているかは明白である。
 なお,意見交換会開始直前,まず被告岡田が「どうも待たせてすいません」と発言し,その後,長澤建設部長が意見交換会開始の遅れを詫びた際に,雨の中現地視察に行っていた旨を説明した。原告らもこれに対し,「どうもどうも」「ご苦労様です」と労っている。
3 意見交換会開始直後,特に原告松本が怒鳴ったとの点(訴状12頁同②)
(1)被告岡田が「確認をさせていただきたい」と述べた事実(被告岡田第1準備書面24頁)はあるが,被告岡田の主張するようなタイミングでの発言ではない。これは,被告ら答弁書5頁10行目に記載されている。「これまでフリーマーケットを何回か開催してきたと思いますが・・・」と始まる被告岡田の挨拶の直前になされた発言である。
 被告らは,この発言について,「意見交換会の開始が遅れたことの説明を求めるため」などと主張する(被告ら答弁書5頁,被告岡田第1準備書面24頁)。しかし,上述した通り,意見交換会の開始が遅れた理由は開始直前に長澤建設部長が説明しており,被告らが原告らに対して説明を求める必要性などない。実際,「確認をさせていただきたい」と被告岡田が述べた後に意見交換会の開始が遅れたことに関するやりとりは一切なされていない。
(2)繰り返しになるが,原告松本が「目を見て話をしろ」と怒鳴った事実は一切存しない。また、■■■が大きな声で「そうでしょう」と総務部長,教育部長,建設部長の順に3回指さしたという事実(被告岡田答弁書25頁)も一切ない。
 実際には,意見交換会開始後約15分が経過した頃,原告松本が「市長さん,お話をしているのは私ですから,できれば私のほうに向いていただけると,お答えもしやすいんですが。」と指摘したところ,被告岡田が原告松本の発言に対して「重箱の隅」などとの表現を用いて返答したため,■■■が被告岡田に対し,「でも,話をするときは人の目を見たほうがいいと思いますよ。」と諌めたのである。
4 参加費徴収・募金・市民からの苦情指摘の点(訴状12頁同③)
(1)募金に関するやりとり
 「談話」では,地震の募金に関して,「阪神大震災は12年前ですよね。12年前のことを市民が指摘するのですかね・・・。」などと記載され,あたかも原告らが募金に関して不自然な説明を行ったかのように事実が摘示されている。
 しかし,訴状に記載した通り,「談話」には,募金活動に関する話し合いの内容自体全く歪曲されている。
 意見交換会では,最後は被告岡田が「地震に関する寄付はわかりました」と納得して終了しているのである。
 被告安中市も,被告岡田が「地震に関する寄付はわかりました」と(いう趣旨のことを)述べて募金に関するやりとりが終了した事実を認めている(被告安中市第1準備書面6頁)。
(2)「ここへ何回も来たんですから」との発言の不存在「談話]では,参加費及び募金に関するやりとりの記載の後に,市(被告岡田)の発言として,「未来塾のみなさんは昨年ここ(市長室)へ何回も来たんですから,フリーマーケットの内容の説明をされて市は聞いていれば市民から苦情や指摘があった時に即座に金額等は市は承知していますと答えられたんですよね。」などと記載されている。
 しかし,訴状で述べたとおり,被告岡田は意見交換会において「未来塾の皆さんは昨年ここ(市長室)へ何回も来たんですから」などと発言していない。
(3)参加費の徴収についての被告らの認識
 被告岡田は,意見交換会において,「2000円は徴収しているのですか」などと原告らに対して質問し,その旨「談話」にも記載した(なお,被告岡田第1準備書面40頁参照)。
 しかし,参加費の徴収については,出店者を募るためのチラシ(甲38)に明確に記載されており,毎回,新聞の折り込みチラシで安中市全戸に配布されてきた。そして原告らは過去数回,被告安中市に対しても,実施要領(甲25)と共に提出している(なお,2会場を使用するようになってから数回提出したが,その後,大きな変更がなければ提出は不要と被告安中市から告げられていた)。また,出店者に配布するパンフレット(甲7)にも,参加費の徴収については明確に記載されている。
 意見交換会において,原告未来塾の■■は被告らに対し,安中市全戸にチラシ(甲38)を毎回出しているのにもかかわらず2000円の徴収を知らなかった人がいるのかとの趣旨の質問をしているが,その場で「知らなかった」と述べたのは被告岡田のみであった。長澤建設部長は知っていた旨回答しており,被告岡田の家族や長澤建設部長の家族がフリーマーケットに参加していることも話し合いの中で触れられている。
(4)「市民からの苦情や指摘」の具体的な主張立証の不存在
 「談話」では,参加費や募金について「市民から苦情や指摘」があった旨記載されている。被告ら答弁書4頁にも同様の主張がなされている。
 しかしながら,いつ・どこで・誰が・どのように述べていたのかについて,原告らが釈明を求めても,結局被告らから具体的な回答・立証はない。
 被告らが「市民からの苦情・指摘」を具体的に主張立証できないことは,すなわち,そのような苦情・指摘そのものの存在自体疑わしいことを示している。実際,フリーマーケット会場の周辺住民からは,「迷惑はない」「もっとやってほしい」とフリーマーケット開催を望む声が多かった(甲3)。
5 駐車場利用の件(訴状15頁同④)
(1)被告岡田の主張
 被告岡田は,
 「 駐車場の利用については,同駐車場の使用は認めたが,中央駐車場は,認めていない,その理由は,土曜日,日曜日,祝祭日は,午前10時00分にスポーツセンター利用開始である」,
 「 スポーツセンター職員は…高橋市議に強い威圧を受けて反論もできず言われるがまま……ということが本当の内情であった」,
 「 この時間は,利用者のピークであり混雑や,苦情が市長に,向けられるのは容易に判断できる筈である」
などと主張し,その根拠として,フリーマーケットの参加者向けパンフレット(甲7)の5真にある,
 「 中央駐車場では駐車,荷降ろしをしないで下さい]
 「 体育館利用者用としての使用のため。また,中央駐車場を空けておくことがイベント広場使用,フリーマーケット開催の条件となっています」
との記載を挙げる(被告岡田第1準備書面2頁,7頁,及び33頁以降)。
(2)利用時間について
 しかし,同パンフレットを前真(4頁)からきちんと読めば容易に判明するとおり,上記記載は,午前6時から午前8時まで行われる受付・搬入に関する説明である。
 原告らと体育館との話し合いによって,午前10時以降はフリーマーケット利用者も駐車場への駐車が可能となっていたのであり,このことは意見交換会で原告らが被告らに対し説明している。長澤建設部長も,意見交換会の中で,運動する人は朝一番で来るため,午前10時以降は空いていれば駐車場をフリーマーケットで使用しても良いことになっていた,との趣旨の発言を行っている。
 そして,本件訴訟において,被告安中市も,駐車場の利用に関し,原告らが訴状15頁で記載した内容を説明した事実を認めている(被告安中市第1準備書面6真)。
 また,会場使用の日程調整に関して開催されている体育館利用者調整会議にも,原告未来塾関係者は出席している(たとえば平成19年3月開催の同会議には,原告未来塾の■■■、■■■、及び■■■が出席している)。
(3)高橋議員が申請書を提出したことはない
 また,被告岡田は,31回目のフリーマーケット開催までは高橋議員が申請書を持参して来て,今すぐ許可してくれと述べていた,などと主張するが(被告岡田第1準備書面16頁),高橋議員が申請書を持参して市役所に赴き提出したことは一度もなく,被告岡田の主張は全くの虚偽である。
 なお,高橋議員に関しては,被告岡田は,第1準備書面3頁でも,スポーツセンターイベント広場会場責任者が高橋議員であった,その強い威圧を受けて職員が反論できなかった,などとも主張しているが,スポーツセンターイベント広場の会場責任者は訴外■■■等であって,高橋議員が責任者となっていたことはなく,この点でも高橋議員に関する被告岡田の主張は全くの虚偽である。
(4)「市民からの抗議や苦情」の具体的な主張立証の不存在
 「談話」には,「スポーツセンター中央駐車場までフリーマーケットの駐車場にするとは市は何を考えて提供しているのだ・・・と市民から抗議や苦情が来て困っているのですよ」などと記載されているが,上述の参加費・募金に関するものと同様,その「市民からの抗議や苦情」については,被告らから結局具体的な主張・立証はない。
6 罵詈雑言の件(訴状15頁同⑦)
 被告らは,「談話」の「人に責められて人を責めず,罵られて罵らず」との記載について,「(意見交換会)終了後に(原告らから)罵られたことは事実である」と主張し(被告ら答弁書7頁),その具体的内容について,被告岡田は「それは大声で,ボランティアをやっているのに,出店料を徴収しているから,と言うことは市長のいいがかりだ……のことを言うな 北関東一のフリーマーケットだ,潰す気か これまで未来塾は300万円も寄付した 車椅子も・・・台も寄付しているんだぞ……と言い放ったのである」などと主張する(被告岡田第1準備書面27頁,35頁)。
 しかしながら,原告らが意見交換会終了時に上記のように発言した事実も,被告らを罵った事実も存しない。意見交換台が終わる頃,被告岡田の終始不誠実な態度に対し,原告らが説明責任を果たすべきである等の主張を述べたことはあるが,原告らの発言が「罵言雑言(=口を極めた悪口。小学館「大辞泉])」であるなどとは到底解し得ない。

第3 真実相当性
1 「談話」の記載内容を裏付ける証拠の不存在
(1)被告らは,意見交換会の議事録を一切作成していない。さらに,現時点において,被告岡田の「要点筆記]も,その他出席者の「メモ」(被告安中市第1準備書面5頁参照)も提出していない。
 「談話」の記載内容を裏付ける証拠がない以上,「談話」の記載内容が真実でないことはもとより,真実であると信ずるに足る相当の理由も存しないことは明らかである。
 原告が繰り返し主張しているとおり,「談話」の記事は真実に反し,また,恣意的にとりまとめられたものである。被告らは,意見交換会当時の議事録もメモも残さず,原告らへの確認もなさず,かような裏付けのない状況の下で,原告らの社会的評価を低下させる内容の記事を,全く安易に作成し配布したのである。
(2)被告安中市は,原告らに対し意見交換会の内容を裏付ける証拠の提出を求めるが(被告安中市第1準備書面5頁),まず被告らにおいて,意見交換会の内容を全て明らかにし,かつ,「談話」の記載内容の真実性を裏付ける証拠を全て提出するべきである。
 真実性・真実相当性の主張立証責任が,名誉毀損行為者の側,本件において被告らにあることは,確立した最高裁判例(昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁)である。
 被告安中市は,「意見交換会の真実が明らかとなった上で司法の判断を仰ぐことに些かの異論もない」とも述べるが,本件訴訟では,意見交換会における真実がどのようであったか(真実性)のみが明らかになれば足りるのではない。被告らが,「談話」にした掲載した内容を,何の根拠をもって真実と信じ掲載したのか(真実相当性)が,同様に重要なのである。原告らとしても,訴訟を徒に長期化させる意図は毛頭ない。しかしながら,まずは被告らより抗弁事実の主張・立証(具体的には,意見交換会でのやりとりを全て具体的に主張・立証すること)を行うべきであり,原告らは,被告らの主張立証の後に迅速な訴訟進行に資するよう,必要に応じて早期に反論・反証を行う予定である。
2 出席者への確認の懈怠
 意見交換会は,被告岡田のみならず,被告安中市職員が他に3名も同席していた。被告らは,「談話」の発行よりも前に,その記載内容が事実に反しているか否かを確認したうえ,不掲載とする,あるいは適切に修正する,ということが容易に可能であったにもかかわらず,これを怠った。
 被告岡田は,「談話」の記事について,総務部長,建設部長,及び教育部長に対して内容を確認するよう求め,同人らから訂正は―切なかったと主張する(被告岡田第1準備書面37頁)。この点に関し,被告安中市は「被告岡田の釈明事項である」などとして原告らからの求釈明に回答しておらず,真実そのような確認が行われたのか否か極めて疑わしい(原告らは被告安中市に対し,「おしらせ版あんなか」の編集・発行・配布・掲載に関する責任についても問うているのであるから,明確に回答すべきである)。
 また,部長らに対し確認がなされたのであれば,被告安中市自身,意見交換会において,被告岡田が「地震に関する寄付はわかりました」と(いう趣旨のことを)述べて募金に関するやりとりが終了した事実や,駐車場利用に関する原告らの主張を認めているのであるから(被告安中市第1準備書面6頁),なおのこと「談話」の記事を不掲載とするか,あるいは修正するなどの対応をとるべきであった。
 さらに原告らに対し事前確認を求めることも可能であったのに これも行っていない。
 いずれにしても,被告らが意見交換会出席者への確認を怠ったまま「談話」を発行したことは明らかであり,この点からも真実相当性は認められない。
3 広報編集会議の不開催
 また,「談話」を掲載するにあたり,「広報編集会議」(安中市広報紙発行規則第9条,甲34)は開催されなかった(被告安中市第1準備書面7頁)。
 規則上,同会議は「必要があるとき」に開催され,「原稿について取捨選択又は適宜修正することができる」とされているところ,被告岡田による「談話」は本件以前に1度しか掲載されたことのない不定期なもので,かつ,本件「談話」が原告らの社会的評価を低下させる内容のものであることはその記載内容から明らかだったのであるから,まさしく広報編集会議を開催する「必要がある」場面であり,同会議において「談話」の名誉毀損該当性・真実性等を十分に検討したうえ「取捨選択又は適宜修正する」対応をとるべきであった。
 ところが,被告安中市は広報編集会議を開催しておらず,開催すべきか否か検討した形跡も皆無である。この点からも,真実相当性は全く認められない。
4 市民からの苦情等について
 上記「第2」「4」「(4)」でも触れた参加費や募金に関する「市民から(の)苦情や指摘」について,被告安中市は,「米山公園前の市営住宅の住民については,人を特定できるが,本人のプライバシー保護のため,明らかにすることはできない」などと述べているが(被告安中市第1準備書面6頁),理由とならない。
 公権力のありように切り込むような報道機関が行為主体となる名誉毀損事案で,いわゆる「取材源の秘匿」が問題となる場合でさえ,取材源にかかる証言拒絶自体が認められても,取村源を秘匿することによる真実相当性の立証についての不利益は免れないとされている(東京地裁平成6年7月27日判決・判例時報1533号71頁同旨)。
 まして,本件における行為主体は,報道機関ではなく,むしろ公権力を有する市長及び公共団体である。被告らが「市民からの苦情・指摘」を具体的に主張立証できないことは,それがたとえ「本人のプライバシー保護」を理由とするものであっても,原告らの不利益のもとに被告らの真実相当性の主張立証の不十分さを補うものとは到底なり得ない。

第4 「言論の応酬」の免責の法理について
1 総論
 被告安中市は,「言論の応酬]の免責の法理による違法性阻却を抗弁として主張するが(被告安中市第1準備書面3頁),全く失当である。
2 言論の応酬の法理の趣旨及び最高裁判例
(1)言論の応酬の法理の趣旨
 言論の応酬の免責の法理は,当該表現行為が名誉毀損行為である場合でも,それに先行して相手方が表現考に対して名誉毀損行為等の権利侵害行為を行っている場合に,これに対抗する名誉毀損行為が,正当防衛(民法720条)の場面以外であっても(すなわち急迫性のない場合であっても),免責の余地がありうる,とする理論である。すなわち,先行して相手方からの名誉毀損行為等の権利侵害行為が存在することが前提となる。
(2)最高裁判例
 最高裁昭和38年4月16目判決・民巣17巻3号476頁は,言論の応酬の法理と同様の判示として「自己の正当な利益を擁護するためやむをえず他人の名誉,信用を毀損するがごとき言勤をなすも,かかる行為はその他人が行った言動に対比して,その方法,内容において適当と認められる限度をこえないかぎり違法性を訣く」としている。
3 本件では言論の応酬の法理の適用の前提を欠いている
(1)「未来塾ニュース」は名誉毀損等に当たらない
 本件で原告未来塾が発行した「未来塾ニュース」(乙10)裏面におけるフリーマーケット開催断念に至る経過や意見交換会の内容に関する記事は,いかなる者の名誉も毀損せず,権利も侵害していない。記事内容は事実に反しておらず,公共の利害に関するもので,専ら公益を図る目的で作成されたものである。先行する原告らからの名誉毀損等権利侵害行為自体が存しない以上,被告らの「談話」による名誉毀損行為の違法性は阻却され得ない。
 ア この点被告安中市は,「ボランテァ」との誤記を原告らがその通りに引用した点について「悪意が感じられる」などと主張するが,むしろ原告らは真実に合致するよう正確に引用したのであって,この点をもって非難される謂われなどない。
 イ 被告岡田は,会場の使用許可申請が「不受理」となった旨の「未来塾ニュース」の記載に関し,「不受理とされましたの記述は明らかに事実に反する」と記された丙6号証(ただし作成日・作成者等は現在のところ不明)を提出している。
 しかし,原告らの許可申請が被告らによって受理されなかったことは事実である。
 安中市は,意見交換会の中で,原告未来塾の■■■■■が,被告安中市担当者から「今日の段階では,使用許可が出せないので,申請書をお預かりするか,お持ち帰りください」と言われたという趣旨の発言をしており,持ち帰らずに預けることができたなどと主張する(被告安中市第1準備書面3頁)。しかし,■■■■■は意見交換会の中で,「通常であれば原告らが申請書を持って行くと安中市から記入・押印されたものを切り取って渡されるのに今回に限っては上から保留にしなさいと言われているので渡せない,保留したとしても結論がいつになるのかわからないと言われたので持ち帰った」旨を,併せて明確に説明している。
 かような経過で■■■■■が申請書を持ち帰らざるを得なかったことを,「不受理」と表現することは,むしろ実態に即している。
 なお,被告安中市は,意見交換会における■■■■■の上記発言を,「お預かりするか,お持ち帰り下さい」との詳細な部分にまで具体的に主張しているにもかかわらず,意見交換会におけるその余のやりとりについて,そのほとんどを明らかにしておらず,それ自体極めて不自然である。上記「第3」「1」]「(2)」に記載した通り,意見交換会におけるやりとりを,同様に,被告らにおいて全て具体的に主張立証すべきである。
(2)最高裁判例へのあてはめ
 ア 上記最高裁の規範によっても,被告らが「自己の正当な権利を擁護するためやむをえず」談話を掲載したとは到底解し得ない。
   被告岡田は,「談話」発行の理由について,「未来塾関係者との話し合いの内容など公表したくないと考えていたのであるが…未来塾の一方的な報道では理解ができないので当然,広報等で知らせるべきだ…との声が寄せられたのである」などと主張し,その根拠として丙1号証(ただし作成者は不詳)を挙げる(被告岡田第1準備書面10頁)。
   しかし,丙1号証に記載されている市民の声は,いずれも,フリーマーケットの開催を望む内容のものであり,被告岡田の言うような,「未来塾の一方的な報道では理解ができない」などとの声は一切記されていない。
   また,丙1号証には市民の声として「市の考えを説明してもらいたい」「市の考え方を聞きたい」と記載されているが,被告らが「談話」に掲載したのは,市(ないし被告岡田)の考えではなく,意見交換会の内容の報告(しかも虚偽・歪曲のあるもの)であった。そして,被告岡田は,意見交換会において,「ボランティアならば無償でやるべきとの市民の指摘がある」「露天商組合というものと同じじやないかという指摘がある」などと,「市民からの指摘がある」との主張を繰り返すだけで,被告岡田自身や被告安中市自身の見解・考えを原告らに対し明確に述べず議論をはぐらかせ続けていたのである。
 イ また,表現行為の方法・内容の点においても,原告らが「未来塾ニュース」でいかなる名誉毀損行為・権利侵害行為も行っていないのに対して,被告らは,市の財政を用いて市内全戸に配布する市の広報物に事前に原告らに確認もせず,「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」などの記載を始めとして事実関係を歪め一方的な見解に基づく内容を記載し,原告らの社会的評価を貶めたのである。被告らの名誉毀損行為は,その方法,内容において著しく限度を超えすいることは明らかである。
 ウ したがって,最高裁判例の規範によっても,被告らの名誉毀損行為の違法性は阻却され得ない。
4 反論可能性を理由とする免責は認められない
 被告安中市は,「原告未来塾においても機関紙未来塾ニュースで,さらに本件『談話』に対する反論を行うことができるため,『対抗言論の理論』として許される範囲内のものである」などとも主張するが(被告安中市第1準備書面4頁),これとて失当である。
 上記最高裁判決は,すでに名誉毀損行為が先行している場合に反論としての表現行為の違法性が阻却されるか否かの問題であり,反論可能性を理由とする違法性阻却を論じたものではない。
 相手方による将来の反論可能性が,既になされた表現行為による名誉毀損の成否に影響を与えないことは,論ずるまでもなく明白である。東京高裁平成13年9月5日判決・判例時報1786号80頁も同様に判示している。
 ましてや,本件は,被告らの表現行為は,市の財政を用いて,市長が記事を作成して市の広報に掲載し市内全戸に配布したのである。これと,一任意団体である原告未来塾,一市民である原告松本の表現行為とを同列に並べ,「反論可能性があるから被告らの名誉毀損行為に違法性がない」などと主張することは,到底認められない。

第5 その他
 その他については,原告らの平成21年3月17目付け求釈明に対する被告岡田からの回答,及び,被告岡田からの「要点筆記」の提出があった後に適宜反論する。 以上

【証拠説明書】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1ネ
被告 岡田義弘 外1ネ
証拠説明書
平成21年4月8日
前橋地方裁判所高崎支部合議2孫 御中
    原告ら訴訟代理人 弁護士 山下敏雅
号証/標目/作成年月日/作成者/立証趣旨
甲38/チラシ・写し/平成18年6月ころ/原告未来塾/全戸に配布され,また被告安中市にも提出されている出店者を募集するチラシに,参加費の徴収について明確に記載されていること
**********

■こうして、第4回口頭弁論は平成21年4月16日(木)午後2時30分から前橋地裁高崎支部準備手続兼で開催されました。この口頭弁論を傍聴した市役所の職員の復命書によると、法廷での模様は次のとおりでした。

**********
【回議用紙】
年度 平成21年度
文書番号  第1896号
受付年月日 平成21年4月16日
起案年月日 平成21年4月16日
決裁年月日 平成21年4月22日
起案者  総務部秘言行放課広報広聴係 職名 係長 氏名 反町勇 内線(1014)
決裁区分 市長
印欄   市長・岡田 部長・鳥越 課長・佐俣 係長・反町 係・遠間 公印・-
関係部課合議 建設部長・大沢、都市整備課長・高橋、教育部長・本田、体育部長・嶋崎
課内供覧 文書法規係長
件 名 復命書(損害賠償等請求事件の弁論準備手続-4月16日-)
 地域づくり団体未来塾の市に対する損害賠償請求の訴えについて、下記のとおり弁論準備手続きが行われ、出席しましたので復命します。
1.日時 平成21年4月16日(本)午後2時30分
2.場所 前橋地方裁判所高綺支部準備手続兼和解室(2階)
3.事件番号 平成20年(ワ)第492号
4.裁判官等 裁判官 亀村恵子
5.当事者 (原告)地域づくり団体未来塾 代表松本立家、訴訟代理人 弁護士山下敏雅
      (被告)岡田義弘、安中市指定代理人 鳥越一成、吉田 隆、反町 勇
6.概要 提出した証拠説明書に訂正がある旨岡田市長より申し出があり次回までに提出することとなった。そのほかにも釈明等があれば次回口頭弁論までにまとめて準備書面にて提出することとなり、被告安中市も広報およびホームページヘの掲載方法について準備書面にて提出することとなった。準備書面提出期限は、5月15日(金)、次回口頭弁論の日程は、5月22日(金)午後4時と決まった。
**********

■このように、岡田市長個人から、お知らせ版に載せた「談話」の元になった詳細なメモの存在が明らかになりましたが、4月16日(木)の第4回口頭弁論で、さっそく岡田市長個人から裁判長に訂正の申し出がなされ、内容の信憑性について早くも揺らぎ始めたようです。また、安中市からも、次回第5回口頭弁論の行われる5月22日に向けて、準備書面を提出するよう裁判長から訴訟指揮があり、両者のバトルは、第4ラウンドに突入することになったのです。

【ひらく会情報部・この項おわり】
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