かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

☆ 一週遅れの、ボージョレー・ヌーヴォー

2006-11-24 18:13:59 | ワイン/酒/グルメ
 ボージョレー・ヌーヴォーは、11月の第3木曜日に、全世界一斉に解禁される。
先週の11月16日(木)は、ボージョレー・ヌーヴォーの解禁日だった。僕は、ことさらクリスマスだのバレンタインだのといった商戦に乗っかり浮かれるのに関心はないのだが、今年は、この日ぐらいはボージョレーを飲んでみようと思った。
 と言うのも、ボージョレー・ヌーヴォーはワインにしては例外的な、賞味期限のある(ちゃんとあるのではない)命の短いワインなのだ。解禁日でなくとも11月いっぱいぐらい、遅くとも年内に飲んだ方がいいとされている。
 
 この国に、そのボージョレー・ヌーヴォーを流行らしめた「ジョルジュ・デュブッフ」の社長が、テレビで、今年のヌーヴォーは美味しいとPRしながら、こんな言葉をちらと漏らした。
 「ボルドーやブルゴーニュは知識がいるが、これはいらないですし…」と。
 それを聞いいて、僕は苦笑した。日本人にはボルドーやブルゴーニュの複雑な味と質の違いを知るには、まだ十分ではないと思うが、ボージョレー・ヌーヴォーは、そう質に違いもないし、味も初心者にはこれで充分です、と言っているようなものだったからだ。

 解禁の夜、新宿に出た。
 まず、結構置いてある酒が充実している伊勢丹の地下一階の売り場に行く。試飲会をやっているが、人もあまり多くなく活気がない。試飲の際、「車ではないですね」と念を押しているのは、今問題になっている飲酒運転を懸念してのことか。
 ボージョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーの「ドメーヌ・デュ・セロワール」と「ラウル・クラージュ」を一口飲んで、フレンチ・レストランを求めて外へ出た。
 もともと新宿にフレンチ・レストランは少ないのだが、やっと見つけたそこは予約でいっぱいだった。やはり、この日のフレンチはカップルでいっぱいかと諦めて、知っているイタリアン・レストランに入った。心なしかひっそりとしていて、席も空いている。
 こんな日にイタリアンに来るのは、男同士か、ワインに特別関心がない者か、よほどイタリアンが好きなのか、フレンチにあぶれてイタリアンに流れたのだろうと考えた。
 席に着き、この日だからもしかしてと思い、「今日はボージョレー・ヌーヴォーを置いてありますか」と訊いてみた。すると、ウェイターは表情も変えずに「うちはイタリア・ワインしか置いてありません」と言った。その心意気や、よしである。

 ということで、昨日、社会人(元出版社)としても人生においても大先輩の三人と宴をくんだ。
僕は、ボージョレー・ヌーヴォーの「ブシャール・エネ・エ・フィス」を持っていった。大して高くない。とりあえず、先週飲みそこねた今年のヌーヴォーを飲んでおきたかったにすぎない。味に言及するのはやめておこう。

 先輩の一人が、「僕もこのワインを持ってきたよ」とおもむろに差し出した。
それは、玉村豊男氏が造ったワインだった。フランスと料理に造詣が深い玉村氏の本を、かつて元いた会社で出版したことがあった。現在は画家にもなった玉村氏は、長野でワイン造りをしている。
 玉村氏のワインを飲むのは初めてである。
 シャルドネの白で、「VILLA D`EST VI GNERONS RESERVE CHARDONNAY 2004」と銘打ってある。それに、ラベルには、エッチングにあるように製品番号が肉書きしてあった。製造本数は、574本であることが分かる。
 これも、味に言及するのはやめることにしよう。
そ れにしても、好きなワインを自力で造る、それは素晴らしくも羨ましいことである。それは、生き方にも通じる。

 ボルドーやブルゴーニュは一日にしてならず、である。

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