かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

ミシュランの☆佐賀探索① 「ミシュランガイド福岡・佐賀版」

2014-10-14 01:12:16 | ワイン/酒/グルメ
 日本でというより、アジアで初の「ミシュランガイド」の東京版が発行されたのは、2007年の12月だった。もう7年も前のことだ。
 私はすぐに近くの書店に行った。多摩市でも、どこの書店でも店頭に積んでいたが、その日のうちに完売だった。当時はちょっとしたニュースだった。
 当初東京版の発表を聞いたとき、意外な星の多さに驚いた。東京版は、何と三つ星は8軒、二つ星が25軒、一つ星が117軒であった。星付き店が150軒、星の数191個というのは世界最多であった。
本場パリですら三つ星は10軒である。そして、二つ星が13軒、一つ星が42軒で、星付き店、星の数は東京の半分以下である(2009年時)。
 しかも、予想に反して和食や鮨店が数多く含まれていた。あのグルメで気位の高いフランス人が、東洋の街に星を乱発したのは、日本食に新鮮な感覚と好奇心を持ち始めたからだろうと推測した。

 もともと、魚を生で食べる習慣のない西洋人にとって、刺身は生の魚を切って並べてあるだけだし、鮨は切った魚を米(飯)にのせるだけの、料理とはいえない野蛮な食習慣だと心の奥では思っていたであろう。
 実際、幕末の欧米使節団がロンドンに着いた時のことである。使節団の一行が日本食が恋しくなって、生魚を手に入れて切り刻んで、日本から持って来ていた醤油で刺身にして、しばしば食べていた。それを記者に目撃され、日本人は生魚を常食していると当地の新聞に書かれている。
 ところが近年、どうも生で食べても安全のようだし、意外と美味いじゃないか、と西洋人も思い始めたのだ。一部の日本びいきの人から始まって、やがて健康志向の意識と相まって和食は徐々に西洋人にも広まった。
 「ミシュランガイド」の東京版発売は、稀な西洋人の間で、食のジャポニズムが進んだ結果だと思う。油絵の西洋の世界に、版画の浮世絵が入ったときに新鮮だったように、いち早く鮨や刺身を食した西洋人は、少し変人と思われつつ粋人を気取っていたに違いない。
 美味という観点では、和食に対する価値基準が確立できていないまま、「ミシュランガイド」日本版刊行は決行され、日本人の食通(と思われている人)の意見を参考にして星を付けたのだろうと推測する。

 「ミシュラン、星☆の謎」――ブログ2007.11.23
 http://blog.goo.ne.jp/ocadeau3/e/48a4d5731bda9c8eaae38e3c5cd2eea5

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 今年(2014)年7月10日、東京、関西、北海道、広島に続き5地域目となる「ミシュランガイド福岡・佐賀2014特別版」が発売された。
 その日、多摩市の丸善、啓文堂の大型書店に行ったが、そのどちらも入荷されていなかった。やむをえず注文することになった。

 ガイドには489(うち佐賀県は121)の飲食店、旅館、ホテルが掲載され、星を獲得したのはこのうち57店(福岡45店、佐賀12店)だった。
 最高ランクの三つ星を獲得した店は福岡県内の2店だけである。
 ☆☆☆ すし、「行天」(福岡市中央区)。日本料理、「嵯峨野」(同市博多区)。

 二つ星は両県で12店で、佐賀県内からは3店である。
 ☆☆ ◇佐賀県 日本料理、「飴源」(唐津市)、同「楊柳亭」(佐賀市)。すし、「鮨処つく田」(唐津市)。
 ◇福岡県 ふぐ料理、「油山山荘(旅館)」(福岡市城南区)、同「い津み」(同市博多区)。日本料理、「ゑびす堂」(同)。すし、「鮨 安吉」(同)、同「近松」(同市中央区)。天ぷら、「天孝」(同)。日本料理、「とき宗」(同)、同「中伴」(同)。すし、「二鶴」(北九州市小倉北区)。

 一つ星は43店で、佐賀県内からは9店である。市町名記載なしは佐賀市。
 ☆ 日本料理、「酒菜志波」、同「八百和」(有田町)。すし、「銀すし」(唐津市)、同「鮨多門」。天ぷら、「みねまつ」。鉄板焼、「季楽本店」。中華料理、「Jotaki」。ヨーロピアン、「ワイズキッチン」(唐津市)。ステーキハウス「キャラバン」(同)。

 佐賀県で星を獲得した店の12店のうち、行ったことのある店は1店だけである。
 東京のミシュラン星の店に積極的に行きたいという気になれないのは、値段もさることながら、星を獲得して店の敷居が高くなったのと、星が目的だとわれながらスノッブだなあと思うことである。世界遺産巡りのツアー客のようで、何とも積極的になれない。それに東京には、それに比肩する無印の美味しい店がいっぱいあるからである。
 しかし佐賀はそんなに敷居は高くないし、ミシュランの星を獲得したからといってお高くとまっているとは思えない。もっと気楽に行けそうだ。
 ミシュランの星を楽しむという、佐賀に帰った時の楽しみが増えたようだ。
 (写真は、佐賀市の二つ星店「楊柳亭」玄関前風景)

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