<11月19日>
この日、11月22日発売の「ミシュランガイド」の東京版の内容が発表された。
ミシュランガイドは、星☆印3つを最高に、以下2つ、1つとレストランを格付けする、仏タイヤメーカーにより1900年に創刊された100年以上の歴史を持つ、世界で最も権威のあるレストランおよびホテル・ガイドの本である。このミシュランガイドに星が付いただけで、その店およびそのシェフは最高の名誉とされている。
フランス・パリ版を発端に、ヨーロッパ各版およびアメリカ・ニューヨーク版があり、アジアでは東京版が初めてである。
東京版は、何と三つ星は8軒である。二つ星が25軒、一つ星が117軒。
最初発表を聞いたとき、意外な星の多さに驚いた。星付き店が150軒、星の数191個というのは世界最多である。しかも、その約6割が日本料理(和食)である。その中には、寿司屋も相当含まれている。
本場パリですら三つ星は10軒である。そして、二つ星が13軒、一つ星が42軒で、星付き店、星の数は東京の半分以下である。
それまで、パリの三つ星に次ぐのは、スペイン・ポルトガル版およびドイツ版の6軒。イタリア版は5軒であった。
ヨーロッパ以外で初めて2005年にニューヨーク版が作られたが、三つ星はわずか3軒で、しかもすべてがフランス人シェフの店である。アメリカの食文化の低さからして、それはそれで納得いく結果ではあるが。
ミシュランのガイドブックは、広告を載せずに、覆面調査員が密かに訪れ食し調査するという、公平・厳密さを売り物にして人気と権威をつけた。星の格付けはあたかも絶対的で、星がなくなるもしくは減る(降格する)ということで、その店のシェフが自殺するというエピソードもいくつかあるぐらいである。
こうした歴史的背景を見ても、自分の文化に対してプライドの高いフランスをさしおいて、東京の星の異常とも思える多さはなぜなのだろうと思った。
想像するに、ミシュランの、和(日本)食に対する認識が欠けていたということである。
覆面調査員は、本社のフランス人3人に日本人2人ということである。このフランス人が和食に対する免疫がなかったのに違いない。フランスはじめ海外の日本食といえば、寿司、すき焼き、天ぷらで、値段は高いのに、日本人が食べると大した味ではない店ばかりである。
このような和食しか経験したことのないフランス人が、日本の和食店に来て、初めての和食の味に驚き、はまったのであろう。
しかし、懐石はまだしも、寿司などは鮮度で殆ど決まるので、料理の格付けは難しいと思うのだが。
う~ん、星の疑問は残った。
<11月22日>
この日、ミシュラン東京版が発売された。
僕は、多摩センターの駅近くのビルの中にある行きつけの本屋K書店に、夕方6時少し前に行ってみた。
平積みされているコーナーを見渡しても見つからないので、レジのところに行き、「ミシュランはどこにありますか?」と訊いてみた。すると、店員の女性がレジのカウンターを指さして、「そこに、最後の1冊があります」と、にやりと笑って言った。
僕はそれを買って、「この店は何部仕入れたのですか?」と訊いてみた。すると、店長がやってきて、「20部です。系列の八王子店では100部仕入れて開店2時間で売り切れたそうです」と答えてくれた。そして、「うちの店も、売れると思って100部請求していたのですが、系列店全店に配給された中から、この部数だけしか割り当てられなかったのですよ」と話した。そして、「版元(ミシュラン)は、今、急いで増し刷りの準備をしているんじゃないですか」と笑った。
その足で、駅の構内にある、少し大きな書店K堂に行ってみた。
その店も売り切れだった。やはり、売れ行き状況を定員に訊いてみると、「当店は、100部仕入れましたが、夕方5時頃には全部売れました」と言って、コンピューターのデータを見ながら、「K堂の京王沿線30チェーン店で1700部仕入れましたが、この時間ですべての店で完売していますね」と言った。
東京の郊外の多摩市でこの状況である。
三つ星の大半を占め、そのグルメ度を確認させた銀座周辺の書店では、相当の数を仕入れ、そしてこの日完売したに違いない。
そして、やっと気づいた。東京版の星の多さを。
ミシュランのフランス人調査員の和食カルチャーショック論以外に、次のようなことが考えられる。
* ミシュランが得る利益は、店の広告収入ではないので、純粋に本の販売部数による。まず、本が売れることが何よりである。あまりにも、星が少なすぎたら(厳格すぎたら)、日本人のミシュランに対する期待度が萎んでしまう。
本が売れることでこそ、権威付けができるというものである。
* 東京は16万店を超える食堂、レストランがあるといわれ、全世界の料理が食べられるほどバラエティに富んでいる。それに、日本人は勉強熱心である。料理も例外でない。特に最近では、本場で修行する料理人が増えている。であるからして、レストランのレベルは高い。確かに、フレンチはさておき、特にイタリアンなどは本場を超えるほどの味の追求であると思う。
フランス料理を中心に評価してきたヨーロッパ版と違って、東京は日本食以外に世界各国の料理店があり、それを無視できないうえに、ミシュラン調査員は初年度にして、取捨選択の基準が定まらず(特に和食では)、当落線上の店に星を付けざるを得なかった。
しかし、イタリアンは思ったほど多く星を得ていない。同じヨーロッパ食に関しては厳格なのである。それにもまして、中華料理店が少ないのと、インド料理をはじめアジアの料理店が皆無なのは解せない。
* 日本人は格付けが好きである。大学などは、全国大学の学部別に1点差による偏差値格付けが横行している。テレビのバラエティ番組では、女性の格付けすら行っていた。
ミシュラン東京版は、日本料理(和食)に重心を置いた日本人好みの特殊な本となった。
この結果、ミシュラン東京版は、(おそらく)予想以上の売れ行きを見ることになるのである。
この日、11月22日発売の「ミシュランガイド」の東京版の内容が発表された。
ミシュランガイドは、星☆印3つを最高に、以下2つ、1つとレストランを格付けする、仏タイヤメーカーにより1900年に創刊された100年以上の歴史を持つ、世界で最も権威のあるレストランおよびホテル・ガイドの本である。このミシュランガイドに星が付いただけで、その店およびそのシェフは最高の名誉とされている。
フランス・パリ版を発端に、ヨーロッパ各版およびアメリカ・ニューヨーク版があり、アジアでは東京版が初めてである。
東京版は、何と三つ星は8軒である。二つ星が25軒、一つ星が117軒。
最初発表を聞いたとき、意外な星の多さに驚いた。星付き店が150軒、星の数191個というのは世界最多である。しかも、その約6割が日本料理(和食)である。その中には、寿司屋も相当含まれている。
本場パリですら三つ星は10軒である。そして、二つ星が13軒、一つ星が42軒で、星付き店、星の数は東京の半分以下である。
それまで、パリの三つ星に次ぐのは、スペイン・ポルトガル版およびドイツ版の6軒。イタリア版は5軒であった。
ヨーロッパ以外で初めて2005年にニューヨーク版が作られたが、三つ星はわずか3軒で、しかもすべてがフランス人シェフの店である。アメリカの食文化の低さからして、それはそれで納得いく結果ではあるが。
ミシュランのガイドブックは、広告を載せずに、覆面調査員が密かに訪れ食し調査するという、公平・厳密さを売り物にして人気と権威をつけた。星の格付けはあたかも絶対的で、星がなくなるもしくは減る(降格する)ということで、その店のシェフが自殺するというエピソードもいくつかあるぐらいである。
こうした歴史的背景を見ても、自分の文化に対してプライドの高いフランスをさしおいて、東京の星の異常とも思える多さはなぜなのだろうと思った。
想像するに、ミシュランの、和(日本)食に対する認識が欠けていたということである。
覆面調査員は、本社のフランス人3人に日本人2人ということである。このフランス人が和食に対する免疫がなかったのに違いない。フランスはじめ海外の日本食といえば、寿司、すき焼き、天ぷらで、値段は高いのに、日本人が食べると大した味ではない店ばかりである。
このような和食しか経験したことのないフランス人が、日本の和食店に来て、初めての和食の味に驚き、はまったのであろう。
しかし、懐石はまだしも、寿司などは鮮度で殆ど決まるので、料理の格付けは難しいと思うのだが。
う~ん、星の疑問は残った。
<11月22日>
この日、ミシュラン東京版が発売された。
僕は、多摩センターの駅近くのビルの中にある行きつけの本屋K書店に、夕方6時少し前に行ってみた。
平積みされているコーナーを見渡しても見つからないので、レジのところに行き、「ミシュランはどこにありますか?」と訊いてみた。すると、店員の女性がレジのカウンターを指さして、「そこに、最後の1冊があります」と、にやりと笑って言った。
僕はそれを買って、「この店は何部仕入れたのですか?」と訊いてみた。すると、店長がやってきて、「20部です。系列の八王子店では100部仕入れて開店2時間で売り切れたそうです」と答えてくれた。そして、「うちの店も、売れると思って100部請求していたのですが、系列店全店に配給された中から、この部数だけしか割り当てられなかったのですよ」と話した。そして、「版元(ミシュラン)は、今、急いで増し刷りの準備をしているんじゃないですか」と笑った。
その足で、駅の構内にある、少し大きな書店K堂に行ってみた。
その店も売り切れだった。やはり、売れ行き状況を定員に訊いてみると、「当店は、100部仕入れましたが、夕方5時頃には全部売れました」と言って、コンピューターのデータを見ながら、「K堂の京王沿線30チェーン店で1700部仕入れましたが、この時間ですべての店で完売していますね」と言った。
東京の郊外の多摩市でこの状況である。
三つ星の大半を占め、そのグルメ度を確認させた銀座周辺の書店では、相当の数を仕入れ、そしてこの日完売したに違いない。
そして、やっと気づいた。東京版の星の多さを。
ミシュランのフランス人調査員の和食カルチャーショック論以外に、次のようなことが考えられる。
* ミシュランが得る利益は、店の広告収入ではないので、純粋に本の販売部数による。まず、本が売れることが何よりである。あまりにも、星が少なすぎたら(厳格すぎたら)、日本人のミシュランに対する期待度が萎んでしまう。
本が売れることでこそ、権威付けができるというものである。
* 東京は16万店を超える食堂、レストランがあるといわれ、全世界の料理が食べられるほどバラエティに富んでいる。それに、日本人は勉強熱心である。料理も例外でない。特に最近では、本場で修行する料理人が増えている。であるからして、レストランのレベルは高い。確かに、フレンチはさておき、特にイタリアンなどは本場を超えるほどの味の追求であると思う。
フランス料理を中心に評価してきたヨーロッパ版と違って、東京は日本食以外に世界各国の料理店があり、それを無視できないうえに、ミシュラン調査員は初年度にして、取捨選択の基準が定まらず(特に和食では)、当落線上の店に星を付けざるを得なかった。
しかし、イタリアンは思ったほど多く星を得ていない。同じヨーロッパ食に関しては厳格なのである。それにもまして、中華料理店が少ないのと、インド料理をはじめアジアの料理店が皆無なのは解せない。
* 日本人は格付けが好きである。大学などは、全国大学の学部別に1点差による偏差値格付けが横行している。テレビのバラエティ番組では、女性の格付けすら行っていた。
ミシュラン東京版は、日本料理(和食)に重心を置いた日本人好みの特殊な本となった。
この結果、ミシュラン東京版は、(おそらく)予想以上の売れ行きを見ることになるのである。
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