かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

大阪を経て九州へ② 世界遺産の「宗像大社」へ

2023-11-04 22:30:20 | * 九州の祭りを追って
 *神戸から九州・宗像へ

 10月18日、大阪を発って新神戸駅から新幹線で九州へ向かった。
 佐賀へ行くのが目的だが、途中行きたいところがあった。福岡県宗像市にある、世界文化遺産になった「宗像大社」である。玄海灘の「神宿る島」沖ノ島が話題になったが、島に行かなくとも、3つの神社のなかの総社(辺津宮)だけでも行ってみたかった。
 宗像大社(辺津宮)へは、小倉駅で在来線の各駅停車の鹿児島本線に乗り換えて、東郷駅で降りてバスというアクセスである。

 私は、新幹線にも乗るが各駅停車の列車が好きだ。できるだけ各駅列車に乗って移動したいぐらいだ。
 もう十余年も前だが、東京から寝台特急列車「サンライズ出雲」で出雲市へ出て、石見銀山を見て歩いたときのこと。島根県出雲市から各駅列車で、途中乗り換えながら日本海に沿って山陰本線をひたすら(カタコトと)走り、下関から九州の門司に入ってからも各駅列車で鹿児島本線から長崎・佐世保本線の佐賀県大町まで辿った、ちょっとした各駅列車の旅は忘れがたい。

 小倉駅で、各駅停車の鹿児島本線博多行きに乗り換えた。
 鹿児島本線の在来線は、地図で見るとわかるように地盤に沿って曲がりながら進んでいるが、新幹線は直線に近くしているため、トンネルを掘り続けている。
 小倉を出た列車は途中、戸畑、八幡の工業地帯を過ぎ、約1時間近くで東郷駅に着いた。
 東郷駅前は、人通りも少ない普通の田舎の街という雰囲気だ。宗像大社はここからバスで約10分のところにある。

 「宗像大社」は、天照大神の娘・三女神を祀る、沖ノ島の「沖津宮」、大島の「中津宮」、本土の「辺津宮」の3宮からなる。一般的には、総社である宗像市田島の「辺津宮」を「宗像大社」といっている。
 2017年、“「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群”として世界文化遺産となった。
 宗像大社は、バス通りに沿ったところに大きな鳥居があり、その直線に伸びた道の先にもう一つの鳥居があり、それは本殿へと続く参道となっている。(写真)
 拝殿・本殿は、屋根には何本もの木の梁が並んでいて、素朴な美しさがある。
 拝殿・本殿の周りには、いくつもの辺津宮の末社が並んでいる。

 玄界灘にある沖津宮のある沖ノ島は、古来より島に立ち入り見聞きした事を口外してはならずとされた、島全体が御神体である。そのため現在でも女人禁制であり、男性でも上陸前には禊を行なわなければならない。
 これまでの沖ノ島の発掘調査により、4世紀から9世紀までの古代祭祀遺構や装飾品、縄文時代から弥生時代にかけての石器や土器など多数の遺物が発見された。
 境内にある、その遺物を収蔵された「神宝館」の展示を観た。
 今の期は、特別展「国宝と現代の名匠 三右衛門」が開催されていた。三右衛門とは、佐賀・有田と唐津の陶工家、今泉今右衛門、酒井田柿右衛門、中里太郎右衛門のことである。
 古代遺物と現代陶工家の作品が、各々一個ずつ並べて展示されていた。この展示には、見るものとしては違和感があった。やはり、別々に展示すべきではと感じた。

 *東郷駅から佐賀へ

 宗像大社をあとに、東郷駅に戻った。
 東郷駅から博多駅を経て、鹿児島本線、長崎本線にて佐賀へ向かった。
 佐賀駅に着いたときはすっかり夜であった。もう佐賀・大町に実家はないので、ホテル泊まりである。
 駅前のホテルにバッグを置き、すぐさま中央本町の餃子「南吉」へ向かった。老夫婦がやっている、今にも崩れそうな古くて狭い店である。佐賀に来ると、ここの餃子を食べたくなる。
 行きつけだった中華料理店「夜来香」がなくなって、「JOTAKI」も移転し、店の選択肢が少なくなったこともあり、この店は私にとっては貴重な店なのだ。
 扉を開けて中をのぞくと、こちらを振り向いたおかみさんと目があった。ちょっと中途半端な目つきである。4人も座るといっぱいになるカウンターに1人客がいて、席は空いている。時間はまだ8時ちょっと過ぎなのだが、「いいですか?」と、お願いするように訊いてみる。
 おかみさんは、少し間をあけて「餃子ぐらいなら」と答える。私はホッとして中に入り、「では、餃子を」と言って、ダメもとで、いつも注文する「レバニラ炒めは?」と言ってみる。すると、「ああ、あるよ」と。「ご飯は?」と追い打ちをかけると、棚を見まわして「ああ、あるね」との返事。
 親父さんはにやにやしながら、摘まんだ具を衣で包んで餃子を作っている。
 やれ、やれ。
 こうして、ひとまず佐賀の夕食にありつけた。

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