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かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

今年の正月料理

2012-01-04 16:59:01 | 気まぐれな日々
 料理について書いた文は、誰が書いたとしても少し品がよくないといったようなことを、伊集院静が「大人の流儀」で書いていた。
 確かに、食い物の話で上品と呼べるようなものは少ない。特に最近のテレビ番組は、タレントがどこかへ行って何かを食べるという、旅と食い物の番組が多い。概ね、それを口にしたタレントが、「おいしい」とか「あま~い」と言って、それだけではいけないという指示が徹底しているのか、「コクがあるのにさっぱりしている」とか、「素材の味が残っている」とか、「食感がある」など、どうにでもとれるような、どうでもいい言葉を付け足すことを忘れない。

 そもそも男性は、若いときは食い物の話はそうしないものだ。だから、女性が食べ物の話を熱心にしたり、どこどこの何々は美味しいからなどと言いながら、つるんで食べに行くのを見て、別の人種だと思っていたりした。
 城山三郎の「大の男がウマイのマズイの言うのはみっともない」と思っていたように、僕も、若いときは食い物の話はしなかったし、書くこともなかった。編集者として、料理関係の本に関わったことがあったが、興味は持てなかった。
 今考えると、当時、児童書の「赤毛のアン」の物語を、イラストとともに料理のレシピを紹介した「赤毛のアンの手作り絵本」など、素敵な料理手引書も身近にあった。

 とはいえ、料理人のプロは男性が多いし、味に関する素晴らしい文を書いているエッセイストや研究家もいる。
 料理学校の校長であった辻静雄は、本格的フランス料理の研究では嚆矢ではなかろうか。

 料理や味について書いた作家(小説家)も、もちろんいる。
 食い物に大いなる関心を抱いていた開高健は、しばしば酒や食い物に関する文を書いているが、彼の性分か呻吟しているのがとって分かる。
 実用書であるならともかく、小説やエッセイで食い物を正面から取り上げるのは難しいのである。
 「秋月へ」で芥川賞候補になった丸元淑生は、のちに小説をやめてシステム料理学なる料理研究家になってしまった。
 吉行淳之介は、酒や食い物について書いても、それを媒体として別の物語に変容させるから味がある。
 実用的な面も活かしたのが「檀流クッキング」の檀一雄で、男の料理のはしりかもしれない。彼の場合は、有名な店や星印も関係ない。世界の各地で、ふらりと一人で店に入って食し、飲んで、自分でも材料を買ってきて作るのである。
 檀と親交のあった「食は広州に在り」の邱永漢は、さすがに世界三大料理の中国料理で育った舌の持ち主である。
 吉田健一はいかにも高尚そうで、僕は食わず嫌いとなった。

 ともかく若いときは、食い物の話は関心の枠外だった。若いときは、もっとほかに情熱を傾けるものがあったのだ。
 酒も、銘柄など関係なかった。ヴィンテージはもちろん、ワインのシャトーの名も知らなかった。酒は次の展開に移る触媒のようなもので、酔えばよかったのだろう。
 しかし、人間は変容、変節するものである。
 年をとった証拠か、最近は食い物についても話すようになったし(しかも好んで)、文献を読んだりする。

 *

 という少し長い言い訳をして、男の一人暮らしの正月の料理を書いておこう。料理といえるものではないが、正月に食べたものをあげてみた。
 暮れの30日と31日に、お節料理の食材とできあい料理をスーパーで買ってきた。

 とはいえ、自分で作ったのは煮込みぐらいである。具は、里芋、レンコン、人参、ネギにチクワとテンプラ(さつま揚げ)と鶏肉。
 それに、できあいの田作り(ごまめ)、黒豆、キンピラ、昆布巻き、蒲鉾、チクワ、奈良漬けを皿に並べると、何となく正月らしくなるものだ。それに、美味そうだったので買った、ゴボウに牛肉を巻いて煮込んだ八幡巻、はまちの刺身で上等だろう。(写真)
 酒は、正月ぐらいは日本酒(地元の窓の梅)で、屠蘇を入れる。一人だから、燗にして2合も飲めば充分だ。
 酔ったところで、外も暗くなったころあいに雑煮を作れば、正月の元旦も完了だ。
 雑煮は、まったくの自己流である。鶏ガラの出汁(だし)で、具は白菜、春菊、葱、椎茸、チクワ、銀杏。それに鶏肉、餅。

 正月3日間は、これと餡子餅で、外へ出かけることもなく過ごしてしまった(2日にカレーを作ったが)。
 やはり食い物の話は、品はよくはならない。

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