かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

有田にあるツヴィンガー宮殿

2011-01-14 02:22:05 | 気まぐれな日々
 磁器の町、佐賀・有田駅から南の波佐見方面に、県道である川棚有田線を走っていくと山あいに入る。
 山並みの途中の岩峠で左に急に伸びた道を進むと、道はゆるやかに楕円しながら上ったと思うと、曲がりながらまたゆるやかな下りに入る。左に池があり、細長い池が途絶えたあたりで、きれいに舗装された車道も突然終わるかのように、車1台がやっとの侠路となる。これから先は道は必要ないというようでもあり、ここで工事を中断したともとれる。
 池の反対側の高台には、大きな建物が見える。そこだけ、どこかのメルヘンの街が出現したようだ。
 そこが、有田ポーセリングパークだった。
 ということは、この道はこの有田ポーセリングパークへ行くためのみの道のように思えた。だから、本道はここまででいいのである。

 有田ポーセリングパークは、日本最初の磁器の誕生の地、有田の特性を活かしたテーマパークである。
 このテーマパークができたことは、以前から情報で知っていた。磁器の博物館で、有田駅近くにある県立九州陶磁文化館のようなところだと思い込んでいて、ここへは行ったことはなかった。
 思いつきで、この有田ポーセリングパークの園内へ入った。
 園内へ入ると、洒落た江戸屋敷と華麗な西洋の邸宅が目に入る。三角の切妻屋根の美しい西洋建築が並んでいるのを見ると、一瞬ヨーロッパにきたのかとさえ思わせる。
 さらに遥かその向こう正面には、西洋庭園の先からこちらを眺めているような大きな建築物が見える。明らかに西洋の宮殿である。
 これが、このパークのシンボルであるツヴィンガー宮殿である。
 いや、正確にはツヴィンガー宮殿を再現した建物である。
 実際のツヴィンガー宮殿は、18世紀初頭にドイツ・ザクセン選帝候でありポーランド王でもあったアウグスト王によって、現在のドイツのドレスデン市に建てられた王宮である。
 何故このドイツのツヴィンガー宮殿を再現した建物が有田にあるかといえば、この宮殿があるドレスデンの近くにマイセンがあり、ここがヨーロッパで初めて磁器を開発した地であるからである。このマイセンでは、当時ヨーロッパでも名を成していた有田の様式を真似て磁器が作られた。

 ツヴィンガー宮殿はバロック建築の代表で、遠くからでも近くから見ても、華麗である。
 正面に王冠をかぶったような門の建物があり、左右に比例して長い羽を伸ばしたようにアーチ型の窓が並んだ建物が延びている。正面の門には、中央上段に獅子にまたがった王と、左右に美しい裸像が迎える。日本でいえば、寺の門の左右にある仁王の像か阿吽の狛犬である。
 この門を潜り抜けると、再び西洋庭園が広がる。
 このツヴィンガー宮殿の横には、これまた美しい西洋建築のヒストリー館がある。その奥に見えるのは、シアター館とある。
 しかし、ヒストリー館で常設展示してあるはずの「古賀亜十夫」展は閉まっていた。古賀亜十夫は、戦後、「ガリバー旅行記」「トム・ソーヤの冒険」など、多くの児童書にイラストを描いた伊万里出身の童画家である。
 その隣りのシアター館は、いつの頃からだろうか入口すら閉まっていた。

 ここへ来る前は、ここにあるのはツヴィンガー宮殿のような建物がある磁器博物館だけだと思っていたが、ここには、お土産物屋や食堂・レストランなど、いろいろ楽しめる要素があるようだ。
 そうなのだ、ここがテーマパークだということを忘れていたようだ。
 しかし、残念なことに、多くの建物が開店休業のように閉まっている。
 それでも、ツヴィンガー宮殿は、黄昏時にでも威厳を持って聳えていた。この建物は見るだけでも、一見の価値がある。それは予想外の発見でもあった。
 この有田ポーセリングパークは、隣り長崎のオランダ村、ハウステンボスが構想の頭にあったのかもしれない。
 オープンしたのが、1993年というから、バブル期に構想が持ち上がり、バブル崩壊直後にオープンしたということになる。途中、経営も変わったようだ。
 今では、このような華美で大仰なパークが、人里離れた山あいの中にできるということはないだろう。
 しかし、ここに、ヨーロッパの公園や城内によくあるメリーゴーランドや観覧車など、子供も楽しめる要素があったら、そして、宮殿で磁器を並べるだけでなく、音楽会のイベントでもやったら、もっと人が集まるだろう。
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