写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

性格の不一致(普遍)

2016年08月20日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び

 リオ五輪も第14日を終え、日本の選手も連日予想以上の大健闘をしていて、毎日テレビの前で応援していると下手なブログなどを書く暇はない。そんな第14日の大ニュースは「バトミントンの女子ダブルス」で高橋・松友が組んだタカマツペアがデンマークのペアに2-1で大逆転し、この競技で男女を通じて日本勢初の金メダルを獲得したことである。 

 その勝ち方が劇的であった。第1ゲームを落とし、第2ゲームは調子を取り戻して勝ったあとの第3ゲームは、16-16から3連続失点を許した16-19の崖っぷちから、なんと5連続得点という大逆転で勝利した。外国選手に比べて身長も低く体力的にも見劣りするタカマツペアが、絶妙なコンビで金メダルに輝いた。

 優勝した後の監督の言葉が言い得ている。「松友はおとなしいコツコツ型。元気で親分肌の高橋と組ませてはと発案した。性格が正反対で学年差のある方が強い」という持論であった。 

 話は変わるが、芸能人が離婚する記事を見るとき、離婚の理由として表向きかもしれないが「性格の不一致」という表現がよく使われる。性格が完全に一致するということはなかろうが、違いが大きすぎても結婚生活というものは続かないものだと思っていた。

 ところが、スポーツでのペアというものは、性格が正反対で歳の差がある方が強いという。いやいや、スポーツといわず結婚生活でも、これは的を射ている言葉かもしれないとも思う。夫婦の2人ともが同年齢で、気が強く、きれい好きで、浪費家では家庭は持たないだろう。

 夫婦のお互いが性格を異にしているが、相手を補完するような性格であれば、何ごとも円満に解決するような気がする。奥さんに怒られるようなことがあれば、口応えなどせずに黙って引き下がる。あそこが汚れているといわれれば、黙って掃除機をかけておく。買いたいものがあっても奥さんが欲しいというものを優先させる。

 定年退職後は何ごとにつけ奥さんを補完する姿勢を保っておけば、離婚されるようなことはないということを、おぼろげながら分かってはいたが、バトミントンのタカトモペアから確信に至った。


正夢(話題)

2016年08月08日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び

 今年のプロ野球のセ・リーグペナントレースの行方を決めるような大きな試合が昨夜広島で行われた。対戦相手は目下絶好調で7連勝中の2位巨人である。迎える広島カープは、このところやや調子を崩して4連敗中で、3連戦の内すでに2敗を喫している。

 巨人と最大11ゲーム差あったものが、4.5ゲーム差にまで急追されており、昨夜の試合に負けると3.5ゲーム差となり、優勝の先行きは混とんとする場面であった。肝心なテレビ放送はオリンピックに占拠されて放映されない。仕方なく、ラジオのスイッチを入れて聞いていた。

 カープは出だしよく3点を入れたが、直ぐに同点とされた後は、更に加点され、なんとか同点に追いつくも、7回の表には2点をいれられて7対5となった。戦況はカープが押され気味で勝ち目は薄いように見える。「今日は負けだな」と判断し、昼間の疲れもあって早々にベッドに入った。

 カープが勝った日には熟睡できるが、負けた日には寝苦しい夜となることが多い。昨夜は勝負がつかない内に眠ったが、勝敗の行方が気になったのだろう、同じ夢を3回も見た。それは、9回の裏なのか延長戦なのか分からないが、カープが逆転サヨナラで勝つという夢であった。

 これが夢なのか、目覚めに近い覚醒状態だったのか分からないが、夢のストーリーはカープが逆転勝ちをしたということに違いはない。今朝、いつもより早く起きて、直ぐにネットのスポーツ記事を検索してみると、カープが私が夢で見た通り逆転サヨナラ勝ちをしているではないか。

 これには驚いた。「神ってる」とは、この私のことであった。9回の裏、菊池が2アウト後の土壇場でホームランを打って同点とし、四球で出塁した丸を、この日4番の新井がサヨナラ2塁打で8対7と決着を付けた。後日「この日の勝利でカープの優勝は決まった」と言われるような試合過程を、私は夢の中で予言していた。正夢って、本当にあるんですねぇ。


 


剛よく剛を制す?(紹介)

2016年08月06日 | 旅・スポット・行事

 「柔よく剛を制す」という諺がある。暑い夏の真っ盛り、諺に逆らって暑さを乗り切ろうと思い立ち、「剛よく剛を制す」を目指してちょっとした旅をしてきた。

 今年の3月に岩国錦帯橋空港から沖縄の那覇へ飛ぶ新規路線が就航した。梅雨が明けた途端、連日の暑さである。耐えかねていた時、「そうだ、沖縄に行ってみよう。沖縄の方が暑くても湿度が低く凌ぎやすそうだし、サンゴ礁の海もきれいだというし」と、暑い夏に南の島に向かって衝動的に3泊4日の旅に出かけた。

 11時、岩国を飛び立ち、鹿児島までは一直線、そこで向きを少し左に変えて真っすぐに沖縄を目指し、2時間弱の飛行時間で13時に無事到着した。期待に反して、夏は沖縄も暑い。ツアーに申し込んだといっても、航空券とホテル代、それに4日間借りきりのレンタカー代を旅行会社に振り込んだだけで、後はすべて旅行者任せの旅が始まった。

 トヨタのアクアというハイブリッドカーを借りて、早速沖縄南部をガイドブックとナビを見ながら一周することにした。半周したところに、ガイドブックに載っている海を高台から眺められるカフェがある。そこでひと休みすることにした。

 屋外のテラスで海に向かって座った。瀬戸内海と違って小さな島もなく、ただ水平線と、沖合い数百メートル辺りに水平線と平行して白い波が一直線に立っている。あれが珊瑚礁の淵だろうか。これぞ沖縄の海。しばらく何も言わずに海を眺めた。

 どこに行き何を見ると決めて出かけた旅ではない。暑さから逃れるために出かけてきた沖縄は思った以上に暑かった。「剛よく剛を制す」を目指したが、あえなくダウン。エアコンの効いたホテルへ夕方早く駆け込んだ。2日目は、冷房を利かした車に乗って、北部にある古宇利島へ長い海の橋を渡って行ってみよう。

 


愚直な柱時計(話題)

2016年08月02日 | 生活・ニュース

 フリーマーケットで箱の一部が欠けた、ほこりだらけの古い柱時計を見つけた。「ネジを回したら動くよ」という店主の言葉を信じて買って帰った。歯車の付いた機械を取り外して、ほこりを払い油を差した。

ねじを巻いてダイニングの壁にかけると、カチカチと心地よい規則正しい音を響かせた。
 時の数だけボーンボーンと音も出す。「やかましいわねぇ」との奥さんの一言で、2階の書斎で休ませておくことにした。
 
 ある日、柱時計を取り出して掛けてみると、数分動いたと思ったらすぐに止まってしまった。機械を取り外してはみたが、油を差す以外に何もすることができない。
 組み立てて掛けてみるが、しばらくするとやはり止まる。箱をたたいても揺すっても動かない。

左右に振れる振り子を正面から注意深くじっと眺めていると、あることに気がついた。外箱は水準器を持ち出して垂直に掛けているのに、振り子が機械のわずかに左寄りで往復している。機械が少し斜めに傾いて取り付けられていることが分かった。
 
 どうしてそのようになってしまったのか理解できないまま、振り子が機械の中央で左右均等に振れるように取り付けると、止まることなくうまく動くようになった。

 ほんの少し傾いただけで、てこでも動かない。そんな愚直で不器用な柱時計が、かっての私に似ているような気がして急にいじらしく思えた。今日も2階で時を刻んでいる。
      (2013.08.02 毎日新聞「男の気持ち」掲載)


手遅れ医者(話題)

2016年08月01日 | 生活・ニュース

 中国新聞の天風録というコラムで、「手遅れ医者」という おもしろい落語があることを知った。患者を診るや否や「アーこれはだめだ」とつぶやく医者が江戸にいたという。もし、治療に失敗しても文句は言われないし、もしも治ったら「名医」との評判が立つと踏んでのことである。

 いまどき、こんな無責任な医者はいないと信じているが、医療の場ではないところで、この医者の気持ちが分からないでもない局面に何度か立ったことがある。

 家を大切に、きれいにしているある奥さんが、2階に上がる階段に転倒防止のための手摺を取り付けたいと言った。必要な工具一式を持っている私は直ぐに協力を申し出て、ご主人と一緒に作業に入った。まずは手摺のサポートを取り付けるところを決めなければいけない。

 洋風の建物なので、壁の表面に柱は出ていなく、壁の裏のどこに柱や中柱が隠されているかを、細い針を使って見当を付けたあと、電動ドリルを使ってサポートをネジで取り付けて行く。ところが、ネジ込んだところに肝心な柱がなく、壁に馬鹿穴が開いただけとなるところが2個所も出来た。

 ご主人も納得・了解の上
で開けた穴とはいっても、私が主導して決めた個所なので、なんだか申し訳ない気持ちになった。とはいえ、小さな馬鹿穴なので充填剤を埋め込めば目立つようなことはないが、きれい好きの奥さんとしては大変気になるところだと感じ、協力をしながらも、ちょっと気まずさが残った。

 またある時、近所の奥さんと立ち話をしている時のことである。ブロック塀に囲まれた家から車で出る時、見通しが悪いので危険を感じる。対策として、出口の塀にガレージミラーを取り付けたいが、家の主人は何もしない。「取り付けていただけませんか」と言われたが、ブロック塀も劣化が進んでいれば、きれいな穴が開かない恐れもある。やってあげたい気持ちはあるが、不要な穴が何個も開いたのでは申し訳ない。そんなことを言いながら、協力を辞退した。

 手遅れ医者のように「これは直らないかもしれないな」などと言いながらやってあげればいいかもしれないが、よそ様の家に手を付けるのは、失敗した時に申し訳ないので、私の技量では我が家のことだけの限定としている。