海から遠い山間の温泉などに泊まると、魚料理としてヤマメやニジマスの焼き物のほか、その地で養殖したコイの洗いが酢味噌を添えて出されることがよくある。
洗いとは鮮魚の調理法の一つで、下した魚を薄切りにし、流水やぬるま湯で身の脂肪分や臭みを洗い流した後、冷水や氷水に漬けて身を引き締めてから水気を切って提供する料理である。コイの洗いは、活きたコイをさばいたものをすぐ「洗い」にしなければならないとされている。刺身で食するよりも弾力があって、身の脂分とクセが抜けあっさりしていて美味である。
新聞のコラムに、こんなことの書いてあるのを読んでいた時、「コイの洗い」と書いてある文字が、頭の中で「鯉のあらい」に変わり「鯉の新井」、そして「カープの新井」に変わっていった。
今日(27日)から、いよいよソフトバンクを相手に日本シリーズが始まる。ソフトバンクと言えば、長距離砲のそろった打力のチームの印象が強い。カープといえば、高校野球の球児が成長し、チームワークでぶつかっていく全員野球という印象が強い。
巨象の群れに立ち向かうハイエナの群れといったところか。勝ち目は、個人の力ではなくチームとしての総合力ではないかと思っている。そのチームの精神的な支柱となっているのが「コイの洗い」ではなく「カープの新井」であろう。
一時はカープを離れたものの、元々はカープで養殖され、何度も身を引き締め、絞り上げた身体で、今年最後のときを迎えようとしている。脂分もクセも抜けきり、私欲はなく後輩のために尽くしてきたこの1年であった。
日本シリーズでも、必ず出番があるに違いない。有終の美を34年ぶりの日本一で締めくくれるよう、最後の力を振り絞る姿を見てみたい。がんばれ「コイの洗い」ではなく「カープの新井」さん。
コイの洗いでも食べて精をつけて、今度は1本打ってほしいものです。