写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

北アルプス

2014年01月18日 | 旅・スポット・行事

 白川郷を見物した夜は、高山市にあるリゾートホテルに泊った。格安のツアー料金にしては、温泉付きの立派なホテルと夕食であった。翌日は期待していた中部山岳国立公園である雄大な北アルプス(飛騨山脈)の絶景見物のため、新穂高温泉へと向かった。高山からはバスで1時間強、大きな山一つ隔てた東側はもう上高地という北アルプスのど真ん中の地である。

 きれいに除雪された道路以外、見るものすべてが深い雪の中。ゆっくりと進んでいく道すがら、ところどころにいで湯の里が現れる。平湯温泉、福地温泉、栃尾温泉、新穂高温泉と続く、ここが歌にも詠われた奥飛騨の鄙びた温泉郷である。つい、竜鉄也が歌った「奥飛騨慕情」を口ずさんでみる。♪ あ~ 奥飛騨に 雨が降る~ ♪

 やがて新穂高温泉にあるロープウェイ駅に到着する。120人が乗れる2階建てのゴンドラで一挙に2,200mの雲上へ運ばれる。そこは西穂高岳への登山口で、標高が3,200m級の槍ヶ岳や奥穂高岳など、北アルプスの山々をパノラマで一望できる絶景の展望台がある。雲もなく晴天で、気温はマイナス10度。完全防備をしていたせいか、寒さは全く感じない。真っ白く神々しい峰々を前に言葉はない。

 槍ヶ岳は北アルプスの南部にある標高3,180mの、日本で5番目に高い山である。今まで東側の松本や塩尻の方からは何度か眺めたことがあるが、遠く高く鋭く尖った小さな三角形が見えた。このたびは真南からの展望で、前に横たわる山が邪魔をして槍の先端しか見えなかったが、近くではっきりと見ることが出来た。   

 展望台での滞在時間は僅かに15分。名残を惜しみながらそそくさに下りのロープウェイに乗りこまされた。冬の北アルプスを一度見たくてやって来た。こんな奥地までは、さすがに自力で来ることはできない。神馬である白馬の背のような真っ白い北アルプスの山並みを見ていたら、初詣をしたときと同じような神秘な不思議な力を全身に浴びたように感じた。「北~」、いや「きた~」。今年は何かが来るようにも感じた。(写真、稜線の左に僅かに黒いものが槍ヶ岳の先端)