写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

ご親切

2011年11月11日 | 生活・ニュース

 家も建てて20年も経つと、体と同じようにあちこちに不具合なところが出始める。懸案であった屋根板金の取り替え修理を工務店にやってもらった。工事は僅か3日間。やってきた作業員の延べ工数は10工数くらいであった。それでも工事費は、材料費や足場仮設費を合わせると○十万円になった。

 事前に算出してもらっていた見積内容よりも、実際の工事は小規模で済んだため、減額された請求書を工事責任者が持ってきた。数日後、先方の口座に振り込むために郵便局へ出かけた。

 必要事項を書き込んだ振込伝票を窓口の若い女性職員に差しだした。すると「高額の振り込みなんですね」と笑顔いっぱいで言う。「ええ、まあ」と話を合わせる。「すみませんが、免許証か何か身分を証明するものを見せていただけますか」というので、免許証を出すと、ケースから抜き取ってコピーをした。

 免許証をどう取り扱ってもらっても一向に構わないが、振り込みをするのに何故振込人の身分を証明しなければいけないのか。少し疑問に思ったが、免許証を出して手続きを終えた。最後に女性職員が受領証を渡してくれる時に、イラスト入りのパンフレットをくれた。見ると「振り込め詐欺に気をつけよう」と書いてある。

 おれおれ詐欺に代表される高齢者を狙った振り込め詐欺は、昨今の世情の下では、まだまだ横行している。私もつい1年前までは、高齢者へのボランティア活動で、各戸を訪ねてこのようなパンフレットを配って歩いていた。今は攻守所を変えて、パンフレットをいただく側にあいなった。

 ちなみにネットで調べてみると、10万円を超える金額を振り込む場合には、身分証明書が必要だと書いてある。身分を証明しておけば、振り込め詐欺にあったとき、お金は戻ってくるのだろうか? まあ、そんなことは言わず、立派な高齢者の立場にある私は、ここは素直に言われた通りにしておきたいが、最近他人から親切にされるほど何故か、かたくなになっていく。