俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「ユナイテッド 93」  UNITED 93

2006年08月13日 01時57分42秒 | 時系列でご覧ください
「同時多発テロ」と言われたあの衝撃的な事件から5年。
あの日4番目にハイジャックされたユナイテッド航空93便。その旅客機の乗員と乗客らが経験したであろう未曾有の恐怖を『ボーン・スプレマシー』のポール・グリーングラスが、遺族ら関係者に行った膨大なインタビューをもとに自ら脚本も手掛けて描いた力作。



全国的に晴天だったあの日の朝、テロの恐怖を微塵も感じさせない平穏な日常の風景が描かれる前半。
何気ない機体整備や搭乗風景はあたかもありふれたドキュメンタリーのごとく描かれ、物語はテンポよく進行していく。

そうした小気味良いカットと淡々とした描き方は例えばテロリストグループの描写でも同様で、コーランを読み上げ、剃毛し、妻に電話をし、仲間とともに祈りを捧げるといった具合に行ないだけが客観的にそのまま描かれていた。
そこには意図的なものは敢えて排除され、まさに映画「ミュンヘン」でのスピルバーグとも相通じるポール・グリーングラスのとったそうした客観的であろうとする姿勢には世の中のあらゆるものに対する誠意を感じた。

そして離陸からハイジャックされ、最後の瞬間まで飛行機内で行なわれたであろう出来事が彼なりの解釈によって再現されるのだけど、確かにそこに漂う緊張感、緊迫感は、出演者の中に有名俳優を起用しなかったことも功を奏し、ただならぬものがあり、まるで現実を見せつけられたような思いにすらなってくる。

さらにはそうした飛行機内の出来事が描かれる一方、各管制施設での混乱振りも、実際に当時そこにいた人たちをそのまま本人として何人も登場させていたこともあってか、リアルな混乱として確かにそこにはあった。
そしてレーダーから航空機の機影が消えたとき、管制官たちにとってそれが墜落とすら思えず、ましてWTCに激突したとは思いもよらず、それをはじめて知ったときの彼らの衝撃は観ている側にも見事に伝わってきた。



そういった意味では本当に震撼させられる映画であると思うし、心ならずも犠牲となってしまった人たちやその家族の人たちの無念さにも当然のことながら思いは募る。

ただ、だが、しかしだ。事件の真相がいろいろと取りただされ、何が事実なのか皆目わからなくなっている今、ここで描かれていることは「ある認識」であり、決して真実だと言い切ることは誰にも出来ないという側面があるのも事実だ。

極限状態に置かれた人たちが敵に対して立ち向かう、その勇気は全く持って素晴しいし、自分自身もそうありたいと思うけれど、その背後にある国家の深くて暗い権謀術数もまた現実にあると思うと何とも複雑な気分になってしまうのだ。





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1 コメント

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Unknown (あっしゅ)
2006-08-16 11:40:51
こんにちわ。あっしゅです。

ユナイテッド93便の隠された事実が

ありありと描かれていましたね。

もし自分がテロリストの旅客機に同乗していたとしたら、、、。

想像しただけでも恐ろしいことですねぇ。

力を合わせ戦った乗客40名の努力もむなしく墜落してた93便。

この事件は心の中に深く刻まれ、今後も語り継がれるなんとも悲惨な事件でした。
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