俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「海を飛ぶ夢」 THE SEA INSIDE

2005年06月06日 01時57分12秒 | 時系列でご覧ください
事故で四肢麻痺となった主人公ラモンを取り囲む周りの人たちの描き方がとても誠実で、観ていて主人公よりもどちらかと言うとそちらのほうに想いが募った。

特にラモンの兄の嫁であるマヌエラの献身的な姿が印象的だった。そして同じ四肢麻痺の障害者であり、テレビのインタビューで「ラモンには家族の愛が欠如している」などと事情も分からぬままに話していた神父がやって来て、ラモンと言い争っていた際、その神父に対して彼女が自分には二人が何を話しているのかよく理解できないけど、私にも判ることが一つだけあると言って「あなたは“ やかましい ”」と静かに告げるシーンには思わず溜飲が下がった。

そんな彼女以外にも、ラモンの考えにどうしても納得がいかない兄の苦しみや、代われるものなら自分が変わりたいと思っているのであろう父の哀しみといった家族それぞれの思いがバランスよく見事に描かれていた。

ただそうした描写に較べて、事故から20数年の年月を経て、音楽や文学に対する造詣も深くなり、愛する家族を始め多くの友人を得、体の自由は手に入れていなくとも心の自由は持っていたであろうラモンが何故ここにきて自らの命を絶たなければなかったのか。
その理由がはっきりとしたかたちで映画の中から窺い知ることが出来なかったのは、観る側の力不足だったのか。

とにかく、機嫌の悪いときは辛らつな言葉を容赦なく浴びせ、ことあるごとに、あれをしてくれ、こんなのを作ってくれと、近くにいる人たちに対し我がままのし放題。おまけに女好き!?
と、書いてしまうと嫌なやつになってしまうけれど、そういう面すらもみんな温かく受け止めていたというのは、ラモンのキャラクターのなせるところだったのか、周りの人たちの優しさだったのか。

劇中、ラモンは「生きるこということは権利だ。でも今の自分には義務としか言えない。」と話すけれど、正直言ってどこか違和感がついて離れなかった。

ったくー、そうじゃないだろうが。

ただ、もしそこまで計算していたとすると、まだ33歳というアレハンドロ・アメナーバル、凄すぎる!

今日の1曲 : La decadanse / JANE BIRKIN




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