俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「手紙」

2006年11月06日 01時06分19秒 | 時系列でご覧ください
弟に対する愛情ゆえに犯してしまった罪が、結果的に弟の人生に犯罪者の家族という烙印を残してしまい、住むところや仕事、そして恋や夢までも奪ってしまい、弟の未来を狂わせる ----- 。

「罪を憎んで人を憎まず」という言葉があるけれど、果たして「罪を犯すということは」そして「罪は償うことが出来るのか」「更正とは」といった罪と償いの問題、そして家族や人間同士の絆といったことに加え、人に対する差別にまで切り込んで真摯に作られた作品だとは思う。

ただ、こんなことを言ってしまうと身も蓋もないけれど、あまりに正統派過ぎてというか、言葉を変えるといささか陳腐な設定の連続に、物語に入り込むことが出来なかったのだ。



弟思いの兄というのは分かるとしても、自分に学がない分弟だけには大学に入れてやりたいという感覚は、大検合格を目指していた寮の先輩が「大学に行っていっぱい資格を取って・・・・」というのと同様に、今の時代の話としては相当違和感を感じてしまった。

そして眼鏡をかけたさえない少女が美しくなったり、身分の違う大金持ちの令嬢に恋したり、王道といえば王道ながらあまりに手垢にまみれすぎていやしないか。

加えて杉浦直樹扮する家電量販店の会長が直貴に「差別のない国を探すのではなく、きみはここからはじめるんだ」と励ますのは良しとしても、「犯罪者の家族への差別は当然なんだ」と言い切るところに、(確かにそんな実態があるのは事実であったとしても)犯罪を犯すと本人のみならず家族や周りの人までをもこうして巻き込むことになるんだぞー!的な何やら嫌な感じの圧力めいたものをこの作品の根底の部分に感じてしまったのだけど、これって穿ち過ぎ?

さらにもうひとつ言わしてもらうならば、役者たちの熱演に水を差すあまりにもベタ過ぎて鼻白んでしまう小田和正のあの歌もどうにかならなかったものか。

ベタはベタで結構なときもあるけれど、今回に関しては沢尻エリカの妙な関西弁とともにそのベタさ加減が、あまりに鼻に付いてしまったのだ。



今日の1曲  “ 今宵の月のように ” : エレファントカシマシ

映画を観終わったあと空を見上げると真ん丸い月が。そしてそんな月を観てふと思い出したのがこの曲。
97年にフジテレビの月9ドラマ「月の輝く夜だから」の主題歌としてオンエアされ70万枚を超える大ヒットとなるこの曲で通称“エレカシ”はついにメジャーになったのでありました。
この頃リーダーの宮本くんはよくメディアに露出し、違うブレイクしそうな感じもしたのでしたが・・・・・。
なんだかんだ言いながら個人的には「風に吹かれて」と同じくらい好きな愛唱歌だったりします。
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5 コメント

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 (kossy)
2006-11-06 20:46:23
俺の場合、涙を流しながら、「ちょっとおかしいぞ」と感じてしまいましたが、なんだか沢尻エリカの手紙に騙されてしまいました。
犯罪者の家族って、慰謝料問題が一番大きいと思うし、心理的なプレッシャーで自殺に追い込まれることが多いんじゃないでしょうか。
犯罪を犯すと自分だけじゃなく家族や周囲の人間全てに差別があるんだぞ!という宗教くさい説法のようにも感じました。
電気屋はクビにしなかったということで、宣伝効果もあるんでしょうね~年末商戦も近いし・・・
>涙 (nikidasu)
2006-11-07 01:44:37
■kossy さんへ

歳末商戦まで話が飛躍するところがさすがですね。
ともあれ、どこのブログを眺めても絶賛の雨嵐。
ネガティヴな印象を強く起こったものにとって、その絶賛ぶりに肩身の狭い思いをすると同時に、いささか危ういものを感じとってしまいましたが、はてさて・・・・。
これって考えすぎなのか、しばし検討中であります。
ベタベタ (にら)
2006-11-09 15:31:50
おそらく原作者が確信犯的にやってるんでしょうね。

ちなみに犯罪者の家族に対する差別といえば、ちょっと際どい例ですが、オウムの麻原の子供たちに対する住民票拒否とか入学拒否とかありましたが、あの状況であれが差別だと思った人は少ないんじゃないでしょうか。

犯罪者の家族に対する差別は差別と意識されない見えにくさがあるからこそ、この作品はわかりやすい状況を用意したんだと思いますが、でもやっぱりベタベタすぎて、現実の差別を気付かせる触媒には程遠い。

家電量販店会長のオコトバは、「だからって今作は犯罪を擁護してるわけではありません」ってことなんでしょうけど、それが実在の量販店なので、ついつい邪推したくなりますよねぇ。
ちなみにこの量販店、ウチの近所の店は頑張って値引してくれるので、時々利用してます(笑)。

てなわけで、TBありがとうございました。
やっぱり (nikidasu)
2006-11-12 01:56:26
■にらさんへ

「際どい例」も含めて、差別という現実に対しての回答がどこにもなく、差別するのが悪いのではなく、そういう状況を引き起こした人間が悪いんだからしょうがないという考え方には(犯罪擁護ではなくとも)やはり組することは出来ません。はい。

加えて自分で自分を勝手に追い込む独りよがりな主人公の「俺って何て不幸なんだ」的生き方(というか考え方)というのも全くもって、オイオイでありました。
こんばんは (咲太郎)
2006-11-15 19:42:51
私も大絶賛者のひとりです。
ですが、映画の感想というのは
人それぞれだと思うので
みんなと違うからと言って
肩身が狭いなどと思うことはないと思います。
私も色々なところを覗きましたが
批判的な感想は確かに稀でした。
でも、そういう人たちの意見を読むと
なるほどと納得することもしばしばです。
感想ってその映画を観たときのその人の状況によって
大分変わってくるように思います。
例えば、恋人と上手く行っていて、幸せの絶頂の時に観るのと、振られて絶望のどん底にいるときとでは
映画の感想も違ってくると思います。
概ねみなさん大絶賛の挿入歌を、ベタ過ぎて白けてしまったと感じたのは作り手の作為を押し付けがましく感じてしまったんでしょうね。
原作よりも映画が好きという方もいらっしゃいましたし、賛否両論ひとそれぞれだと思います。
少数意見興味深く読ませていただきました。
長々とすいませんでした。
m(_)m

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