
アニメーション作家・黒坂圭太が鉛筆により30,000枚を超える動画をすべて描き、演出から脚本、美術、撮影、編集、背景、色彩設計といったアニメーションの作業工程をほぼ一人で行ない構想・制作に13年を費やしたという、今後ある意味カルトムーヴィーとなり得る力作。

正直言って単に映画だけ観ていてもストーリー背景は見えてこないし、唐突な展開に面食らうことも多々あるし、何よりも排泄物や吐瀉物をはじめとするグロテスクな描写によって観る人を激しく選ぶ映画だと思う。

ただ未来でも過去でもない時空間の日本らしきエリアを舞台に次々と登場してくるグロテスクだけどイマジネーション豊かなキャラクターのなんと魅力的なことか!
主人公の緑子こそ、どこかジブリテイストを感じないこともないけれど、ある意味『裏ジブリ』とでも呼ぶべき、本能のままに好き勝手に生きるキャラクターのポップでかつ相当なグロさ加減に強く興味惹かれる人も(決して多くないかもしれないけれど)いるはず。
ただ、予告編の中でも『空想科学漫画』と謳われているように、そうした世界観に過度の期待感を持ち、例えば渋沢龍彦や小栗虫太郎、あるいは江戸川乱歩あたりの異形の世界の延長といった文脈で観てしまうといささか物足りなくもないこともないので、そのあたりご注意あれ!

加えてオフィシャルページやチラシを見ることによって作品が完結するというのも、いささか何なんだかなあと思わないでもないけれど、その「根源的な欲望」といったテーマ性、そして何よりも見応えのある力強いデッサン力に裏打ちされた絵作りの素晴らしさは必見で、興味のある人は是非!とオススメするのであります。

※ちなみに上映後に監督が予告なく登場してビックリ。
作品のイメージとは大きくかけ離れたシャイで物静かな感じがする人でありました。
今日の1曲 “ Agitated screams of maggots ” : Dir en Grey
このプロモーションヴィデオによって黒坂圭太の名前が世界に知れ渡ったという記念すべき作品。
いやはや、個人的にはいささかステロタイプ的に過剰な気がしないでもないのですが、このあたりが駄目な人は決して見ないで下さいと断りつつとりあえずご紹介であります。
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