俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い / EXTREMELY LOUD AND INCREDIBLY CLOSE 」

2012年02月20日 22時39分19秒 | 時系列でご覧ください

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件により父親(トム・ハンクス)を失った少年オスカー(トーマス・ホーン)が、あの日以来初めて入った父親の部屋で1本の鍵を見つけ、その鍵を手掛かりに父親とのかかわり合いの続きを求めて街へ向かうといったのが、大まかなストーリー。

9.11 以降、残された側の内面を描いた作品としてはアダム・サンドラーとドン・チードルの演技が光った「再会の街で」( ← 是非見て欲しい一作です)があったけれど、この映画では大切な人を失った少年の喪失と再生といったことのみならず、同時に多くの人たちが感じ取ったであろうより普遍的でより深いものが描かれていた。


話そのものも、鍵が中盤までまさにカギとなるある種ミステリー仕立てとなっているのが功を奏し、その謎を解くために他人とのコミュニケーションをとるのが決して得意ではないオスカーがニューヨークの街を歩き回り、結果いろんな人たちとのかかわり合いの中で、悲しみは自分だけじゃないと気づき、思いを共有するといったある種成長物語的要素も加わってくる。


そして単なるお涙頂戴的な映画に陥ることなく、その中に決してもとには戻らないことに苦闘する様々な人たちの哀しみや諦観、そして親と子との愛情、さらには多趣多様な人間模様が描かれていたのだ。


それにしても劇中で少し紹介されるようにアスペルガー症候群というある種の発達障害を持ち(検査の結果は“不確定”なっていたけど)、繊細で、感受性が豊かで高い知能を持つものの、いろんなものに怯えたりしているオスカーを演じた(これが映画初出演だという)トーマス・ホーンの瑞々しい演技がとにかく素晴らしく、特にオスカーがそれまで誰にも話さなかった父親からの留守番電話のことを堰を切ったように間借り人の老人に一気呵成に叫ぶように語るシーンには胸が痛くなってしまった。(監督は「リトル・ダンサー」の名匠、スティーヴン・ダルドリー)


そしてそんな彼を見守る老人を話すことが出来ないという設定ゆえに表情だけで見事に演じたマックス・フォン・シドー、さらに最愛の伴侶を失い、息子とももどかしさが募ってしまう母親の悲しみを静かに演じたサンドラ・ブロック、時には矛盾語のやり取りをしながらテコンドーの相手をし、時にはワクワクする冒険に駆り立てようとしたりした父親に扮したトム・ハンクスといった適材適所的キャスティングによる好演ぶりも深く心に残ったのだ。

邦題は原題をそのまま直訳したものだけど、いろんな解釈が成り立ちそうな題名であることも含めて、いろんなところに心情移入可能なこの作品、機会があれば映画館で是非!
かなりオススメであります。




今日の1曲 “ Where The Streets Have No Name ” : U2 

映画の本編中では流れることは無かったけれど、予告編で流れていたのがU2のこの曲。
映画のテイストとちょうピッタリと合っていた選曲でした。






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4 コメント

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アメリカは何処へ (エージ)
2012-02-24 22:47:12
あの日NYの留守番電話は悲しいドラマだらけだったのですねぇ。電話に出られなかった子供達も実際居たのだと思います。これも「ペントハウス」も見事にNYの風景を切り取ってましたね。ファンには堪らないです。しかし最近のアメリカ映画って時代と真剣に向き合って戦っている作品が多いですね。世の中が大きく動いてるのでしょうか。

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◇エージさんへ (nikidasu)
2012-03-03 12:37:33
すっかり返事が遅れてすいません。
残念ながらオスカーは獲れなかったけれど、真摯にあの出来事と向き合った作品でした。
時代的に今だからかなのかはさておき、アメリカ映画の中には、
時代を映す重要な作品がいつだってあるなあと思ってしまいます。
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Unknown (はる)
2012-03-23 15:18:07
心に残る一作となりました。
出演者全員が、素晴らしい演技でした。
訪ねて行ったお家の、逸話も泣かされました。
オスカー獲れなかったのは、残念でしたわ。

追伸:この場をお借りして、次男様合格おめでとう
ございます。春爛漫ですね。。。
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◇はるさんへ (nikidasu)
2012-03-24 16:31:51
そうですね、何らかの賞をオスカーで獲って欲しかったけれど、
そういったご褒美がなくとも、本当に良い作品でした。
とにかく、もっとより多くの人たちに観て欲しい作品です。

そしてありがとうございます。
これからは彼自身の人生となるわけで、嬉しくもあり寂しくもあり、であります。
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