メジロトーマスが春天で穴をあけたときに、「やっぱり長距離はステイヤー血統やなあ…」という見知らぬオヤジのつぶやきに触発され、その足で山野さんの血統辞典を買いに走ったのが血統にはまる第一歩でした
学校にも行かずにバイト代を毎週馬券で溶かしているうちに、知識だけは一丁前になっていた血統オタにとって、オグリキャップという存在は超えられないカベでしたね~
オグリ人形が出回りはじめた頃には、競馬にそんなに詳しくない友人からも「オグリって血統悪いのに強いんやろ?なんでや~?」みたいな意地悪な質問をされて、それをちゃんと説明できない自分にイライラしてました
オグリキャップの競走馬としての優秀さの大部分は、ホワイトナルビーの母としての優秀さに負うところが大きかったと思いますが、それをクロスであらわすと
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1985102167/
父シルバーシャークがPharos=Fairway4×4・4、Mah Mahal4×5、Lady Josephine6×5・7
母ネヴァーナルビーがPharos=Fairway5・5×4
自身はPherozshah≒Nasrullah4×4、Nearco4×5・5、Pharos=Fairway5・5・5×5・6・6
と、代々Phalaris系とLady Josephine系の血(以下PLと略す)を重ねていることにありますが、一方でシルバーシャークの父父Relicやネヴァーナルビーの母父ガーサントはPLとは無縁で米仏の異系の血で固めていて、ここがPL継続クロスに対する「1/4異系」になっている点にも注目できます
そしてダンシングキャップの母Merry MadcapもNasrullahとFair Trialを持つので、オグリキャップは母が持つおびただしい数のPLをNasrullahとFair Trialのクロスで更に累進継続しているわけですが、一方で父Native DancerはやはりPLについてはアウトブリード(その父PolynesianがPolymelusのクロス)で、つまりやたらめったらPLを詰め込んだだけではなく、「血統表の3/4でPL的スピードを累進継続クロスしつつ」「残りの1/4の部分にはPLとは縁遠い米仏の異系の血が入っている」という構図が代々成立しているところに、この怪物が生み出された秘密があるのではないかと考えています
あと当時競馬を見ていた人なら皆そう言うと思いますが、やっぱりベストレースは安田記念で、3番手から楽々と抜け出して、あの当時の馬場で1分32秒4はどう考えても凄いです
マイルだと最後まで重心が沈んでうなりをあげて走っていて、中距離でもスピードと勝負根性で感動的なレースはするのですが、ゴール前はいつも体が伸びきっていて、本当に最後は根性だけで走っているようにみえるんですよね~
しかしオグリのライバルたち、タマモクロス、スーパークリーク、サッカーボーイ、イナリワンなどの血統表も、今見てもどれもこれも泣けますな~(T-T)
どこが泣けるのかというと、決して超一流の競走馬ではなかった(しかし血の選択にミスはない)父母から、特定の有力な血のクロスやニックスではなく、代々近交と遠交を繰り返すことで、血統表全体からベストな資質を引き出し、その結果父母を超える超一流馬が生まれた…という、この5代血統表レベルでの物語性に泣けるのです
タマモクロスの配合なんてホンマに今見ても号泣もんで、ヒマな人は手元にビールとツマミを用意して血統表をさかのぼってみてください(缶ビール3杯は絶対いけます)
「ダンシングキャップなのに」
と言われ続けたオグリキャップですが、残念なことにその卓越したスピードは、産駒にはほとんど伝わりませんでした
「ディクタスなのに」
希代の名マイラーとして鳴らしたサッカーボーイは、父としては父系のスタミナを伝えてステイヤー種牡馬として成功しました
「だから」のスピードやスタミナは伝わるが、「なのに」のスピードやスタミナは伝わりにくい
これは筆者の持論の一つですが、彼らにはそんな大切なことも教わりました
サンデーサイレンスが日本競馬のレベルを大きく底上げしたのは紛れもない事実ですが、この大種牡馬が出現してからは、巷で流通する血統論は「サンデーと○○における△△な関係」的な、小手先の父系論やクロス論やニックス論に偏ってしまった感があります(もちろん筆者も含め)
それは毎週のレースやPOGといった日常を追いかけていると仕方ないことではあるのですが、超一流の種馬や繁殖があまりいなかったあの時代、近交と遠交の緊張と緩和の妙で名馬が出てきたあの時代は、血統屋からみても今よりファンタジーがあったような気はしますね~
サンデーの血の飽和がささかれる昨今、芦毛の怪物の死に合掌しながら、あれこれいろんなことを考えてました…
今の主流はスローの流れから筋肉量を利した暴力的な加速力かなあ
騎手心理としても馬場が速ければ上がり勝負に持ち込みたくなるらしいし…