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「セリーナ 炎の女」女は一途に愛を求める(ネタバレ)2014年制作

2018-04-15 15:51:12 | 映画

           
 テネシー州とノースカロライナ州の境界にまたがるグレート・スモーキー山脈の稜線から太陽の燭光が顔を見せ始めた。1929年、この静謐な朝まだきパンパートン製材所を経営するジョージ(ブラッドリー・クーパー)はそれを眺める。

 この穏やかな時間が過ぎれば、危険な作業とこの地域を国立公園にするという話が浮上し存立の危機、さらに人畜に被害を与える猛獣の一頭のクーガーが気掛かり。

 独身のジョージは、久々に妹アガサ(チャリティ・ウェイクフィールド)を訪ねて、馬場を眺めながら他愛もないおしゃべり。ジョージは馬場の障害物を難なくクリアしていく一人の女性に目をとめた。兄の表情から察知した妹が「伐採キャンプ育ちの先住民よ。美人ね。でも火事で天涯孤独に。傷心の女よ。そして木が好き」皮肉な笑みを浮かべてアガサは言う。

 馬上の彼女の名前は、セリーナ(ジェニファー・ローレンス)。皮肉を無視して森へと馬を駆るセリーナを追いかけ、自己紹介の後「結婚してほしい」とジョージは求婚。意外性のある男に気を良くしたのか二人は結婚する。

 勝気で情熱的なセリーナは、現場を回りながら口を出す。それも的を射ているから異論が出ない。現場でたびたび顔を合わせるギャロウェイ(リス・エバンス)は寡黙な男で、僅かに頷いて目で挨拶をする。そのギャロウェイが石につまずいて手を木にかけると同時にキコリの大型の手斧が左腕先に食い込んだ。まさに「ギャー」というギャロウェイの叫びが轟く。とっさにセリーナは、作業員のベルトで止血、自身の絹のマフラーを包帯にして病院へ搬送。

 左腕先は失ったものの一命を取り留め、ジョージに「母は俺を生んだ日、俺が女性に救われる夢を見た。奥様がその女性です。名誉にかけて守る」と言う。これが後に悲劇を増幅させる。

 女の勘は鋭い。無言の雰囲気から漂ってくるのは、今までジョージの食事の世話をしていた若いレイチェル(アナ・ウラル)。その女に子供が出来る。ひょっとするとジョージの子ではないか? と言う疑問が浮かぶ。

 セリーナも妊娠するが、流産で二度と子供が産めない体になる。ジョージはレイチェルの産んだ子供に強い関心を示すようになる。

 セリーナが密かにジョージの机を調べてみると、引き出しにあったのはレイチェルと子供の写真、それに「子供へ」と表記され現金が入っている封筒。これを境にセリーナは狂気へとなだれ込む。セリーナに対して忠誠心の強いギャロウェイを使って、レイチェルの子供を殺そうとする。子供がいなくなれば、ジョージは私を愛してくれる。

 ジョージは自分の子供を助けるために、国立公園化を阻むワイロの詳細を記した帳簿をマクダウェル保安官(トビー・ジョーンズ)に渡し子供の行方を聞く。鉄道の駅でギャロウェイが貨車に飛び乗るのが見えた。ジョージも続く。髭そりの剃刀を手にしたギャロウェイが、レイチェル母子に迫る。ジョージが飛びかかってもみあい、落ちていた剃刀でギャロウェイの喉を一閃血しぶきが飛ぶ。

 レイチェルには、子供もなついているヴォーン(サム・リード)がいる。彼の許へ行くというレイチェルを寂しく見送るジョージ。自身の身から出た錆であり、罪に問われる身でもあって子供との別れを受け入れるしかない。

 罪の罰を受ける前に、一つやり残したものがある。人間を襲うあのクーガーを仕留めなくてはならない。単身クーガーの生息域に死んだシカを引きずって入っていく。岩場の陰から見ていると、ゆっくりと灰色のクーガーが近づいてくる。
 「ヤツだ。よし」と言ったかどうか分からないが引き金を引いた。仕留めた筈がそこにはクーガーがいない。傷を負わせた証拠の血だまりがある。目を周囲に這わせたがいない。背後に気配を感じて振り返った。灰色のクーガーが飛びかかって来た。

 保安官は約束の出頭時限に表れないジョージを探して森に入り、そこで目にしたのは転落死しているジョージだった。車の音がしたのでセリーナは祝杯のつもりでグラス二つを並べて窓際から外を見た。荷台にジョージが横たわっていた。

 保安官の「身元確認をお願いします」の呼びかけにも無言を通し、その夜、傷心の女となったセリーナは、ライターに火をつけベッドわきに放り投げた。再び天涯孤独になり愛を失ったセリーナを弔う炎が夜空を焦がしていった。

 2014年クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートのブラッドリー・クーパーと2012年「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー賞主演女優賞受賞のジェニファー・ローレンスという力のある俳優の共演で愛憎劇を演じているが、劇場未公開が不思議だ。 で、2018年1月より開催の<未体験ソーンの映画たち>での上映のみという寂しさ。

 一級の映画ではないがそれなりの出来栄えで、二度と子供を産めない体になったのを告げられた時、心の底からの悲しみを表現するジェニファー・ローレンスの好演もある。
  

  
監督
スザンネ・ピア1960年4月デンマーク、コペンハーゲン生まれ。

キャスト
ブラッドリー・クーパー1975年1月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。
ジェニファー・ローレンス1990年3月ケンタッキー州ルイヴィル生まれ。
リス・エバンス1967年7月イギリス、ウェールズ生まれ。
トビー・ジョーンズ1967年9月イギリス、ロンドン生まれ。
チャリティ・ウェイクフィールド1980年9月イギリス、ウェールズ生まれ。
アナ・ウラル1985年6月ルーマニア・ブカレスト生まれ。
サム・リード1987年2月オーストラリア生まれ。
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